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プラン111

作者: 青崎衣里

友人と始めた1200文字バトン小説の第一話として書きました。


「あれっ、村上さん?」

 わたしは駅の構内ですれ違った女性に声をかけた。

「村上彩乃さんじゃない?」

 相手は一旦立ち止まったものの、露骨に怪しげな表情で見返してくる。特別親しいわけではないし、大学の中じゃないとすぐにピンとこないのだろう。だが「入学式で会った時枝流花(るか)」と自分を指さしながら伝えると思い出してくれたようだ。

「ああ、あのときの」


 最初に会ったのは某私立大学の入学式。彼女のワンピースの首元にあるホックが外れていることに気づいたわたしが、こっそり話しかけて直してあげたのだ。ところがわたし自身の服も襟が曲がっていたらしく、彼女に直してもらって、二人して笑い転げた。互いに名乗って、学部は違うけれどまた会えるといいねと言って別れたのが、およそ一ヶ月半前。

そのあと学食や図書館で二、三度顔を合わせた。あまり会話はしなかったけど、会釈をしたり手を振り合ったり。まぁその程度の間柄だ。


「大学の外で会うのは初めてだよね。これからどこかに行くの?」

「あー……今日はちょっと」

 言い淀む彼女の態度に気づかないふりで、わたしは腕時計に視線を落とした。

「実はわたし先輩に合コンに誘われてて、今夜七時に駅前に集合って言われたから仕方なく来たんだけど」

「えっ、時枝さんも? 実はわたしも……」

 村上さんが目を丸くしている。

「ほんと? 声をかけてきた先輩って誰?」

「テニスサークルの坂口先輩」

「英文科の? じゃあ同じ合コンだね。さっき集合場所を覗いたら結構人集まってて、女子は余り気味だから今回パスしていいですかって先輩に訊いて帰って来ちゃった。ああいうの苦手なんだよね」

「そうなんだ」

 思案顔の彼女の肩を軽く叩く。

「村上さんも、もしあんまり気乗りしないようなら今回はパスしといたら? たぶん怒られないと思うよ」

「そうかなぁ」

「大丈夫だって。なんなら明日わたしから先輩に言っとくし。それよりさ、せっかくだからちょっとそこのスタバでお茶しない?」

「……うん」

 こうしてわたしは、村上さんとしばらくお茶をしてから駅で別れた。




「これで本当に未来は変わるのかねぇ」

 ずっと陰からようすを窺っていた相棒の沢渡翔が出てきて、ぼそりとつぶやいた。


「さぁね。まだ分かんない。でも、少なくとも今夜の合コンで会うはずだった男にストーカーされて、彼女が殺される未来は回避できたんじゃない?」

「その彼女の子孫が、世界終末戦争のきっかけを阻止する人物になるっていう予測は?」

「平行世界のデータでは、これで上手く行くはずだけど」

「もう面倒だからさぁ、先制攻撃発令した奴を子供のうちに始末しちゃえばいいのに」

「強い修正は反動も大きいの知ってるでしょ。それに、該当者が産まれてこない未来もすでに選択されたけど、結局他の人間が実行しちゃったじゃない。今回ので効果がなければプラン112をスタートするだけよ。経過観察を続けましょ」

「了解」


 わたしと沢渡は少し先の未来へと移動した。




次は友人からもらったお題の「パズル」で短編を書いております。

よろしければご一読ください。

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