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新天地へ

「やっぱ寒い」


 残念ながらこんな小さな壁では私を風から守ることが出来なかった。風は時間帯によって吹く向きが違うから、何枚か用意して囲まないといけない。


「起きたのねアミュ」


「おはようファティア......ってなにしてるの?」


 普段は私が起きてから起きることの多いファティアだけど、今朝は珍しく私が起きた頃にはもう既に起きていて川の上を飛び回っていた。


「魚が居ないのか探してたのよ」


「魚?」


「水に棲む食料のこと。古書に書いてあったの」


 ファティアが言うには、ハイランドコニーを捕まえる為に『狩猟の章』を眺めていたら水中に暮らす魚? を捕まえる方法が書かれていたらしく、もしかしたら川の中に魚が居るかもしれないと思い探していたそうだ。


「それで、見つけられたの?」


「全然見つからない。もう少し大きい川じゃないと魚は住んでいないのかも」


「じゃあ下流に行ってみる?」


「下流?」


「うん。川って下れば段々と川幅と水量が多くなるらしいよ」


「へぇ......じゃあこの川に沿って歩き続ければ良いのね」


 そうと決まれば、私とファティアは早速移動の準備をする。川のそばを歩くから水不足になる心配はないけど、最悪食べ物が全然見つからないという事態になりかねないので各種キノコとイエローウィスプベリーを沢山収穫しておく。


「これだけ量があれば2日は持つだろうね」


「空腹を我慢すれば3日は持ちそう」


 それと、せっかく作った壁だけど......重たいしわざわざ運ぶほどの物でもないから、ちょっと勿体ないけどここに置いていくことにする。


「じゃあ、移動するか」


「そうね」


 古書によれば環境の変化や季節の変化?などで一部の先祖様はよく移動して暮らしていたらしい。家を建てて定住するのは食料が安定的しないと厳しそうだ。


「これ、どれぐらい歩けば大きくなるんだろう?」


 歩き始めてから四時間ほど経って足が疲れてきた。残念ながら川幅はそんなに変わらない。結構下流に来たと思うんだけど......


「さぁわからない。もしかしたら私たちが想像している以上に川は長いのかも」


「なるほどねぇ......まぁ道のりも険しかったし四時間かけてる割にはあんまり進んでいないのかも」


「たしかに平坦な道を進むより時間が掛かってるわよね」


「いっかいここで休憩してからまた歩き出そうか」


 休憩がてらに古書を眺めていると、恐ろしいことが書いてあった。水量などによっては途中で消滅してしまう川も存在し、地形によっては伏流? して地上から姿を消してしまうらしい。


「この川途中で消滅してたらどうしよう......」


「どうしようって言ったって......諦めて上流に帰るか、新しい川を探しに行くしかないわね。そならないように祈りましょう」


「そうだね」


 まぁここで色々と考えて不安になってもしょうがない。美味しいキノコとお水のお陰で疲れが取れたので再び歩き始める。


「そういえば川って高い場所から低い場所に流れるんだよね?」


「らしいわね」


「その割にこの地面ってあんまり傾斜してないよね」


「確かに言われてみれば傾斜してないわね」


「なんで流れてるんだろう?」


「川底だけ傾斜してるとか?」


「なるほど?」


 私とファティアが川についての考察を色々していると、どこからか流れてきた小さい川と今までたどってきた川が合流し水量が増えたのに加え水の勢いも増した。


 歩き始めてから八時間、やっと川に変化が表れて安心する。このまま川の大きさが変化せずに海まで続いてしまうのではないかと心配していたのだ。


「このまま行けばいつかは大きな川になるかも」


 やっと成果が表れたところで、今日はもう川下りを終える。日が沈むまで少し時間があるから進んでもよかったんだけど久々にかなりの体力を使ったし早めの休憩をとることにした。





「寒い......あの板仕事してたんだな」


 昨日の朝はあんな板があってもなくても変わらないとか思ってたけど......これが失って気が付く大切さって奴か。


 火を起こして朝食を済ませたら、また川下りを再開する。


「水量が増えたのは良いけどさ、こんなに水の流れが速かったら魚とかすめないんじゃない?」


「確かに水に流されちゃうかも」


 水量の増えた川はバシャバシャと音を立てて流れている。古書には『流れ早い場所に棲む魚』とかも紹介されていたけど流石にここまで早かったら住むのは難しそうだ。


「まぁでも、川幅が広くなれば水の流れも緩やかになるらしいから、このまま進んでいけばきっと魚が......」


 突然視界が開け、鬱蒼としていた森が終わる。

 川の先には大きな水溜まりが現れる......水溜まりと呼ぶには大きすぎけど表現する言葉がそれぐらいしか見当たらなかった。


「えっと......海?」


「海だったら水が塩辛いはず」


 私とファティアは恐る恐る水溜まりの水をすくい上げ口の中に含む。


「......いや塩辛くない」


「普通の水ね......となるとこれは池や湖って奴?」


「これが湖か......思ったより大きい」


「確か湖にも魚は住んでるんだよね?」


「うん。そのはず」


「まぁ魚釣りよりも先にここら辺の探索が優先だね」


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