第二十二話:最初の拒否
若者は三日後に戻ってきた。
評価札が少し揺れている。
顔は硬い。
「急ぎが来ました」
「どの程度だ」
「今夜中に運べ、と」
予想通りだ。
「受けたか」
若者は首を振る。
「まだです」
まだ、という言い方が正確だ。
倉庫の奥では荷が積まれている。
急げば間に合う量だ。
「評価は?」
俺が聞く。
「上がる可能性があると言われました」
正直だ。
「断れば?」
「次は回さない、と」
若者は唇を噛む。
火は弱いまま揺れていない。
「余白は?」
「あと一件なら入ります」
「その一件が消えたら?」
若者は黙る。
余白が消えるということは、
次を断れなくなるということだ。
外から足音が近づく。
商会の使いだ。
「決まりましたか」
若者は一瞬、こちらを見る。
答えは、俺ではない。
「……今回は、受けません」
声は震えていない。
使いは眉をひそめる。
「評価に響きますよ」
「承知しています」
「次は回しません」
「構いません」
使いは不満そうに去る。
静寂が戻る。
若者の手が、わずかに震えている。
「怖かったか」
「少し」
正直だ。
「評価は下がる」
「たぶん」
「後悔は?」
若者は、火を見る。
弱い。
だが、揺れていない。
「……少ないです」
完全にゼロではないところが、現実だ。
帳簿を開く。
――見習い:急ぎ一件拒否
――評価変動:未確認
――余白:維持
若者は深く息を吐いた。
「何か、変わりましたか」
「何も」
それが正解だ。
街道は止まらない。
急ぎを受けなかったからといって、
崩れない。
「これが最初だ」
俺は言う。
若者は小さくうなずく。
名前はまだない。
評価も変わらない。
だが、
一度断った者は、
二度目も断れる。
火は弱いまま。
夜の街道は、
今日も止まらない。




