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イメルの町の不思議な出来事

作者: もみじ山

ちょっと長くなりました。

自然豊かな町、イメル。

丘の上には森林、坂を下れば海岸。青い海がどこまでも広がっています。


丘の上に住むマリーはワラワーデザイナーを夢見る女の子。

植物のお世話が大好きで、庭のお手入れをしたり、幼馴染リリカの家のお花屋さんで時々手伝いをさせてもらっている。


ある春の日、満月の夜に月食が起こり、完全に闇に包まれた町。

月食が終わったかと思うと、次に現れたのは一筋の流星。輝く光が森林公園に落ちていきました。

森林公園の中にある「月ノ池」に光が吸い込まれると、小さな精霊が姿を現しました。



翌朝、マリーは落ちた流れ星を探しに、リリカを誘って森林公園へ向かいます。

他にもいろんな人が流れ星を探しに来ていましたが誰も見つけられません。

そのうち皆がやる気をなくして帰ろうとする中、マリーだけが諦めずに探しています。


一緒に来たリリカはすっかりやる気をなくした様子で帰ろうと言います。

「マリー、なんでそんなに元気なの?探しても無駄だよ。」

「なんかもうやる気がなくなっちゃった。」

「もう、全部が面倒くさい。」

そう言ってベンチでお昼寝をしてしまいました。

気がつくと周りの人達も眠っています。


様子がおかしいことに気づいたマリーは焦り、リリカを起こそうとしました。

「リリカ! 起きてよ。こんな所で寝ちゃだめだよ。どうしちゃったの!?」


次第に雲が増えてきて太陽も陰ってしまいました。そこに、小さな声が聞こえます。

「キミは闇の誘いに負けないんだね。私に力を貸してくれる?皆を助けてあげられるよ」


「皆が元に戻るなら、もちろん力を貸すよ!だからお願い。助けてください!」

「契約成立だね」その声と共に風が吹き、春の精霊・フローラが現れた。


そこへ黒い霧が迫ってきます。

フローラが言うには、この霧がみんなを闇に引き釣りこもうとしているのだという。

マリーはフローラと手をつなぎ、風魔法で闇を振り払いました。

やがて雲はゆっくり消えて再び太陽が顔を出しました。




その後、フローラとともに家に帰ったマリーとリリカは詳しい話を聞くことにしました。

精霊の国でも先程の黒い霧が現れたという。


+++

突然、闇から鬼神「闇夜王」が現れた。

彼は負の感情を吸収し、成長する。

強い力を手に入れるために負の感情を求めて精霊の国を混乱させていた。

精霊界の女王は力を封印されてしまい、冬の精霊・フロストを闇落ちさせ、国を氷漬けにして連れ去ってまった。

満月の夜に人間界とのつながりができたため、闇夜王は人間の世界も手に入れようと画策したらしい。

+++


フローラは精霊の仲間であるフロストを助けたい。

マリーは人間の世界を守りたい。

リリカも戦う勇気はないが応援してくれるという。

こうして精霊の国と人間界を救うため、彼女たちは手を組むことにしました。




それから数日後、冷たい雨が降りました。

雨はやがてみぞれになり、雪に変わりました。

町の人達は「めずらしいね」「まだまだ寒いのね」と言っていましたが、マリー達は知っています。

冬の精霊が雪を降らせているのだと。


どんよりとした雲に覆われて隠れてしまった太陽。

昼だと言うのに辺りは薄暗い。

それはどんどん暗さを増していき、まるで夜のように真っ暗になってしまいました。


「闇夜王の仕業ね。フローラ、どうすれば良いの?」

「負の感情が闇夜王を強くする。だから「喜」「楽」「希望」といった感情には弱いはずよ」

「なるほど! ……で、どうしよう?」

「とりあえず好きなことでもしてみよう」


マリーとリリカはフラワーアレンジメントを作り始めました。

大好きなお花を手にできる嬉しさ、組み合わせてデザインする楽しさ。

ふたりはとても楽しそうです。


「できたー! はい、フローラにプレゼント!」

「えっもらって良いの?」

「もちろん。これはフローラのために作ったんだよ」

「わぁ、ありがとう!!」

「フローラも一緒に作ってみる? フロストに贈ったらどうかな」


三人の周りはあたたかな喜・楽が溢れ、希望も見えてきました。




家の中からは三人の楽しそうな声が聞こえてきます。

聞き覚えのある声にフロストは足を止めました。

窓から覗き込むと人間と楽しそうにしているフローラの姿。

いつも仲良くしていた友人が、知らない人間と親しくしていることにモヤモヤします。


「フローラも僕のことなんていらないんだね」


せっかく陽の光がうっすら届き始めていたのに、再び雪が激しくなりました。

不安そうに窓の外を見上げるフローラ。

そこには空を飛んでいるフロストが視えました。


「フロスト! 私だよ、フローラだよ!」


大きな声で呼んでも返事がありません。


「迎えに来たよ、一緒に帰ろう! 私も一緒に謝ってあげるからっ」


フロストは振り返って言いました。


「本当はぼくのことなんてどうでも良いんだろう? 一緒になんて帰らないよ」


「そんなわけない! フロストが大事だから迎えにきたんだよ」


フローラは窓から飛び出し、フロストのところへ飛んでいきました。

勢い余って体当たり。

もう離さないぞとばかりにフロストにしがみつくと泣きながら言いました。


「ひとりでいなくならないで。私がいるよ」

「バカッ! 今のぼくに触ったらおまえまで凍っちゃうぞ」

「平気。これがあるから」


そう言ってフラワーアレンジメントを差し出したフローラ。


「フロストのために私が作ったんだよ。あの子達に作り方を教えてもらったの」


優しい色使いのフラワーと、眼下の家の窓から手をふる人間。

フロストに触れたためフラワーは氷花になってしまったけれど暖かいオーラを感じます。


「…………ありがとう」


優しく暖かいオーラと、フローラの温もりに触れてフロストは自分の本当の心を取り戻しました。

彼の心の中に光がさしたように、空も雲の隙間から陽光が指しています。

雲を押しのけるような神々しい日差し。


皆の喜と楽と、希望と暖かい優しさ。

闇夜王はひるんで闇の世界へと帰っていきました。




闇夜王がいなくなり、辺りは春の暖かさに包まれました。

平和になった町の皆は笑顔で楽しく暮らします。

大切な人たちが笑顔でいられる、それだけで自分も嬉しいよね。


マリーとリリカは大好きなフラワーアレンジメントをしながら今日も楽しく夢を語り合うのでした。

以前書いてあったものを微修正してみました。

ここまで読んでくださった方、有難うございます!

少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。

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