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映画研究倶楽部はオカルト好き  作者: 祭神輿
旧コンピュータ室の寂しがり
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旧コンピュータ室の寂しがり・参


 暑い。汗の滲む額を拭いながらメル先輩といた時はこんなにも暑かったかと首を傾げる。

 ぽんこつなクーラーを申しわけ程度につけているが、フィルターを掃除してないからか何なのか、部室は一向に涼しくならなかった。


「うわビデオテープとか古ッ。化石じゃん!」

「ちょっと、映画のパッケージ見てないでちゃんと手がかり探してよ!」


 文句をいえば気のない返事が返ってくる。

 大量の映画のビデオやらディスクやらを片付けながらメル先輩に関するブツを探しているわけなのだが……こいつは絶対にテスト前に掃除をはじめてそのまま漫画を読み始めるタイプだ。


「はあ……先が思いやられる」


 でっかいため息をついてとっ散らかった映画を並べていく。こいつの事に関して私がため息をついた数は、三桁を優に超えているに違いない。


「ちゅん子は手がかりは絶対あるーって言ってたけどさぁ、ほんとにここにあんのぉ?」

「ある……とおもう!!」


 私の返答に成瀬はうげえと舌を出した。だって、仕方ないじゃないか。

 意地悪なのか何なのか、メル先輩は自分の言いたいことだけ言って姿を眩ませたのだ。

 よく小説だかで詳しいことを何も言わないくせに『迎えに来て』なんて云う描写があるが、いつどこに、をちゃんと示してほしい。実際にあるとまどろっこしいことこの上ない。


「それにしても、ほんとここ埃っぽいな」

「まじそれな。光当たってすげー埃見える」


 ほんと、よく今までここにいれたなと今更ながらに思った。

 大量に浮かぶ埃、映画が乱雑に積まれた机と棚。ほぼ物置のような場所だった。まったく、いつ掃除されたんだろうかこの部屋は。

 遠い目をして机に手をかけたとき、読んで開いたままだった日誌が視界にはいる。


「そういえば放置してたなこれ」

「なになにー、手がかり?」

「ん、なんか映画研究倶楽部の過去の日誌」

「日誌ぃ? いやめっちゃ重要じゃん」

「いや、これ殆ど先輩と顧問の先生との応酬だから。そんな重要な内容は――」


(――ん? これ)


 この日誌、よく見ると先生のコメント欄に書いてある一人称がぜんぶ『俺』になっている。読むかぎり映画研究倶楽部の顧問の先生はメル先輩のクラスの担任だ。二年生の担任は全クラス女性だから、余計にメル先輩は過去の人説が濃厚になってきたな。

 それにしても、なにかが引っかかる。なんだろう。映画研究倶楽部に関する情報で見落としてるものがある様な、その落としたものがあれば何かが繋がるような……。


「あれ? そういえば」


 映画研究倶楽部の顧問は担任が受け持ってるとか言ってなかったか? たしか私が映画研究倶楽部の入部届を出したときに――


『そうだな、承認しよう。俺は映画研究倶楽部の顧問だし、あそこの部屋も俺がいつも掃除する訳にはいかないしな』

『あそこの部屋先生が掃除してたんです?』

『ある生徒との約束でな』


 あ。


「あーーーーーーー!!」

「うわうるさ!! なになになに」

「ゴリラ、そうだよゴリラだよ!!」

「ゴリラがなになに、怖い怖い」

「ゴリラが言ってたじゃん!」

「だからゴリラがナニゴト?」


 そうだ、そうだよ。あの日、メル先輩に初めてあった日。入部届を提出した時に担任が確かに言っていた。()()()()()()()()()()()()()()()()と。


 確信した。あの先生はメル先輩と日誌のやりとりをしている顧問だ。それなら全ての辻褄が合う。

 我らが一年A組の担任は確か六年前から配属されてきたなかなかに若い教師であった。

 日誌に書かれた新任教師の文字が我らが担任のことならば、今から六年前よりこの学校に来て、メル先輩が二年生になるまで映画研究倶楽部の顧問を引き受けていたのではないだろうか。


 そしてメル先輩の身に()()が起き、その後も律儀に部活を残し顧問となっている。


「なあなあ」

「なに、いま考察で忙しいんだけど」

「いやさ、そいえば俺お前の大好きな先輩の名前知らねーなーって思ってさあ」

「大好き……いや、言ってなかったっけ」

「いちばん最初は『綺麗な男の先輩』って言われてその後はずーっと『メル先輩』っつってたろ」

「……そうだっけ?」


 というか、いちばん最初ってまさかクレヨン回収してた時の奴だろうか。よく覚えてるなこいつ。ちゃんと人のはなし聞いてたのか。


「おま今ぜってぇ失礼なこと考えただろ!」

「そんなこと無いって」

「嘘じゃん!」

「はいはい、メル先輩のフルネームだよね。あの人の名前は海尋メルだよ」


 成瀬は先輩のフルネームを聞いて目をひん剥いた。その後、砂を噛んだみたいな微妙な顔つきになる。


「なに、どうかした?」

「いや、さ。お前、この学校の理事長の名前って知ってる?」

「エ知らないけど」

「なんでこいつこの学校受かったのぉ?」

「ディスってんの?」


 喧嘩なら買うぞこら、と日誌を武器代わりに構えた。いつもなら『きゃあ、おやめになって』などと茶番が入るのだが、目の前の幼馴染はまた変な顔になる。


「この学校の理事長さ、息子さんいんのよ」

「へえそうなの」

「でさ、息子さんここ通ってたのよ」

「父親が理事長やってる学校に? へえ」


 成瀬はいったいどうして理事長の話なんかしているんだろう。メル先輩になにか関わってくる内容なのかこれは。

 意図が読めず、また勿体ぶった言い回しをするもんだから少しだけむかむかしてくる。


「それで?」

「その息子さんがさ、事件に巻き込まれたって噂が流れてたんだよ」

「それがなんかあんの」

海尋(みひろ)(うみ)

「んえ」


 成瀬の赤褐色の目が、傾きはじめたいつもの夕日に反射して、暖色の輝きを揺らす。


「理事長の息子さんの名前、海尋(みひろ)(うみ)っつー名前なんだよ」

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