お馬鹿なヒロイン一人と攻略対象五人は、無事牢屋に入られました。〜最強で最恐な転生令嬢は冤罪を主張する〜
※ゆるゆる設定注意です!
はい、皆様こんにちは。
私は、アマリア・ルヴェルジェルと申します。
イゲルラ王国の公爵令嬢(17歳)です。
そして、日本からの転生者です。
日本での私はオタクというものでして、とくに人気乙女ゲームであった「薔薇騎士様は溺愛したい♡ 〜ハートフル・アカデミー〜」というゲームにドハマリしておりました。
このゲームは従来の乙女ゲームとは一風変わったものになっておりまして、「ハートフル・アカデミー」編、「ラブラブ・キング」編、「ミュージカル・ラブラビリンス」編と、3つ種類がございまして。
「ラブラブ・キング」編では王城に、「ハートフル・アカデミー」編では学園に、「ミュージカル・ラブラビリンス」編では故郷を飛び出して隣国へ留学するのです。
ああ、始まる時期はすべて同じでございまして、ヒロインが16歳になる年からでございます。
攻略対象は決まって4人。隠し攻略対象を入れましたら、5人ですね。
「ハートフル・アカデミー」編では、
イゲルラ王国の第3王子、魔術の研究を行う魔塔の主、見習い騎士の辺境伯の息子、都で大人気の商会長の息子が正規の攻略対象。
そして、ヒロインのクラスを受け持つ教師であり、王弟である方が隠し攻略対象となっております。
それに加えて、ヒロインがもともと貴族なんですね。しかも公爵令嬢。公爵令嬢だからといって、養子とかそういうわけではなく、普通に両親の愛をいっぱい受けて育ってきた感じのヒロインでございます。
というか逆に、養子のほうが悪役令嬢となるのですよね。このゲーム。
私ですか?
ええと、とてもややこしい立場なのですが…
ヒロインの義妹の友人の友人の従姉妹、という、かなり微妙な立場でございます。
というか、ほぼ繋がりはありません。モブです。
ですがこのゲーム、何故かモブ視点でもゲームを進めることが出来まして…。
勿論恋愛には発展しませんし、ただただイベントの裏話などを聞けるだけの機能なのですが……。
ああ、はい。
もうお察しの方も多いでしょう。
私、そのモブでございます。
ふふふふふ、なんでこのようなことになってしまったのでしょう?
もちろん、裏話を知るためには少しでも物語の中に食い込んでいないといけません。
ええ、実はこのモブ、序盤でちょろっと出てきてすぐにその存在を忘れ去られる悪役令嬢なのですよ…。
悪役令嬢と言って良いのか、というほどの出番の無さですけれどね。
ほぼモブです。モブ。真っ黒い影でしかありません。
それでも、設定上は悪役令嬢なので、攻略対象の一人である第3王子、オースティン・バルーン様の婚約者なのですよ…。なんとも面倒なことですね。
あぁ、なんで私の存在が忘れられてしまっていたのか、もっと詳しくお話しておかなくてはなりませんね。
私、入学したばかりのヒロインが自身の婚約者へ色目を使っていることへの嫉妬のあまり、禁忌とされる暗黒魔術を発動させてしまい、牢屋に繋がれてしまうのですよ。
それ以降、私は全くお話に参戦しませんから、忘れ去られるのも当然というものです。
モブとして操作されるときには、牢屋から脱獄して王宮のメイドになるのです。
そして、婚約者への想いなど牢屋の中で綺麗サッパリ消え失せた彼女は、一応元恋敵であったヒロインさんを見守る、ということをするのです。
私がアマリアに転生して一番に思ったのは、「牢屋に繋がれたのは、冤罪だったのではないのか」ということでした。
なぜなら、私の魔法属性は光だったのですから。
暗黒魔法は、闇の魔法適性が強くないと発動できない術なのです。
この世界には魔法がございます。
属性は、火・水・風・土・闇・光・無の7つです。
ヒロインさんは勿論光。
攻略対象の属性は、王子様が全属性、
火・水・風・土の4属性を持つ魔塔の主、
無属性の辺境伯の息子、
風と土の商人の息子
…という風になっております。
我が国は魔法を使えるものが多く集まっており、貴族たちは大体の者が魔力持ちですので魔法は特段珍しいものではありません。
ただ、光属性を持っていることを公表しているものが少ないのです。
なぜなら、光属性の者を「聖女」として攫っていく教会が、この国に居るからです。
その中でも、名乗りを上げたヒロインさんは、結構勇気のある方のようですね。
…まぁ、私もプレイヤーとしてヒロインになってましたけれども。
話は戻りますが、魔力は公爵令嬢で悪役令嬢でもあるアマリアも当然持っていまして、彼女は闇魔法と無属性の使い手でした。
まず、ここがゲームと現実の差異なのです。
私は確かに闇属性の適性も持っていますが、なにせ適正値が低いもので、闇魔法を使えるほどのものではないのです。
私の魔法属性の適正は、
火:A、水:S、風:S、土:B、光:SSS、闇:E、無:SS
総合評価:SS、総合適正:光、無、水
といったところでしょうか?
いや、万能すぎません?
ザコ悪役令嬢とは思えないほどの数値の高さですし、ヒロインさんを優に超えてますし。
適正の最低ランクはE。適正なしの場合は「―」と表示されます。
有るとはいえ、闇属性の適性の低さが伺えますね。
あ、ヒロインさんは
火:―、水:C、風:B、土:D、光:S、闇:―、無:D
総合評価:B、総合適正:光
というふうな感じですね。
このゲームで魔法が一番強いキャラ、魔塔の主だって、
火:A、水:A、風:S、土:A、光:―、闇:D、無:E
総合評価:A、総合適正:風、火、水、土
というような感じになります。
総合評価がSの者など、歴史上の人物でも片手で数えられるほどしかおりません。
S以上のものなど、いないのではないでしょうか?
私だけが異質。おかしい。
そう分かった日から、私は自分の力にセーブをかけました。
魔封じの装飾品をいくつも付け、やっと一般人の皆さまと同じような適正になりました。
まぁ、市販のものだけではうまく魔力の制御ができず、魔道具づくりに関しては天才な幼馴染にお願いした特注品なのですが……。
ただ、特注の魔封じの装飾品は闇属性であり、装飾品から漏れ出る魔力のせいで少し闇属性の適性が上がってしまったのは本当に困りましたが。
セーブをかけても、魔術に秀でた方々にはやっぱり見抜かれてしまうようでして…。
『化け物!!』『悪魔!?』『怪物!!』
まぁ、色々と心無い言葉を吐かれました。
その言葉で傷ついていた最初の頃は幼馴染に慰めてもらっていたのが懐かしいです。
幼馴染は、この化け物のような力を恐れずに、私のことを一人の友人としてみてくれていましたから。
あぁ、話が長くなってしまいましたね。
「アマリア公爵令嬢! 私は貴方との婚約を破棄する!!」
つまり、私が何を言いたいのか、というと―――
「貴方はこのチェエラにひどいいじめを行った!
そして、その嫉妬のあまり、地下深くに保管されていた暗黒魔術の書を解き放ち、その術を放った!!
これは大罪であり、許せることではない!!」
―――私、冤罪ですわ?
◇
私は昔から勝ち組だった。
にこっと笑うだけで皆が勝手にいいように解釈してくれるし、私がもっともっといい環境に行けるように手助けまでしてくれる。
そして、私は貴族階級の上澄みも上澄み、公爵家の長女。
魔力量も高く、成績優秀。それでいてこーんなに可愛いんだから、男たちも私に釘付け♡
加えて、私は転生者。
この世界が乙女ゲームだってことを知っているし、復讐なんてされないためにちゃーんと対策もした。
私はヒロインだから、何もせずに素の性格のまま振る舞っていれば良い。
ゲームでの悪役令嬢はちょいキャラ(というかモブ)だから、どうせ転生者だったとしても、特に関与してこないだろうし。
私はこのゲームを謳歌してやる!!
そう決めたのは、入学式の何日前のことだっただろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいいや。
入学してからも私は大・大・大人気!!
色んな貴族子息から求婚されたわ。
令嬢たちの嫉妬? 知らないわよ。
箱入りお嬢様からの嫌がらせなんて、私には効かない。
まずまず、自分より身分が上の公爵令嬢に嫌がらせなんて、バッカじゃないの? どうせすぐ破滅するのがわからないのかしら?
逆に、それが原因で自分の婚約者から婚約破棄されて、修道院送りになっちゃったのは自業自得というものよね?
ふふふふふ、私は勝ち組、貴方達は負け組。
負け犬は大人しく引き立て役に徹していればいいのよ!
――……そのはず、私は、勝ち組のはず、なのに。
なんで? なんでなんでなんでなんで?
なんで私は、なんで?
私は公爵家の令嬢で、皆からちやほやされてて、皆、皆、私のことが好きで―――
―――なのになんで、私が牢屋なんかに入んなきゃいけないの?
◇
あれ―――卒業パーティーでの断罪の後のことを一言で書き表すとしましょうか。
お馬鹿なヒロイン1人と攻略対象5人は、無事牢屋に入られました。
なんと言いますか、私の新しい婚約者に破滅させられまして?
「アマリア。ほら、おいで?
やーっとアマリアが僕のところに戻ってきたんだから、とことん甘やかして、甘やかさせてもらうよ?」
「もぅ…。」
今日だって、ほら。
あの、甘い声で私を呼んでいる。
「アマリア? 聞いている? アマリア。
……アリー?」
「…もぅ…アルヴァリス殿下ったら…。」
今のお時間は執務の時間ではなかっただろうか?
また抜け出してきたのだろうか、と考えて頭が痛くなる。
「アリー、愛称で呼んで? もう、私たちは婚約者同士なのだから。」
私のような怪物を、化け物を、全てを知りながらも愛してくれるこの御方―――隣国の皇太子、アルヴァリス・オヴァイラ殿下。
私の幼馴染であり、私の力を押さえつけるリングを開発してくれたこの美青年が、私の新しい婚約者だ。
「王命のせいで、あんな野郎に取られちゃったけど、アリーは僕の、だよね?」
懇願するような瞳をこちらに向けられ、私は苦笑する。
ただの友人と思っていた彼は、いつの間にか私の心に入り込んできていて。
「…ふふっ。えぇ、ヴァリス様。」
その綺麗な青色の瞳にすっかり絆されてしまった私は満面の笑みを漏らした。
―――最強で最恐な悪役令嬢は、無罪を主張し、その結果、彼女のことを溺愛する隣国の皇太子に絆されました。
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