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流転、魔王子  作者: 川田てんき


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1/7

1

 魔王城の玉座の間、その重い扉を開けて、魔王四天王のひとりナルシウスが入ってきた。

 ナルシウスは玉座の前にいる初老の悪魔に、慌てた様子で声をかけた。


「魔王様はお変わりないか? なにやら大きな音が聞こえたようだが」


「ナルシウスよ、なにを慌てておる。魔王四天王の(おさ)であるこのネクロムがおそばにいるのだ。何も起きるはずなかろう。見よ、いつも通りじゃ」と言って玉座を指し示す。


 玉座の回りには、魔王城を覆う黒い霧がひときわ濃く渦巻き、魔王の姿はおぼろげにしか見えない。


「たしかにいつも通り……なのかな?」


「なにをわけのわからぬ事を言っているのだ。しっかりしろ。それより勇者の一行が城に侵入したというではないか。貴殿は他の四天王とともにきゃつらを倒すのが使命のはず。こんなところで油を売っているとは何事か!!」


「スニートがとっくに向かっている。後ろにはベアベルクも控えているのだ。私が行くまでもあるまい。なあに、今頃スニートが勇者の首をはねている頃だろう」

 

 ナルシウスは美しい銀髪をかき上げて言った。


 そのときドンッと大きな音が響き、玉座の間の大扉が吹き飛んだ。


「スニートってのは、こいつのことかい?」と言うなり男がなにかを放る。

 ゴロゴロと転がりネクロムたちの前で止まったそれは、スニートの頭だった。


 ネクロムが悲鳴を上げる。「ヒィーッ、なんてことすんだ、この悪魔!」


「悪魔はおまえだろ。おれは勇者アイク。魔王を倒しに来たぜ」


「ふん、おまえごときが魔王様を倒すだと。よおし、相手をしてやれ、ナルシウス」


 おまえが行けよ、とナルシウスは不服そうにネクロムを見た。

 その瞬間アイクが一気に間を詰め、その剣が目にもとまらぬスピードでナルシウスの首元に伸びた。

 ナルシウスは体を反らせてかろうじてかわす。


「こ、これが勇者の剣か。う、噂ほどでもないな」動揺を必死に隠して、ナルシウスは言った。


「ずいぶんと余裕じゃないか」と言ってアイクは頬を指さした。


 ナルシウスは、自分の頬の、アイクが指さしたあたりに触れた。見ると指先に血がついていた。


「貴様ァァァ、よくも私の美しい顔にキズを。我が華麗なる幻術で地獄送りにしてくれる」ナルシウスの周囲に、どこからともなくバラの花びらが現れ、舞い散る。


「けッ、おまえもそいつのようにしてやるぜ」アイクは床に転がるスニートの頭を指さした。


「ずいぶん威勢がいいな。だが、いいことを教えてやろう。ククク、スニートは四天王の中でもさいじゃ、グギャッ」


 アイクの剣がナルシウスを真っ二つにしていた。


「ヒィーーッ。空気を読めんのか。せめて例のセリフを最後まで言わせたれや」


「なんだよ、例のセリフって。おい、そろそろ魔王に会わせてほしいもんだな。それとも次はおまえが相手か?」アイクは剣先をネクロムに向けて言った。


「調子に乗るなよ。今にベアベルクが戻ってくるわ。やつの怪力でおまえなどひとひねりじゃ」


「あのー、ベアベルクというのは、このクマのことかしら?」


 白い修道服姿の娘が、玉座の間の入り口から声をかけた。その隣の筋骨たくましい男が大きな熊の頭を両手で放り投げる。

 熊の頭はスニートの頭の隣に着地した。


「ヒィーーーッ。なんなんだよ、おまえら。」


「わたしはエレーナ。こっちの筋肉ゴリラがラースよ」


「二人ともやけに遅かったじゃないか」勇者が声をかけた。


「そうなの、ラースったら、熊を殺すのはかわいそうだから戦闘をボイコットする、とか意味不明なことを言いだして」と大男を指さす。

「わたしのアサシンのスキルを駆使して、なんとか首をかききったんだけどね」


「おまえの仕業か。だいたい修道女の格好してアサシンて……」ネクロムが力なくツッコんだ。


「あら、アサシンは副業よ。本職はヒーラーだけど、このところの物価高でヒーラー一本で食べていくのは厳しくて」


「なんとも世知辛い世の中じゃな」


「それもこれも、あなたたち魔王軍が人間の土地を荒らすせいよ。ウフフ」


「これは一本とられたわい。ワッハッハ」


 ネクロムとエレーナは顔を見合わせて笑った。


「おい、悪魔と談笑すんな。さて、そろそろ魔王とご対面と行こうか」アイクは、ひときわ濃く黒い霧に覆われている玉座に向かい剣をかまえた。


「それにしてもうっとうしい霧だな」アイクが剣を一閃させると、玉座を覆う霧がみるみる晴れ、玉座に座る魔王の姿があらわになった。


 その姿を目にして、勇者一行は言葉を失った。


 魔王の胸には、漆黒の剣が深々と突き刺さっていた。

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