「この世界で私だけが神様に愛されていない」短編
「イザベラ・クラインだな」
私の名を呼ぶその男の目は、真冬の氷よりも冷たかった。
「……あなたは、いったい?」
絞り出した声は、想像していたよりも震えていた。
「私の名はザイモン。
この世界の全てを司る神、エルンスト様の補佐官を務めている」
「……!」
神の補佐官ということは、目の前の男もまた神なのだろう。
「そのような尊きお方が、なぜ私のところに?」
学園の課外活動の途中だった。
森で迷い、クラスメイトとはぐれた私の前に、突如この男が現れた。
漆黒の髪、黒曜石の瞳、常識離れした美しさを持つ彼は、独特の存在感を放っていた。
だけど……まさか神様だったなんて。
「神は王国の千年祭の祝いとして、ハンナ・リヒターに聖女の力を与えた。
彼女は誰からも慕われ、敬われ、彼女の意見は誰よりも尊重されなければいけない」
リヒター男爵家の長女ハンナ様が、赤子の時、聖女の加護を受けたことをこの国で知らぬものはいない。
伯爵家以上の名門貴族しか入学できない学園に特例で入学し、選ばれた者しか入れない生徒会に在籍している。
「彼女は王太子コンラートと恋に落ちた」
ドクン……! と心臓が鼓動を打った。
コンラート様は私の婚約者だ。
ハンナ様が、彼を慕っている……?
心の中を引っかき棒でかき回されるような、嫌な感じがした。
「ハンナの結婚相手は、彼女の能力に見合ったものでなくてはいけない。
私の予想では、生徒会のメンバーの誰かと恋に落ちると思っていた。
しかし、彼女が選んだのは王太子だった」
目の前の男が、すっと目を細め私を見据える。
石ころや虫けらを見るような、まるで感じられない目だった。
生徒会のメンバーはハンナを含め六人。
王太子コンラート様、宰相の息子トビアス様も、魔術師団長の息子ティム様も、騎士団長の息子オスカー様、私の義弟カール。
「ハンナはエルンスト様の祝福を一身に受けている。
彼女の恋が成就しないなど、あってはならない。
そのようなことがあれば、あのお方がお心を痛める」
ザイモンと名乗る男にとって、大事なのは神と、神の祝福を受けたハンナだけだということがよくわかった。
「王太子もハンナを愛している。
卒業式のパーティーで婚約破棄を発表する予定だ」
ズキッ……! と音を立て、心臓にナイフで抉られたような痛みが走る。
男の発した言葉を一瞬理解できなかった。
コンラート様もハンナを愛している……?
私との婚約破棄を計画している……?
地面が崩れ落ちるような感覚を覚えた。
私とコンラートが婚約したのは五歳。
王命による一方的な婚約だったが、私はコンラート様に一目で恋し、王太子の婚約者としての役割を今日まで果たしてきた。
家族と過ごす時間を削られても、王太子妃教育がどんなに辛くても、音を上げたことはない。
私は物心ついたころから王太子の婚約者だった。
王妃になる道以外知らないし、知る必要もないと思っていた。
コンラート様との関係も良好だと思っていた。
月に一度のお茶会では笑顔で接してくださるし、パーティーでもエスコートしてくださった。誕生日プレゼントも毎年いただいている。
政略的な婚約でも、お互いに愛情を持っていると思っていた。
婚約者として過ごした十三年間の絆と、信頼があると思っていた。
それが全部偽りだった……?
お茶会で私に笑いかけてるときも、パーティーでダンスを踊っているときも、コンラート様の心の中にはいつもハンナ様がいた……?
彼は私を邪魔に思い、排除する計画を立てていた……?
ナイフで抉られた心に、北風が雪とともに吹き込んできて、心が酷く冷える。
「生徒会のメンバーも、お前たちの婚約破棄に賛同し、王太子とハンナの恋を応援している」
ザイモンと名乗る男は容赦がない。
ナイフで抉られた傷口に、剣や斧を突き立てられた気分だ。
生徒会のメンバーは私の幼馴染だ。義理の弟のカールもいる。
カールは今朝も私に「姉様、おはようございます。今日は寒いのでショールを用意するように従者に伝えますね」とニコニコと笑いながら挨拶をした。
その朗らかな笑顔の裏で、私を裏切っていた……!
トビアス様も、ティムも、オスカーも、何事もなかったように、笑顔で挨拶をした。
彼らは大切な友人で、コンラート様と結婚後は、重臣として支えてくれる大切な仲間だと思っていた!
信じていた……!
それなのに……私に笑顔を向けたその裏で、コンラート様とハンナ様の恋を応援していた!
私に何も伝えず、婚約破棄の計画をしていた!
みんなで私を排除しようとしていた……!
彼らにとって大切なのは、ハンナ様だけなのだ。
幼い頃から親しくしてきた彼らは、目の前の冷酷な神の補佐官と同じ意見だった。
バキバキと何かが音を立てて崩れていく。
凍りついた私の心臓を、誰かが握りつぶしている……そんな感覚がした。
私はずっと信じていた。
コンラート様や生徒会のメンバーが、ハンナ様と親しくしているのも、彼女との時間を優先しているのも、彼らが「生徒会の仕事だ」と言った言葉をその通りに受け止めていた。
婚約者や仲の良かった幼馴染を取られたような気がしたが、それでもその感情に蓋をした。
ハンナ様に意地悪をしたことなどない。
私が大切だと思っていただけで、彼らにとって私はどうでもいい存在だったようだ。
「王太子が婚約破棄をし、ハンナを選んだ場合、『聖女が公爵令嬢から婚約者を奪った』という良くない噂が立つおそれがある。
ハンナはエルンスト様が加護を与えたたった一人の聖女。
そのような噂が流れたのでは困るのだよ」
この男にとって大切なのは神と、聖女であるハンナ様のみ。
その他大勢のものなど、道端の石ころ程度の価値なのだろう。
彼の冷酷な瞳がそれを物語っている。
「なので、神の名をもとに、聖女の障害となるお前を殺すことにした」
男は酷く残酷な言葉を、事務報告のように語った。
「イザベラ・クライン、お前には病死してもらう。
お前が病死すれば、王太子との婚約は自動的に破棄される。
ハンナは婚約者を失って悲しみに暮れている王太子に寄り添い癒やした、名実ともに聖女として皆に称えられるだろう」
なんという自分勝手な理屈だろう。
この男にとって神の行いが全てにおいて優先される。
神の祝福を受けたハンナが、愛する人と結婚し、民から慕われ、皆に称えられれば、神は心正しい者に力を与えたと証明される。
そのためなら、私はどうなろうとどうでもいいのだ。
「薬をやろう。
これを飲めば苦しまずに死ねる」
男が懐から小瓶を差し出した。
小瓶には禍々しいオーラを放つ緑色の液体が入っていた。
何もかも自分の思い通りになると思っているその態度も、顔も気に入らない。
「お断りします!」
私は差し出された小瓶を手で払った。
瓶は地面に落ちたはずみで蓋が外れ、中身が溢れた。
私の命まで、彼らの思い通りにはされない!
「コンラート様との婚約破棄は受け入れます!
ですが死は受け入れられません!」
本当は婚約破棄を受け入れるのは死ぬよりも苦しい。
私の十三年間の努力が……いえ、私という存在そのものが否定されるような気持ちになるから!
だけど、この状態で死を受け入れるのはあまりにも惨めだ。
「その薬を飲めば苦しまずに死ねたものを……。
愚かな事をしたものだ」
男は鋭い目で私を見据え、腰の剣に手をかけた。
「予定変更だ。
イザベラ・クライン、お前は強盗に殺されて死ぬ。
お前の死に方などどうでもいい。
婚約者を失い悲しみに暮れる王太子を、聖女が癒した……。
最終的に、そういう筋書きになるのだからな」
男が剣を抜き襲いかかってきた。
私はとっさに攻撃を避け、踵を返し全速力で駆け出した。
ここにいては殺される!!
逃げなくては……!
どこをどう走ったかわからない。
とにかく必死に走った。
走って、走って、走って……崖の上に追い詰められていた。
木の枝に引っかかり制服は破れ、靴の片方は脱げ、男の攻撃を避けた時、腰まであった髪は切られた。
「無様だな。
薬を飲んでいれば、楽に死ねたものを」
男は獲物を追い詰めたことで気分が高揚しているのか、口角を上げ、にたりと笑った。
背筋がゾクリとした。無表情より笑顔の方が不気味だ。
「これで終わりだ!」
男が剣を構え突進してくる。
もう駄目だ……! と私は覚悟を決める。
しかし、刃が私に届くことはなかった。
その前に地面が崩壊したのだ。
足元が崩れ、私の体が岩とともに落下していく。
「この高さから落ちては助かるまい。 イザベラ・クラインは森で強盗に襲われ転落死した。
そう発表しよう」
そんな男の声が聞こえた気がした。
◆◆◆◆◆
――半年後――
カランとベルが鳴り、「いらっしゃいませ……なんだお前か」店主は愛想笑いを浮かべたが、入ってきたのが私だともわかり、眉間にしわを寄せた。
「お約束の薬草をお届けに参りました」
「今忙しいんだ。そこに置いといてくれ」
三十代前半と思われる男性店主は、しっしと虫でも払うかのように、手を動かした。
「では、お代を……」
「がめつい女だな!
言われなくてもわかってるよ!
ほらよ!」
店主が私に向かって小さな袋を投げつけた。
袋は私の顔に当たった後、地面に落ち、中に入っていた小銭が床に散らばった。
私は床に這いつくばり、お金を拾い集める。
このような扱いを受けるのはこれが初めてではない。
最初は怒りも湧いたし、抗議もしたが、店主の怒りが増すだけだった。
さっさとお金を受け取って店を出て、薬草を探す時間に当てた方が遥かに有意義だと、今では悟っている。
だが……これは見過ごせない。
私は拾い集めた銅貨を数え、短く息を吐いた。
「あの……」
「まだいたのか?
邪魔くさいな!」
「お金が足りません。
薬草十枚で百ギル、
毒消し草十枚で二百ギルのはずです。
ちゃんと払ってください」
拾い集めたお金は全部で八十ギル、半分にも満たない。
「人聞きの悪いことを抜かすな!
俺はちゃんと払ったぜ!
お前が拾い忘れたんじゃないのか!」
「そんなはずありません!
床に落ちたお金は全部拾いました!」
「しつこいぞ!」
「お金を払わないなら薬草は渡しません!
返してください!」
「触るな!
これはもう俺のもんだ!」
私はカウンターに置いたかごに手を伸ばしたが、それより先に店主がかごを確保していた。
「ほら! かごは返してやるよ!」
かごを頭にぶつけられ、その上突き飛ばされた。
床に尻もちをついた私を見て、店主が嘲るように笑う。
「さっさと帰ればそんな目に遭わなかったんだよ」
これ以上、ここにいても無駄だ。
立ち上がろうと床に手をつくと、右手がズキリと痛んだ。
突き飛ばされたとき、痛めたらしい。
今日は災難だわ。
その時、カランと音がして客が入ってきた。
「薬草をおくれ。
おや、何かあったのかい?」
入ってきたのは中年の女性だった。
女性は床に尻もちをついている私と店主の顔を交互に見た。
「何でもありませんよ。
この女が言いがかりをつけたから懲らしめてやっただけさ。
ちゃんと代金を払ったのに、足りないと抜かしやがる」
店主の言葉からは罪悪感など微塵も感じなかった。
「どこの誰ともわからない奴から、お情けで薬草を買ってやってるのによ!
ほんと困るよな!」
店主は私の顔を見てチッと舌打ちをした。
「なんて浅ましい。
だから言ったでしょう。
こんなみすぼらしい子を店に入れるなって」
彼らにとって私は悪者なのだ。
私は立ち上がり、スカートの埃を払った。
これ以上ここにいる意味はない。さっさと帰ろう。
壁まで転がったかごを拾おうとしたとき……。
「それより、聞いたかい?
コンラート殿下と聖女ハンナ様の婚約が決まったそうだよ」
背後から聞こえた話し声に、心臓がドキリと音を立てた。
コンラート様とハンナ様が婚約……?
何に驚く必要があるの?
あの二人は愛し合っていた。
私と婚約破棄してまで婚約したかったのだ。
私が死んだとわかったら、堂々と婚約するだろう。
神の補佐官を名乗る男は、きっと私が強盗に殺されたとそう報告しているだろうから……。
「随分と時間がかかったな」
「男と逃げたとはいえ、殿下は公爵令嬢と婚約していたんだもの。
次の婚約までには時間がかかるさ」
また心臓が嫌な音を立てた。
男と逃げた……?
誰が?
もしかして、私が……?
「全く、イザベラって女はとんでもないあばずれだぜ。
王太子の婚約者でありながら、男と逃げたんだからな」
ドクンドクン……と心臓が嫌な音を立てる!
聞きたくないのに、ここを離れることができない!
「殿下は、そんな女と結婚しなくてよかったよ。
いくら身分が高くても、身持ちが悪くてはね。
生まれてきた子供の父親を疑うことになるからね」
「全くだぜ。
だが、結果的に良かったじゃねぇか。
公爵令嬢が男と逃げてくれたおかげで、殿下は清らかなハンナ様と婚約できたんだから」
「ほんとにね。
災い転じて福となすだ」
信じられない……!
私は神の補佐官と名乗る男に命を狙われ、逃げただけだ!
崖が崩れたあと、私は川に落ち、運よく親切な人に助けられた。
生きていると分かればまたあいつが襲ってくる……!
だから私は、家族にも生きていることを伝えなかった。
逃げるように王都を離れ、この小さな村にたどり着き、薬草を売りながらほそぼそと生計を立てている。
学園で学んだ薬草学の知識が、こんなところで役に立つとは思わなかった。
私は誰にも迷惑をかけずに生きている。
家族も、コンラート様も、幼馴染だった生徒会のメンバーも、私の死を少しは悲しんでくれていると思っていた。
事情があるとはいえ、生きていることを告げられないことに罪悪感もあった。
それなのに……!
神の補佐官を名乗るあの男は、私が浮気をしたあげく、男と逃げた悪女として噂を広げたのだ!!
いや、あの男がやったという証拠はない。
考えたくはないが、コンラート様がよりドラマチックな恋を演出する為に、私を死んだことにせず、男と逃げたと公表したのかもしれない。
どちらにしても、私の評判は最悪だ。
なぜ、私が誹りを受けなくてはならないの?
こんなことなら、あの時、毒薬をもらっていた方が幸せだったかもしれない。
短命な公爵令嬢として、家名に傷をつけることはなかったのだから……。
「おいお前、まだいたのかよ!
お前がいると辛気臭いんだよ!
さっさと出ていけ!!」
店主に怒鳴られ、私はようやく我に返った。
「いやね、人の話を盗み聞きして。
育ちが知れるわ」
私は逃げるように店を後にした。
◆◆◆◆◆
最低だ……。
コンラート様が私と婚約破棄して、ハンナ様と婚約しようと知った時以上に最低の気分だ。
薬草は値切られ、罵声を浴びせられ、嘲笑われ、怪我をして、いわれのない罪を着せられ自分の名前が地に落ちた事を知った。
今日は厄日ね。
薬草と毒消し草を集めるのは大変だった……。
お金が入った麻袋をぎゅっと握りしめる。
予定通りにお金が入ったら、ふかふかのパンとお肉を買おうと思っていた。
今日はもう疲れた……。
木の実を集めて夕飯にしなくてはいけない……。
それも面倒。
ベッドに入って眠ってしまいたい。
私はとても疲れていた。
だから……後をつけられていることに気づかなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
気がつけば、数人の男に取り囲まれていた。
村から離れた森の中。
叫んでも誰も来ない。
「何ですか、あなた方は!」
キッと相手を見据えるが、彼らに動じる気配はない。
「俺達は見ての通り強盗だ!」
「私……お金なんて持っていませんよ!」
貧乏人を狙っても何も出ない。
「俺達の狙いは金じゃない!
お前だよ!」
男の一人が私の腕を乱暴に掴んだ。
背筋を虫が這っているような、嫌な感覚がして、体中に鳥肌が立った。
「離して!」
男は、私が目深に被っていたフードを無理やりはいだ。
周囲の男たちから、どよめきが起きた。
「美人だ」「想像以上だ」という声が聞こえる。
美人と言われ、ゾッとする日が来るとは思わなかった。
「なぁ?
俺の見立て通りべっぴんだろ?
しかも珍しい金髪。
ボロを纏っているが言葉遣いや立ち居振る舞いは、上流階級のものだ。
これは高く売れるぜ!」
庶民のふりをして目立たないように生きてきた。
だけど幼少期から身につけた所作は、隠しきれなかったようだ。
男たちは下卑た瞳で、私を上から下まで舐めるように見つめた。
恐怖で体が震えた。
「売る前に、少しお楽しみしちゃおうかな」
男の手が私の胸元に伸びる……!
「いやっ!」
掴まれていない方の手で、胸を抑えることしかできなかった。
もう駄目……と思った次の瞬間!
閃光が走り、男たちが地面に倒れていた。
私は、何が起きたのかわからず呆然とし立ち尽くしていた。
「全く……。
人の世というのは困ったものだ。
どんなに排除しても、このような輩が湧いてくるのだからな」
声がした方向に目を向ける。
少し先に見知らぬ男性が立っていた。
真っ白のローブを身にまとい、腰まで届く銀色の美しい髪をたなびかせている。
男はアメジスト色の珍しい瞳をしていた。
強盗の仲間には見えないが、油断はできない。
「彼らは、貧しさからこういうことをしてるんじゃないんだ。
裕福な商家に生まれ、親の愛情を受けて育ち、学校にも通わせてもらった。
他に生きる道があった。
それなのに遊ぶ金欲しさに、自ら進んで強盗になった。
本当に救いようがない」
銀髪の男は強盗を眺め、残念そうに首を横に振った。
男がパンと手を叩くとロープが現れ、それはひとりでに動き、あっという間に男たちを拘束した。
魔法……?
目の前の男は人ではない?
だとしたら、彼は……。
体に緊張が走り、鳥肌が立った。
「こいつらは、兵士に引き渡しておく。
安心するといい、彼らは二度と君の前に姿を現すことはない」
男は私に向けて微笑みかけた。
私は無意識に後ずさっていた。
この男は、きっとザイモンと名乗った神の補佐官の仲間に違いない。
私の正体が知られたらきっと……。
「お嬢さん、怪我をしているみたいだね?」
「来ないで!」
私は男が伸ばした手を、振り払った。
それは男にとって予想外の出来事だったようで、信じられないといった表情で呆然と立ち尽くしている。
私は踵を返し、全力でその場から逃げ出した。
神も神の補佐官も信用できない!
私がイザベラ・クラインだとわかったら、殺されてしまう!
逃げよう!
今あるお金を全部持って逃げるんだ!
私は無我夢中で走り、何とか森を抜け、自分の家にたどり着いた。
家に着く頃には息が上がっていて、額に大粒の汗が浮かんでいた。
もう少し、もう少しで、家に入れる。
家の扉に手をかけたその時……。
「怪我をしているのに、無理はしていけないよ」
取っ手を掴んだ私の右手を、誰かの手が包みこんでいた。
「……っ!」
声にならない声が漏れた。
振り返れば、先ほど見た銀髪の男がすぐ後ろに立っていた。
「怯えることはない。
僕が治してあげよう」
男の右手が光り、私の体を柔らかい光が包み込む。
気がつけば、手首の痛みがなくなっていた。
疲労感や小さな傷や、腕を掴まれた時の痛みも消えていた。
「ほら、もう痛くないだろう?」
男は無害そうな笑顔を浮かべる。
私には彼の笑顔は恐怖の対象でしかなかった。
「触らないでください!」
私は男の手を振りほどき、彼から距離を取った。
「すまない。
怪我をしているようだったから気になって、後をつけてしまった。
心配しなくていい、怪しいものではない。
僕は君たちをいつも見守っている存在。
名前は──」
「聞きたくありません!」
私はそう叫んでいた。
男は心底驚いたような表情をしていた。
こんなふうに誰かから拒否されたことはないのだろう。
「すまない。
気になったとはいえ、女性の後をつけるべきではなかったね。
本当に君が心配で……」
「どうでもいいです!
帰ってください!!」
完全な拒絶を突きつけられ、男は見るからに動揺していた。
「わかった。
今日は帰ろう。
困ったことがあったらいつでも言いなさい。
そなたが、天に願ったなら、どこからでも駆けつけよう」
その言葉は、親切心から出た言葉なのだろう。
だが、その言葉は私を絶望の底に突き落とした。
……私の命を狙った黒髪の男の仲間が、私のことをどこからか見ている。
「どこに隠れようが無駄だ」……そう言われたのも同然だった。
「また会おう」
男はニッコリと微笑んだあと、姿を消した。
瞬きしている間の出来事だった。
これが人ならざる者の力なのだと……己の非力さを見せつけられているようで……。
心臓がざわりとした。
「もう放っといて……!
これ以上私にかかわらないで……!」
私はその場に力なく座り込んだ。
涙がとめどなく溢れていた。
荷物を持って逃げなくてはいけないのに……その気力すら湧かなかった。
◆◆◆◆◆
天界――。
「エルンスト様、お帰りになられたのですね。
外界の視察はいかがでしたか?」
執務室に帰るとザイモンが出迎えてくれた。
彼は僕に仕えてまだ百年ほどしか経過していないが、仕事ができるので重宝している。
「ザイモンか、相変わらずだよ。
どんなに排除しても、どこからか強盗や詐欺師などは湧いてくる」
椅子に腰掛け、ふーーっと深く息を吐いた。
「人間とはかくも愚かしきものですからね。
お疲れのようですね。
ハーブティーを入れましょう」
「ありがとう」
ザイモンは、僕が今飲みたいものを言わなくても察してくれる。
ハーブの種類も、お茶の温度も、その日の僕の気分に合わせてくれる。
本当に気が利く部下だ。
「どうぞ。
ハーブティーに合うように苺も添えました」
「ちょうど今、食べたいと思っていたんだ」
カップを持ち上げると、ミントの爽やかな香りが鼻腔をくすぐった。
苺を口に入れると、口の中いっぱいに甘酸っぱさが広がった。
疲れていた体にハーブの香りと、苺の酸味が染みこんだ。
「エルンスト様、おかえりになられた時、浮かない顔をされていましたが、何かあったのでしょうか?
罪人を裁くのは気が引けますか?
彼らはエルンスト様の理想からかけ離れた存在。
処罰するのをためらう必要はございません」
ザイモンは正義感が強いので、悪人が許せないのだろう。
「いや、そうではない。
実は今日、不思議な少女に会ってね」
「不思議な少女ですか?」
「身なりは貧しいが、所作は美しく、顔は整っていて、瞳には賢者のようなきらめきがあった。
貧しい村の近くの森で、一人で暮らしていた。
うら若き乙女が一人、そのような場所で暮らしているなんて……。
いったい、どのような事情があったのだろう?」
少女の姿を思い出すと、胸の奥がざわついた。
救えなかったからか、それとも拒否されたからか……。
彼女の顔が頭から離れなかった。
「それは気になりますね」
「少女は強盗に襲われ、怪我をしていた。
心配だったから、彼女の後をつけて治療をした。
森で一人で暮らすのは危険だから、保護しようとしたのだが……。
彼女は恐ろしいものを見るような目で僕を見て、僕の助けを拒んだんだ」
そんなことは初めてだから、どう対応していいかわからない。
「その娘は、エルンスト様の善意を拒絶したのですか?」
ザイモンが目を見開いている。
「少女は野盗に襲われたばかりだった。
見知らぬ男に声をかけられ、怯えていたのかもしれない。
もしかしたら……僕の不思議な力を見て動揺したのかもしれない」
少女は一時的な混乱状態にあり、誰の存在も受け付けなかった……そう思いたい。
「ザイモンはどう思う?
こういうことは初めてだから、どう受け止めていいかわからないんだ。
皆、私が手を差し伸べれば心を開き、感謝の言葉を述べてくれたから……」
こういう時は第三者の意見を聞きたい。
ザイモンは一瞬の間のあと、朗らかに微笑んだ。
「強盗に襲われた恐怖で、一時的に混乱していただけでしょう。
エルンスト様が気にかけることではございません。
その娘の件は、私が対応しておきます」
「いや、しかしそれでは──」
「エルンスト様には、やらなければならないことがございます。
その娘の他にも、助けを求めている者は大勢いるのです。
一人のために大勢を犠牲にする必要はございません」
「それは……」
「混乱状態にあったとはいえ、娘がエルンスト様に恐怖を感じたのは事実。
恐怖を感じた相手に何度も接触されては、娘も辛いでしょう。
ですからどうか、彼女のことは私にお任せください。
私が、確実に処理しておきますので」
ザイモンの言うことも一理ある。
「そうだな。
では今回の件は君に任せよう」
「ありがたき幸せに存じます」
ザイモンは仕事が早い。
彼に任せておけば大丈夫だろう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あれからどれくらい時間が経っただろう?
日が傾き、気温が下がり、体の熱が奪われるまで、私は扉の前に座り込んでいた。
空腹と冷えと喉の乾きで、私は覚醒する。
このままでは死んでしまう……!
私は気力で体を動かした。
家に入り明かりを付ける。
外は真っ暗だが朝まで待てない。
すぐに荷物をまとめ、ここを立たなければ!
ザイモンと名乗った黒髪の男の、冷淡な顔が脳裏によぎる。
それだけで心臓がギュッと締め付けられ、あの日の恐怖が蘇る。
震える手でなんとか荷物をまとめ、あるだけのお金を持って、私は扉を開けた。
「……!」
扉の前に、二度と遭遇したくなかった男が立っていた。
「エルンスト様のご厚意を無下にした厚顔無恥な娘がいるというので、処理しに来たが……。
まさか、お前だったとはな」
男の声を聞いた瞬間、心臓がドクドクと音を立て、恐怖で体が硬直する。
黒髪の男は、あの日と変わらない冷淡な目で私を睨みつけていた。
「うっ……ああっ……!」
私は震える足を引きずり、数歩後退した。
狭い小屋の中に逃げ場などないというのに……。
「まさか聖女を害する悪女が、このようなところで生きていたとはな」
「悪女」という言葉に、血が沸き立つような思いがした。
「わ……、私は何もしていません!
私を悪女に仕立てたのはあなたです!」
怒りの感情が恐怖に勝った。
どうせ殺されるなら、最後に言いたいことを言ってやろう。
「私が男と逃げたという、デマを流したのはあなたですね!」
男は罪悪感の欠片もない顔で、にやりと口角を上げた。
「お前が私の言うことを聞かないからだ。
私が最初に提案した時、素直に薬を受け取っておけば、眠るように死ねたのだ。
家族や友人に別れを告げることもでき、名誉が傷つくこともなかった」
全ては神の補佐官である男に背いた私が悪いという言い方だ。
「でなければ、私の剣の錆になるべきだった。
そうすれば強盗に殺された哀れな少女として、民衆から同情されただろうに」
なぜ私がこの男の筋書き通りに生きなければならないのだ。
私の存在を「悪」と決めつけるこいつのいいなりになるのは悔しい!
私が何をしたというの?
公爵家に生を受け、年齢と家格が釣り合うという理由でコンラート様の婚約者にされ、厳しい王太子妃教育を強要された。
当然選ばれると思っていた生徒会役員にはなれず、一般の生徒からは蔑まれ、家族からは失望された。
それでも、特待生のハンナ様が生徒会役員に選ばれた時は笑顔で祝福した。
学園で、婚約者や幼馴染がハンナ様と楽しそうに過ごしているのを見ても、恨み言も嫌味も言ったことはない。
「私は何も悪いことをしていません!
ハンナ様を害することはもとより、恨み言や嫉妬を口にしたこともありません!」
こんなのあんまりだわ!
「それなのにあなたは、私の『存在そのものが悪』だと決めつけ、排除しようとした!
素直に死ななかった私への嫌がらせに、悪評を広めた!
私がハンナ様が愛したコンラート様の婚約者だったという理由だけで!」
理不尽すぎる!
神の補佐官なら何をしても許されるというの!
「そうだ!
聖女ハンナは、エルンスト様が千年祭の祝に加護を与えた特別な存在!
彼女の願いはすべてにおいて優先される!
それを邪魔する者は、悪と見なされて排除されて然るべきだ!」
彼の目には強い意思が宿っていた。
これが神の意思だというの?
「おしゃべりは終わりだ!
半年前に刈り損ねた雑草を始末する」
男は冷たい表情でそう言った。
まるで虫でも踏み潰すかのように。
男が剣を抜き迫る。私は男が一歩近づくたびに、一歩後退したが、すぐ壁際に追い詰められてしまった。
「今度こそ死ね!」
男が剣を振り上げ、私は目をぎゅっとつぶった。
もし……二度目の人生があるなら、神が存在しない世界に生まれたい。
神など信じない! 神になど頼らない!!
だが、いつまでたっても衝撃がこない。
恐る恐る目を開けると……黒髪の男が光の鎖で拘束されていた。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
神の補佐官を拘束できる者がいるとするなら、彼よりも格上の存在だ。
そんなの、神本人しか考えられない。
「ザイモン、残念だよ。
君がこんなことをしていたなんて」
黒髪の男の背後には、昼間会った銀髪の男が立っていた。
「何の罪もない少女を、君は無慈悲に殺そうとした。
言い分があるなら聞こう」
銀髪の男は苦悩と悲しみが入り混じった表情で、男を見据えた。
「エルンスト様、誤解です!
この女は聖女ハンナ様に仇なす者!」
黒髪の男が必死に無実を訴える。
「神の加護を一心に受ける貴き聖女の恋心に蓋をさせ、心を曇らせる存在!
そのようなものが、この世に存在していいはずがありません!
彼女を排除することが聖女の心を保ち、ひいてはこの国の安寧につながるのです!
だから私は……!」
黒髪の男は拘束から逃れようともがいたが、光の鎖はびくともしなかった。
「それは違う。
確かに私は十八年前、千年祭の記念に、一人の赤子に聖なる力を授けた。
聖女の存在がこの国の希望となるように」
聖女ハンナは、聖なる力でモンスターを祓い、瘴気を浄化し、人々の病や傷を治した。
「希望」という言葉は彼女にぴったりの表現だ。
私には絶望の象徴だったが……。
「だからと言ってハンナのためなら何をしてもいいことにはならない!
この国の秩序を乱し、何の罪も犯していない少女に汚名を着せ、殺していい理由にはならない!」
銀髪の男の言葉は厳しい口調でそう言い放った。
黒髪の男は、項垂れている。
「残念だよ、ザイモン。
君がこんな間違いを犯すなんて」
「エルンスト様、どうか、どうか、ご慈悲を……!」
黒髪の男は必死に懇願する。
銀髪の男は静かに首を横に振った。
銀髪の男が呪文を唱えると、黒髪の男の体に稲妻が走り、数秒後には跡形もなく消えていた。
黒髪の男が死んだのか、存在そのものを抹消されたのか、私には分からない。
「すまない。
私の部下が非礼を働いた。
君にはどう謝ったらいいか……」
銀髪の男は今にも泣きそうな顔をしていた。
「償いをしよう。
君の望みを叶えるよ。
元の生活に戻りたいのならそのように図ろう。
王太子との結婚も──」
「謝罪しないでください!
そして今後一切、私に何もしないでください!」
口から出てきた言葉は、思っていたよりずっと冷たかった。
「私は神様に、もう何も期待していません!」
銀髪の男は目を見開き、苦しそうに顔を歪めた。
「だが、それでは……」
「コンラート様と結婚?
今更です。
彼は私という婚約者がいながら、ハンナ様と浮気をし、婚約破棄を計画していた」
私は一度言葉を切った。
「その計画に生徒会のメンバーは賛同していた。
義弟も幼馴染もハンナ様の味方だった。
そんな人たちと仲良く政などできません!」
権力を持ったら、私は彼らを殺してしまうかもしれない。
「そもそもコンラート様はすでに、ハンナ様と婚約しています」
このような田舎まで噂が流れるくらいだ。式の準備は着々と進んでいるだろう。
「ハンナ様との婚約を破棄させるんですか?
それともハンナ様を正妻にして、私を側室にしますか?
政治に不慣れなハンナ様の代わりに私が王太子妃の仕事を引き受け、ハンナ様はコンラート様と一緒に楽しく遊んで暮らしますか?
そして手柄は全てハンナ様のものにしますか?」
きっと周りが望む私の役割はこれだろう。
「ハンナ様は生まれた時から神に愛されている存在、彼女の周りにいる人間は、彼女を引き立てる為の証明に過ぎないのですから」
「そんなことは……」
「なら、コンラート様を二人に分裂させ、それぞれに与えますか?
私は浮気男などごめん被りますけど」
コンラート様も、生徒会のメンバーも、義弟も、私が男と逃げたという噂を信じた。
ハンナ様と婚約するには、前の婚約者である私の評判は低い方が良かったのかもしれない。
神の補佐官が流した噂だ……信じるなという方が無理がある。
それでも、相手との関係を切るには充分だ。
「わかったでしょう?
あなたにできることは何もありません。
名誉の回復も、地位の回復も何も望みません!
目の前から消えてください!」
「なら、天界で一緒に暮らさないか?」
今、なんて言いました……?
「地上が駄目なら神の国で暮らそう」
「私のことを、虫けらのように殺そうとした方々のいる世界に、連れて行くとおっしゃるのですか?
私に一生怯えて暮らせと?」
「違う! そうではない!」
「同じです。
何も変わりません」
私は首を横に振った。
「もし私のことを哀れだと思うなら、放っておいてください!
そして今後一切、私の人生に手を出さないでください!」
私は銀髪の男を見据え、きっぱりと言った。
彼は今どんな気持ちだろう?
有り余る力がありながら、目の前の人間を救えない。
それはきっと神にとって、屈辱であり、敗北なのだ。
ほんの些細な傷でもいい。
相手に一矢報いることができた。
すぐに消えるかすり傷でも構わない。
私は、自分の力で神に抗ったのだ。
「今回のことを一切口外しないでください。
あなたの配下にも、人間にも、誰にもです」
男は何か言いたげに口を開いたが、一度閉じ、苦しげに頷いた。
「……分かった。それが君の望みなら従おう」
「話はそれだけです。
消えてください」
銀髪の男は、私に頭を下げ、霞のように消えていった。
おそらく神は、人を助けられる力を持ち、助けることに喜びを感じてきたのだろう。
そんな彼の前に、助けられない存在が現れた……これほど無力感を味わうことはないだろう。
彼は、いつも誰かに相談していたのだろう。
神が動く前に、彼の意を組み、行動するものもいたのだろう。
ザイモンもそのうちの一人。
私にとっては迷惑以外の何者でもない。
今更謝られても、謝罪も、償いも受け入れることはできない。
放置こそが、私には最上の償いになる。
神には罰になる。
今まで何でも人に打ち明けてきた者が、誰にも相談できないのは、さぞストレスが溜まることだろう。
私はもう何もこの人生に期待しない。
幸せになることすら望んでいない。
私が非業の死を遂げ、神の苦しみに繋がるのならそれでいい。
◆◆◆◆◆
公爵令嬢イザベラ・クラインの悪い噂は尾ひれをついて広まった。
浮気する女を「イザベラ」と呼ぶようになり、その呼び名が定着するのに時間はかからなかった。
私はといえば、今も変わらずあの村で暮らしている。
相変わらず、店主には怒鳴られ、薬草を買い叩かれ、村の人たちにも邪険にされている。
生活は困窮し、食べる物にも困る有様だ。
そしてある時、病にかかり動けなくなった。
腕は枯葉のように痩せ細り、水すら汲むことは叶わない。
見舞いに来る者も当然おらず、見取る人は誰もいなかった。
だが、それで構わない。
私の死に方が無惨であればあるほど、神は心を病むのだから。
私はもうじき死ぬ。
神が私の死を見て苦しむのなら、万々歳だ。
◆◆◆◆◆
その後――。
イザベラの目論見通り、天界でイザベラの悲惨な死を見届けた神は心を病んだ。
神は悔やんだ。
自分の配下を管理できなかったこと。
イザベラ・クラインを救えなかったこと。
そして、ハンナに聖女の力を与えてしまったことを……。
己の無力さを悟った神はどんどん弱っていった。
神の心の乱れは、世界に異変をもたらし、聖女の力にも影響を与えた。
聖女の力は日に日に不安定になり、最後には消えてしまった。
聖女の力を失ったハンナは、王太子妃にふさわしくないと糾弾された。
あれほどハンナの力に世話になっていた人々が、手のひらを返したのだ。
ハンナを王太子妃に選んだコンラートや、ハンナを王太子妃に推薦した元生徒会メンバーにも批判が集まった。
聖女が力を失い、各地で天変地異が相次いだことで、人々の心は荒んだ。
不安と混乱が広がり、治安は急速に悪化した。
その結果、野盗が増えた。
イザベラから搾取していた薬屋の店主は、野盗に殺され、むごたらしい最後を遂げた。
その後、村は魔物の襲撃に遭い消滅した。
畑は荒れ果て、作物は枯れ、餓死者が相次いだ。
国は滅び、あとには魔物しか残らなかった。
その魔物も共食いをはじめ、個体数を減らしている。
数年後残るのは、荒れ果てた大地だけ。
イザベラの長い時間をかけた世界への復讐は、こうして幕を閉じた。
――終わり――
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【お知らせ】
『妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される』のコミカライズ版が、2月6日(金)よりコミックシーモア様にて配信開始となります。
茶賀未あと先生による美麗な作画が目印です。
コミカライズ版でも、リアーナとアルドリックの物語をお楽しみいただけると幸いです。
▶コミックシーモア様先行配信
▶作画:茶賀未あと
▶原作:まほりろ
▶第十二回ネット小説大賞受賞作
▶コミカライズ1〜3話:配信中!
▶コミカライズ4話:3月6日配信です!
▶WEB小説版URL
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