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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第二章:最弱職の価値は、すぐには測れない

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第五話:評価Eの実害

朝、ギルドの掲示板は静かだった。


依頼は出ている。

数も、質も、いつも通り。


だが、

俺の足は自然と端の方へ向かう。


条件の悪い紙が、

風に揺れている。


報酬が低い。

期限が短い。

責任だけは重い。


誰も手を伸ばさない依頼だ。


「これ、まだ残ってるのか」


受付嬢が気づいて、

少しだけ眉をひそめた。


「残ってますね」


声は事務的だ。


「条件、変わらない?」


「評価が足りないので」


それだけで、話は終わる。


評価。


それは単なる数字だ。

Eとか、Dとか。


だが、

この場所では通貨に近い。


評価が低いと、

選べる依頼が減る。


交渉の余地も減る。


「これ、俺でも回せる」


そう言っても、

受付嬢は首を振る。


「規定です」


悪意はない。

責めても意味がない。


仕組みが、

そうなっている。


「じゃあ、こっちは?」


別の紙を指す。


輸送補助。

街道沿い。

危険度、低。


報酬も、悪くない。


「評価D以上ですね」


即答だった。


俺は紙から手を離す。


「……分かった」


それ以上は言わない。


評価が低いと、

選択肢が削られる。


それだけだ。


ギルドを出ると、

剣士が笑いながら通り過ぎていく。


「今日は当たりだぞ」


軽い調子だ。


「護衛依頼。報酬もいい」


「よかったな」


本心から言う。


剣士は、

評価Aだ。


選べる。

断れる。

条件を釣り上げられる。


「お前は?」


そう聞かれて、

少し考える。


「街道の様子を見る」


嘘ではない。


剣士は頷いた。


「地味だな」


「そうだな」


否定しない。


街道に出る。


倉庫の前で、

商人が揉めていた。


「今日は使えないって、どういうことだ」


「急な点検だ」


「聞いてないぞ」


声が荒れている。


帳簿係が、

こちらを見る。


目が合う。


「……少し、いいですか」


呼ばれたわけじゃない。

だが、

呼ばれている。


状況を聞く。

数字を見る。

流れを整理する。


問題は単純だった。


一箇所、

無理をしている。


「ここを一日止める」


そう言うと、

商人が顔をしかめた。


「損だ」


「一日だけです」


理由は説明しない。


説明しても、

今は通らない。


帳簿係が、

少し考えてから頷く。


「分かりました」


商人は渋々、

従う。


夕方、

流れは戻った。


滞りはない。

混乱もない。


「助かりました」


帳簿係が、

小さく頭を下げる。


だが、

ここで評価が上がることはない。


ギルドに報告もない。

数字も増えない。


評価Eのままだ。


「損だな」


帰り道、

そう呟く。


評価が高ければ、

もっと条件のいい依頼が選べた。


もっと早く、

もっと楽に回せた。


実害は、

確かにある。


だが――


帳簿を見ると、

銀貨が積み上がっている。


一枚。

また一枚。


評価と関係なく、

炉は回る。


「……仕方ないか」


評価は、

短期の結果を見る。


俺のやっていることは、

短期じゃ測れない。


不利でも、

損でも。


それを前提に、

組んでいる。


宿に戻り、

帳簿に書き足す。


――街道炉:一日停止

――影響:軽微

――評価:変動なし


評価の欄を見て、

少しだけ笑う。


「正直だな」


評価は上がらない。

だが、

壊れてもいない。


俺は今日も、

火を強めない。


不利を受け入れ、

それでも回る設計を、

少しずつ固めていく。


評価が追いつくのは、

たぶん、

ずっと後だ。

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