恋の病
「…」
「……」
正座をし、見つめあう二人。襖の向こうでは、別の客と色子の楽しげだったり艶っぽい声だったりが漏れて聞こえる。
「…あのさ、蝶子さん」沈黙を先に破ったのは東だった。蝶子の返答を待たずに続ける。
「なんで、ここ最近おかしいのか、教えてほしいんだけど」
「……東さんを見ると、私、病気になるんです」
「え?」
少し顔を赤らめながら、蝶子は続けた。
「動悸が激しくなったり、息切れしやすくなったし、思考が止まって空白の時間を作ってしまったり…。東さんの事を見るだけじゃなくて、思うだけで変になるんです」
その言葉を聞いて、今度は東が顔を真っ赤にさせた。
「そ、それって…」
「その他にも、東さんに触れられると、そこの部分が一気に熱くなったり、目を合わせると頭に血が上りそうになったり、東さんの一挙一動に何故か目が離せなくなったり…東さんの事を考えただけで一夜を明かしてしまったこともあります。」
平坦に、つらつらと続く蝶子の言葉に、東は顔だけでなく、全身が熱くなるのを感じた。
(蝶子さん、それって…!!)
「……」
ふと、蝶子の言葉が途切れた。どうかしたのかと様子を伺うと、蝶子の顔は更に赤く染まり、震える、絞るような声で、言った。
「…わ、私は……東さんの事が、好きなんですか…?」
「…え」
(それを俺に訊くの…?)
「あの、蝶子さん、」
「……っ、ごめんなさい、今日はもう帰ります」
「えっ、蝶子さん!?」
一気に立ち上がり、逃げるように帰っていく蝶子。
嵐のような出来事に、ひとり残された東は口を無意識に開けながら処理しきれずにいた。
そうしてしばらく経ってから、胡坐をかき、頭を掻き毟った。
「……うわあ、なにこれ…」
まだ残る自分の身体の熱に動揺を隠しきれなかった。それから、蝶子があんな顔をするなんて思わなかった。
(前見せた表情とは違う…完全に、自覚した後の表情だった)
「蝶子さんが、俺を好き…」
その言葉に、自分自身の熱が更に高まるのを感じた。




