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石じじいの話・引用:山の遺書

633 :本当にあった怖い名無し:2018/06/03(日) 20:52:26.56 ID:gLLvxdFu0.net

石じじいの話です。


じじいは、そのような遺書のような書きつけを山で見つけたことがあるそうです。

目指していた石が露出する尾根近くの岩場に到着して休憩していたじじいは、

ちょっと先にひらひらと布のようなものが風にはためいているのに気がつきました。

みてみると、ゴムの雨合羽がぼろぼろになっていました。古いものだったのでしょう。

石をどけてみてみると、中に油紙で包まれた手帳が入っていたそうです。

もしやとおもってじじいはそれを読んでみました。

それは登山の時の記録ノートのようなものだったそうです。

万年筆で書かれていました。(昔のインクは耐久性があって消えませんでした)

西日本の幾つかの山を登った時の記録や感想、そこまでの交通の経費のメモがおもでした。

山に登った時にその持ち主が作ったであろう俳句もいくつか書かれていました。

最後のページまでめくってみてじじいはぎょっとしました。

そこには、最後の言葉と思われる文章が記してあったそうです。



635 :本当にあった怖い名無し:2018/06/03(日) 20:53:13.88 ID:gLLvxdFu0.net

女性に向けた文章だったとか。

女性へ、幸福な結婚を祝うことば;

楽しかった思い出を得たことへの感謝のことば;

手の届かないところへ彼女がいってしまうことへのさびしさと無念;

と。

文章から察するに、持ち主は、その女性と付き合っていて結ばれなかったのでしょう。


詳しい内容はわかりません。

じじいが話してくれたときには、私が子供だったのであまり理解できなかったし、

じじいもその内容を詳しく私に語ることを避けたのでしょう。


自分の母親への感謝の気持ちをあらわす文章もありました。

その手帳には持ち主の住所氏名が記されていました。紛失した場合の拾得者へ返送の願いも書かれていました*。

じじいは、それを読んで大慌てで雨合羽のあった場所の周りをさがしまわりました。他の残留物を探すためです。

何もありませんでした。もちろん遺体の一部なども。

ただ、その雨合羽の近くに、ピッケルの頭と思われる金属があったそうです。

それにはローマ字と数字が刻印されていましたが、じじいには読めませんでした。

数字のみ1935と読めたそうです。



636 :本当にあった怖い名無し:2018/06/03(日) 20:53:34.09 ID:gLLvxdFu0.net

『その手帳は遺書やったんかのう。気持ちを整理するために書くだけ書いておいていったゆうこともあったかもしれんのう。

 ぼくにはまだわからんやろうけどのう』

『それで、その手帳はどうしたん?』私

『手帳も合羽もピッケルも持って帰ったで。ピッケルはその手帳を持っとった人のものかはわからんかったけどな。

 その住所に手紙を出したんやけどとどかんかったわい。電話もなかったしな』


  そこに置く 朱の登山帽 雲と行く

*引用者注:返送先が記されていたのは、その手帳が、もともと毎回の登山のために使われていたからでしょう。

記録としての手帳を落としてなくしてしまうとたいへんですからね。

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