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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第七章:火は誰のものか

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第二十七話:正しさの重さ

東側の事故は小さかった。


荷車同士の接触。

積荷の一部が破損。

怪我人なし。


だが、

声は大きい。


倉庫の前に人が集まっている。


「余白を減らしたからだ」


「いや、急ぎを入れたからだ」


「利益を優先した結果だ」


管理人は黙っている。


火はまだ強い。

揺れてはいない。

若者が小声で言う。


「余白があれば、防げましたか」


「分からない」


本音だ。


事故は、

余白があっても起きる。


余白がなくても起きないこともある。


問題は、

因果を誰が握るかだ。


商会の会議が開かれる。


北側の管理人が言う。


「急ぎを戻すべきだ」


東側の管理人は首を振る。


「戻せば利益は落ちる」


「事故は一件だ」


「だが信頼は重い」


議論は止まらない。


若者が隣で言う。


「みんな正しいですね」


その通りだ。


誰も無理をしていない。

誰も怠けてもいない。


ただ、

選択が違う。


「設計士はどう思う」


誰かが言う。


視線が集まる。

火は誰のものか。

余白は誰の責任か。


少し考える。


「余白は増やせば安全になる」


「減らせば利益は戻る」


「どちらも本当だ」


ざわめきが広がる。


「では、どちらだ」


答えを求められている。


俺の設計が広がった。


だから聞かれている。


だが、

設計は命令ではない。


「選んだ者が、引き受ける」


俺は言う。


「東側は速さを選んだ」


「なら事故も引き受ける」


「北側は安定を選んだ」


「なら利益の減少も引き受ける」


静寂が落ちる。


若者が息を止めている。


「設計は道具だ」


「責任は、

 選んだ側にある」


東側の管理人がゆっくりうなずく。


「戻さない」


はっきり言った。


「事故は減らす」


「だが急ぎも捨てない」


北側は何も言わない。

会議はそれで終わった。


夜、倉庫に戻る。


若者が言う。


「迷いませんか」


少し考える。


「迷う」


正直に言う。


「余白は正しい」


「速さも正しい」


火は弱くも強くもなれる。


だが、

責任は均等ではない。


帳簿を開く。


――東側:事故一件

――利益:回復傾向

――北側:安定継続


若者がぽつりと言う。


「火は誰のものなんでしょう」


俺は答えない。


もう、

俺のものではない。


広がった以上、

選ぶ者のものだ。

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