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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第二章:価値は、すぐには測れない

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6/10

第六話:評価が追いつく前兆

変化は、音を立てて起きない。


ある朝、

ギルドの掲示板を見ていて、

それに気づいた。


依頼の紙は、

いつもと同じように貼られている。


護衛。

討伐。

調査。


条件も、報酬も、

特別なものはない。


だが――

一枚だけ、位置が違った。


端ではない。

中央寄り。


「……ん?」


足が止まる。


内容は地味だ。


街道周辺の流通確認。

異常があれば報告。

戦闘想定、なし。


報酬は、並。


評価条件は――

D以上。


俺は、Eだ。


取れない。

はずだった。


受付嬢が、

こちらに気づく。


目が合う。


以前なら、

そこで終わっていた。


だが今日は、

少しだけ間があった。


「それ」


彼女が、

掲示板の紙を見る。


「条件、緩和されました」


「……なぜ?」


聞いてから、

自分で可笑しくなる。


理由が、

すぐに返ってくるはずがない。


だが、返ってきた。


「前回の街道の件」


彼女は声を落とす。


「報告は上がってません。でも……」


言葉を探す。


「問題が起きなかった、という記録だけが残りました」


記録。


成功でも、

失敗でもない。


ただ、

何も起きなかったという事実。


「それで?」


「それで、この依頼は“戦闘能力以外”も見ることになりました」


俺は、紙を見る。


条件は確かに、

少しだけ曖昧になっている。


評価D以上(例外あり)。


小さな一文だ。


だが、

無いのとあるのとでは、

世界が違う。


「受ける?」


受付嬢が聞く。


声は、

事務的だが、

以前より硬くない。


「……考える」


即答はしない。


これは、

好意じゃない。


期待でもない。


ただの、

試行だ。


ギルド側が、

試している。


この設計士が、

“戦えない以外に、

何ができるのか”を。


外に出る。


剣士が、

酒場の前で笑っている。


「今日は暇だ」


そう言って、

肩を回す。


「魔物が出ねえ」


「それはいいことだ」


「まあな」


剣士は笑う。


「お前は?」


俺は、

掲示板の方を見る。


「仕事になるかもしれない」


剣士が、

一瞬だけ目を細める。


「へえ」


それだけだ。


冷やかしも、

皮肉もない。


ただの事実として、

受け取られている。


街道に出る。


倉庫の前で、

帳簿係が声をかけてきた。


「次、北門の方も見てもらえませんか」


依頼ではない。

契約でもない。


相談だ。


「いいですよ」


条件は聞かない。


帳簿係は、

ほっとしたように息を吐く。


「助かります」


それだけで、

話は終わる。


帰り道、

帳簿を開く。


数字は、

相変わらず小さい。


一枚。

二枚。


派手さはない。


だが、

横に書き足された文字がある。


――街道炉:安定

――問い合わせ:増


評価欄を見る。


E。


変わっていない。


それでも、

紙の扱いが、

少しだけ変わった。


掲示板の位置。

受付嬢の間。

帳簿係の言葉。


どれも、

公式な評価じゃない。


だが、

世界の手触りが変わり始めている。


「……追いつくのは、まだ先だな」


そう呟いて、

帳簿を閉じる。


評価が上がる前に、

頼られ始める。


それは、

少し歪だ。


だが――

悪くない。


俺は今日も、

火を強めない。


ただ、

次に置く炉の場所を、

静かに考えている。

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