2/2
少女
吟は眠れなかった。
流石に昨日から一睡もしていないため疲れきっていたが、それでも眠る気にはなれなかった。
部屋の隅で寝ている少女のせいである。
彼女は夜になっても一向に目を覚まさなかった。
長い艶のある黒髪で巫女の様な格好をしている。
思わず見惚れてしまいそうな美しさを持つ一方で、逆に怖くも思わされる。
そんな不思議な少女である。
彼は棚の奥から探し出した紙を読む。
『〈風の魔物の伝承〉古来より神の祠の周辺では風の魔物が現れると言われている。
風の魔物は祠に近づこうとした者を遠くへ飛ばしてしまい、その者は生きて故郷へ帰ることは出来ない。』