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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第六章:測れないものの値段

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第二十話:例外という枠

ギルドからの書簡は短かった。


「評価について確認があります。来所願います」


理由は書いていない。

だが、

内容は察しがつく。


応接室には、担当官のほかに

見慣れない年配の男がいた。


「制度を管理している者だ」


男はそう名乗った。


机の上には、俺の評価表。


討伐数ゼロ。

評価E。


それは変わらない。


だが、

右端に小さな空欄が増えている。


特別記録:街道保安維持


「これをどうするか、例外的に決めたい」


管理官が言う。


「記録すると?」


俺が聞く。


「君は評価Eのままだ」


「だが、つまり“街道を止めない担当”として公式に記録したい」


「すると何が変わる」


担当官が説明する。


「急ぎの荷や重要案件を、まず君の区間に回せるようになる」


なるほど。


評価は低いまま。

だが運用は特別扱い。


「断る場合は?」


「今まで通りだ」


管理官が答える。


「評価順で処理する」


「急ぎは?」


「基本的に回せない」


「なぜ」


「公平にするためだ」


制度は単純でなければならない。


評価が低い者に

優先を与えれば、不満が出る。


つまり、特別に記録するなら優先が来る…記録しないなら順番通り


そのどちらかだ。


「今はどうなっている」


担当官が少し言いづらそうに答える。


「現実では、商会が君を前提に動いている」


「だが制度には何も書いていない」


「だから説明がつかない」


説明がつかないことは、

疑いを生む。


「なぜ評価Eなのに重要区間なのか」


「贔屓ではないのか」


「裏があるのではないか」


管理官の声は静かだ。


「記録すれば、はっきりする」


「だが」


少し間を置く。


「急ぎを断る自由は減る」


そこが肝だった。


記録されれば、急ぎは“受ける前提”になり、断るには理由を書かなければならない


記録は、便利だ。

だが、自由を削る。


「選べ」


管理官が言う。


「名前をつけるか」


「空白のままでいるか」


少し考える。


評価は変わらない。


だが、急ぎが増える。

余白が削られる。


「空白で」


俺は答えた。


担当官が顔を上げる。


「理由は?」


「急がないためです」


管理官は、

しばらく黙っていた。


「空白は、いずれ埋められる」


「制度は、説明できないものを放っておかない」


「知っています」


だが今はまだ、選べる。


管理官は紙を閉じた。


「では通常扱いだ」


「急ぎは評価順」


「特別記録なし」


それで終わった。


廊下に出ると、

若い職員の声が聞こえた。


「名前をつければいいのに」


「分かりやすいのに」


倉庫に戻る。


帳簿を開く。


――評価:E

――特別記録:なし

――急ぎ裁量:維持


火は変わらない。


名がつけば便利になる。


だが、

名は枠になる。


俺は、

まだ枠の外にいる。

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