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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第七章:火は誰のものか

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第二十八話:手放す設計

事故から三日。


東側の火は、少しだけ弱くなっていた。


全部ではない。

一部だけ。


強い火の横に、

小さな余白が戻っている。


「戻したのか」


俺が聞く。


管理人はうなずく。


「一割だけ」


「事故の分だ」


帳簿を見る。


利益はわずかに落ちた。

だが、事故は起きていない。


「全部は戻さない」


管理人は言う。


「速さは残す」


北側は変わらず安定。


南側も弱い火のまま。


区間ごとに、

火の形が違う。


若者が言う。


「統一しなくていいんですか」


少し考える。


「統一は、楽だ」


「だが、止まりやすい」


「全員が同じなら、同時に崩れる」


若者は火を見つめる。


「じゃあ、設計は何のためにあるんですか」


いい問いだ。


「選ぶためだ」


俺は言う。


「正解を作るためじゃない」


沈黙。


「俺は、広げるつもりはなかった」


正直だ。


「だが広がった」


「止めない」


若者が顔を上げる。


「教えるんですか」


「教えない」


即答する。


「代わりに、聞く」


「選んだ理由を」


若者は少し驚く。


「理由?」


「なぜ速さを選ぶか」


「なぜ安定を選ぶか」


「理由があるなら、設計は崩れない」


火は形を変えている。


だが、

暴れてはいない。


会議で提案する。


「区間ごとに余白を申告する」


「毎月、理由も添える」


北側は言う。


「面倒だ」


東側は言う。


「悪くない」


商会は黙る。


「統一はしない」


「だが、理由は残す」


議論の末、決まる。


帳簿に新しい欄が増えた。


――余白率

――急ぎ受理数

――選択理由


制度は変わらない。


評価も変わらない。


だが、

設計は“共有”された。


夜、倉庫に戻る。


若者が言う。


「火は、誰のものですか」


今度は答える。


「選んだ者のものだ」


「俺は、火を配らない」


「選び方だけ残す」


若者はゆっくりうなずく。


街道は止まらない。


強い区間もある。

弱い区間もある。


揺れはある。


だが、

理由は残る。


帳簿を閉じる。


――統一:なし

――分岐:容認

――責任:各区間


火は、もう一人のものではない。


広がった以上、

戻らない。


それでいい。

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