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獣道は結構役立つ その2

「これが川? 思ってたのと違う」


 ファティアの耳を頼りに見つけた川? は古書に書いてある物と随分違った。

 古書によると、川っていうのは雨水や湧水地? から湧き出た水が、海や湖までどぉ~っと流れていく流れことを指すらしいんだけど......


「なんか小さいよね? もっと大きいのをイメージしてたんだけど」


 目の前の川? は説明にあるよりも小さくて水量も少ない。川幅も狭くて、運動が苦手な私だったとしても助走を付けずに飛び越えられそう。

 それに加えて川岸? とかいう物も見当たらない。それなりの水量がある川では川岸? というものが作られるらしいけど。 


「私は水の流れる音が聞こえてたから、これぐらい小さいことは予想できてたけどね」


「でもまぁ、水辺は見つけた。これで水分不足は解決だね」


 私はバックの中に入れていた空の水瓶の中に、川の水を入れる。

 

「このまま飲めると思う?」


 ガラス瓶の中に入っている川の水には、不純物が混じっていたり、濁っている様子は見られない。

 地上を流れているって聞いてたから、井戸水なんかよりも汚いんじゃないかと思ったけど、そんな事はなかったらしい。


「透明度は高いけど、用心するにこした事はないよね」


 金属製のコップに水を注いで湯を沸かす。沸かしている最中にも異臭とかもしなかった。

 

「大丈夫そうだね」




「はぁ......生き返る」


 数時間ぶりの水が喉の渇きを潤す。


「脱水症状が出かけてたから、水探しに時間かかってたらどうなってたことか」


 ファティアは体のサイズが小さいので体に蓄えられるエネルギーや水の量が少ない。

 まぁ、小さい体で少しの量で満たせるっていう利点もあるけど。


「次はご飯だね......ハイランドコニーでも探しに行く?」


「そのハイランドコニーってやつ? 結構俊敏なんでしょ? 床を這うモグラみたいにトロくないんでしょ?」


「うん、本には罠とか弓とか道具を使うことがお薦めされてる。素手は無理そう」


「じゃあ今からその道具作るの? こんな腹ペコなのに」


 ファティアの言う通りだ。

 ハイランドコニーを捕まえる為の道具ってのは作るに時間かかりそうだし、道具を作っている最中に餓死しちゃうとか本末転倒。


「取り合えずキノコ探そうか」


 ****


「おー、大量大量、キノコ以外も採れたね」


 川辺を中心にキノコを探してると、昨日採ったキノコに加えてスモールモスとロックシェードっていう湿った場所で育つキノコや獣道に生えるウィンドウマッシュもゲットできたし。

 イエローウィスプベリーなる木の実を手に入れた。


「この黄色いのはそのまま食べて良いんだよね?」


「らしいよ......大丈夫なのかな? 火を通さなくて」


「なんか不安だよね?」


 地下生活中は生の物を食べたことはない......というか生のままで食べる物がなかった。

 保存が効く硬いパンや、乾燥させた物ぐらいしかなかったもんね。


「じゃあ食べてみるか」


 私とファティアは同時に木の実を口の中に放り込む。


「うん......うん? あんまり味がしないような気が......っあ......っなんだこれ苦いっ......」


「そう普通だけど?」


「苦いよっ、よくファティアは平気だね」


「普通に甘いけど......物によって違うのかな。これ食べてみて」


「あっコッチは甘い」


「あとで甘いやつと苦いやつの違いでも調べてみよっか」


 などと話していると、キノコが良い感じに焼けてきた。早速ファティアがかじりつく。


「んっこのキノコ特に美味しい!」


「どれ?」


「この白い斑点がある......ウィンドウマッシュだっけ?」


「ああ獣道に生えてた......本当だ美味しい! 獣道さまさまだね」


 スモールモスやロックシェードも美味しかったけど、ウィンドウマッシュは段違いだった。

 

「見た目は似てるのにこんな違うなんて。今度からはウィンドマッシュ沢山取ろうね」


 獣道にはまだ何本かウィンドマッシュが残っていたはず。明日もこんな美味しいキノコが食べられると思うと、今から明日の朝が楽しみになってくる。

 と思う反面、色々と不安に思うところがある。


「今食べてるキノコだって無限にある訳じゃない......近いうちに農業とか始めるべきだよね?」


 私の提案にファティアは頷く。


「確かに早めに準備して損はないとおもう。明日にでも初めて見る?」


「そうだね、思い立ったが吉日......ってその前に」


「どうかしたの?」


「いや地上に出てから風が冷たくてさ、畑も大切だけど寝ている間に、風から守ってくれる物とかも欲しいなって」


「風よけ......壁を作るってこと?」


「うーん、壁を作るっていうよりは、これ」


 私は本を指さす。


「この家? を作りたいの。でもなんか規模が大きくて二人じゃ無理そうだから、コッチの簡易シェルター? ていう奴を作りたい」


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