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配当錬金の設計士 ―利回りで世界を再構築する男―  作者: Tone
第六章:測れないものの値段

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第十八話:評価表の空白

ギルドの掲示板は、

いつも通り賑わっていた。


討伐報告。

緊急依頼。

成功報酬の増額。


紙が増え、

紙が剥がされ、

数字が更新される。


俺の名前は、

そこにない。


正確には、

ある。


だが、

誰も見ない位置にある。


評価表。


そこには相変わらず「E」と書かれている。


討伐数ゼロ。

特筆事項なし。

貢献度、算出不能。


受付の奥で、

数人が話している。


「最近、街道が安定しているらしいな」


「商会の管理が良くなったとか」


「設計士ってやつだろ」


小声だ。


評価に影響するほどではない。


「でも討伐してないんだろ?」


「してない」


「じゃあEのままだな」


紙がめくられる音。


それで終わる。


午後、

ギルドから呼び出しがあった。


小さな部屋。


机の上に評価表が置かれている。


「最近、商会と連携していると聞きました」


担当官は、

淡々と話す。


「ええ」


「成果は?」


「止まっていません」


担当官は、

少しだけ眉を動かす。


「数字で」


「討伐はしていません」


「それ以外の指標は?」


「ありません」


沈黙。


担当官は、

紙をめくる。


「街道の事故件数が、減っている」


「そうですね」


「それに、あなたの区間が含まれている」


「含まれています」


「因果関係は?」


「証明できません」


担当官は息を吐いた。


「評価は、証明可能な成果で決まる」


「知っています」


「あなたの仕事は、証明しにくい」


「はい」


「だからEだ」


即答だった。


不満はない。


「上げてほしいか?」


担当官が聞く。


少し考える。


「上げなくていい」


担当官は、

意外そうにこちらを見る。


「理由は?」


「急がされるから」


一瞬、

担当官の目が細くなる。


「評価が上がると、依頼が増える」


「急ぎが増える」


「余白が減る」


担当官は、

ゆっくり椅子にもたれた。


「……珍しいな」


「何がですか」


「評価を望まない者は」


俺は答えない。


評価は、

便利だ。


だが、

軽い。


軽いものは、

動きやすい。


動きやすいものは、

崩れやすい。


「だが」


担当官は、

書類を整えながら言う。


「制度は空白を嫌う」


その言葉は少しだけ重かった。


「あなたのような存在は、扱いづらい」


どこかで、

聞いた言葉だ。


「変更の予定は?」


「ありません」


「そうか」


担当官は、

評価表を閉じる。


「Eのままだ」


「それで構いません」


部屋を出る。


掲示板の前で、

若い冒険者が言う。


「設計士って、何してるんだ?」


「知らない」


「でも、止まらないらしい」


「止まらないって、何が?」


答えは、

誰も知らない。


夜、

倉庫に戻る。


帳簿を開く。


――評価:E

――変更:なし

――流通:安定


空白は、

埋まらない。


だが、

街道は止まらない。


評価表の空白と、

帳簿の安定。


どちらが重いかは、

決まっていない。

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