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part1:ゴミまみれの出会い


遅い更新…

今テスト期間中なのに何やってるんだかね…




:7時20分


電気の点いていない薄暗い部屋で、机の上にある写真立てを手に見つめる。



「幸里ー?遅刻するわよー!」



下から聞こえる母の声に目を閉じて、彼女は写真立てを置いた。



写真立ての中には笑った二人の写真。



「行ってくるよ、未来」









:7時50分


登校でいつも通る道を歩きながら彼女は空を眺める。


彼女の名は橘川幸里。

空手部所属の高校2年生だ。


常に表情をかえずポーカーフェイスの彼女に友人らしい友人は、いない。

騒がしい喧騒のなかを独り静かに歩いていた。


ある一角の店を通りかかろうとしたところで、茶髪の青年にぶつかった。




青年は慌てて謝るが、すぐに後ろから追い掛けてくるものを確認すると路地裏に姿を隠した。



それを呆然と眺めていると追い掛けてきたらしい店番姿のお姉さんが息も乱さずに尋ねる。



「すいません、先程赤髪に黒いターバンを着けた男が走っていくのを見ませんでしたか?」



そう問われて、一瞬考える。



「この角真っ直ぐ走って行きましたよ」



路地の先の大通りを真っ直ぐ指差すと、もう一度確認するように問われる。



「大通りに、ですか?」



「えぇ」と頷くと、今度こそ一礼して走り去っていった。



女が路地を通って大通りへ出ていき、姿が見えなくなった頃。

傍にあるゴミ箱に目をやる。



「………行ったけど」



「サンキュー!助かったぜ」



話し掛けると、微かに蓋が開き、辺りを確認しながらガサゴソと物をどかして這い出てくる。



「あんた、名前は?」



「…近寄んないで欲しいんだけど」


傍に来ようとする青年には悪いが、ゴミ箱から出てきたのだから生理的に近づいて欲しくない。はっきり伝えると一瞬落ち込み、空のゴミ箱だと主張するが、それでも拒否した。

ほんの数分だが、その口論は続き、終には青年が諦めた。



「で。もう一度聞くけど名前は?」


「……橘川幸里」



仕方なく答えると、よし!とはにかむ。



「幸里、な。俺は」



「あぁ、いいよ。学校行くからこれで」



最後まで聞かず興味無さそうに踵を返す。

それを慌てて青年が腕を掴んで引き止める。



「待った待った!仲良くなるにはまず名前知っとかねぇと!」



「何時仲良く成りたいなんて言った!?ただの他人。それ以上でもそれ以下でも無いから」



振り返ると、困った様に何か言い訳を考えているのが伺える。



「え…と。じゃ、じゃぁさ!さっき俺が追われてた理由知りたいだろ!?」



「大方…何かの批判団体かテロとかでしょ」



「あたり!じゃねぇ!!ほんと待って!」



ノリツッコミの激しい男だ。

何時もは使わない声がこの時点で随分と消費したと思う。

冷めた瞳で彼を傍観していると不意に携帯のアラームが鳴った。



「学校遅刻…。あんたのせいだからなんか奢って」




そう告げると一度固まり、財布のなかを確認する。



「……うん、まぁいいや。行かないでくれるだけマシか…」



パンと小気味の良い音を出して財布を閉じると独り焦燥感たっぷりに呟いた。


彼が辺りを確認してから通りに出る。



「あ、俺の名前は竹市小暮。小暮でいいからさ!」



愛嬌のある笑顔で男は名乗った。誰も何も言っていないが、仕方なく聞き流す程度に諦めた。

勿論彼が何か言われようがポジティブ思考の持ち主であることは今更だ。



「…………あのさ」



「うん?」


「何処向かってんの?」



すたすた歩く小暮に素直に着いてきていた幸里であったが、奢れと頼んだはずが歩いているのは細い路地裏。とうとう聞いてしまった。



「いや〜。この場合どうすればいいのか分かんねーんだよ。俺馬鹿だからさ」



「だろうね。で、何処に…」



なんだか微妙そうな表情を浮かべる小暮には一切興味をみせずに辺りを見渡す。

するとある一点で止まる。



「……?」



「さっすが!なんだか分かる?」



それはゴミ捨て用のダストなのだが、何かおかしい。別にセメントだとか、幅が薄いとか、なぜこんな路地にといった疑問ではない。


そこではっと気付いた。

随分と綺麗なのだ。

ゴミ捨て場としては使われていないような。



「ここは通路さ。俺たちだけの、な」



ゴミ捨て場の蓋を開けると中は普通のセメントの底があるだけで、通路とは思えない。

不思議そうに覗き込んだ幸里を「入れば分かる」、とだけ言い突き落とした。



勿論頭から落ちたが、幸里の体重がかかった瞬間底が開いて更に先へと続いていた。




見事に背中を強打し、呻く幸里。その横に後を追って落ちてきた小暮が軽々と着地を決めた。


それを見て何とも言えない殺意が芽生えた。









暗いながらも足元には蛍光灯が灯り、道を示している。

それが確認できるだけでも只の洞窟ではないのは確認できる。

淡い光を頼りに二人は進んでいく。

時々蜘蛛の巣、石の塊があると、この通路を使用した形跡がなく不安にもなるが。



「あんまり綺麗に整備すると、もしばれた時わかっちまうだろ?だから放置気味なんだ」



歩きにくくて仕方ないけどな、と苦笑を漏らす小暮。多分穴が空いてる次点でばれると思うんだけど、と思う幸里だったが心の内に止めるに終わった。


暫く歩いた頃。

いきなり小暮の足が止まった。

何だろうと立ち止まると、同じような岩の壁のある一点へと近づいて手を置く。

するとガコンという音と共に手を置いた部分だけが凹んだ。

それはスイッチみたいなものだったらしく反対側の壁がずれ鉄の扉が現れた。



ギイィという音と共に扉が開く。


「ようこそ、テロ本部へ」




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