戦闘②
エレボスは両腕を色々な形に変形させている。見た感じは水のように柔らかそうな感じだ。楽しそうに私たちを見ながら喋っている。
どうやって倒すのか、分からない。
本体が別のところにいるのか、身体の何処かにコアがあるのか、特殊な攻撃しか効かないのかわからない。
エレボスは二回は死んだと言っているが、どうなのかわからない。
「レイナ、どうすればいいかな?」
「わからない…」
私はレイナに問いかけた。
身体の一部を破壊しても再生する敵に馬鹿正直戦ってはらちがあかない。まともに戦っていられない。
「僕をどうやって倒していいのか悩んでいるね。試行錯誤しながら僕を倒してみなよ。それじゃあないと面白くないからね」
神経を逆なでするのがうまい。言い方が頭にくる。
「私は何をすればいい?」
「レイナは、さっきみたいに隙を見つけたら魔法をあいつに撃って!!」
私はレイナに指示を出して、全力で飛び掛かる。
あいつの倒し方はまだわからないし、情報も足りないが、今は何とかするしかない。
「----【聖魔法・クーリ……】」
魔法のフェイクをする、今は再生できないぐらいにあの顔をバラバラに刻んでやることぐらいしかない。
「おっ!また早くなったね」
突進する私をみながら、エレボスは一瞬驚いたが感嘆して迎え撃つ。
双剣術で斬撃をくらわす。私は間合いを詰めつつ、姿勢を低くする。そして、右手の干将で、エレボスな右腰に剣を放つ。たったそれだけだが、それに速さと力を込める。
魔力と体力がぐーんと減ったがそれは、全速の一閃だ。
エレボスはその一閃を目でみて、腕を刃に代えて叩き落そうとしている。
だが、【心象魔法】を使い、空間の大気の圧力を一瞬圧縮し、そのコンマ一秒にも満たない僅かな行動の阻害が出来たので、【マルチタスク】のおかげで、【超索敵】と【千里眼】のスキルをフルに使い、この空間の動きを把握する。
私の周りの時間がスローモーションになっていく、思考が加速し、体中に巡る魔力の流れまでが感じ取ることが出来る。だが、確かに、その時間は緩やかに進む中で私はエレボスを倒す方法の熟考をする。
この一瞬の最適な行動を見定める。
叩き落されるはずだったが、それを避けエレボスの顔に向けて剣を斬りつける。何度も。
私は手を緩めない。
エレボスの顔の一部一部が削ぎ落とされていく、この状況にも関わらず両腕を刃に変えて振るおうとした。空間の把握をしている私はそれを紙一重で躱す。
「これで。どうだぁぁぁぁー!!」
体勢を崩したエレボスに対して、聖魔法の特大の【アーク】を放つ。周りに眩い光が集まり、破裂する。
体中がバラバラになったエレボスは地面に落ちる。
そこには、黒い液体が散漫し、姿は原型を保っていない。
これで倒した?
黒い液体が集まりだそうとしている。再生しているのだ。ここまでやってもダメなの。
「レイナ、今!!」
「輝き放つ雷光、天空より降り注げ、敵を打ち滅ぼす力を授けよ!【聖雷魔法・ブリッツシュラーク】」
レイナの一切の妥協のない魔法が撃ち込まれる。
それは、いままでの魔法とは威力が違った。エレボスの頭上から落雷が落ちる。圧倒的な力はエレボスの身体の一部を灰にし、再生を阻害しているが、残っているわずかなもので、一か所に集まっていく。
「いいね、【黒の囁き】」
頭の中がぐちゃぐちゃしてくる。なにをされたのかわからない。視界が揺れている。
声が頭の中に響く。
視界がはっきりと見えるとそこにはアリスとヘクトールがいた。
ーーお前のせいで、私たちが死んだーー
「えっ」
ーーお前は生きているだけで、周りを不幸にするーー
ーーあの時、お前が森の奥に入らなければ、私たちの暮らしは幸せに続いたのに、全部お前がいけないんだー
「それは、私じゃあ……」
ーーお前なんて生まなければよかったーー
ーー死ねばいいのにーー
それが母の口から出た。
「-----」
レイナを助けて、あなたはどうするの?助けたところで兄が殺されたトラウマを抱えさせ生きさせるのは酷じゃあないの?いっそ、ここで助けても、彼女は救われないのに
「救われない?」
口から出た言葉は冷え切っていた。
ーーそうでしょう、復讐ってロクなことじゃあない?復讐を遂げて何が残ると言うの?彼女は救われない--
「それは、お前が決めることじゃない」
はっきりと答えると、両親の姿が消え、エレボスが現れる。
「いつから、気づいてたんだい?」
「お母さんとお父さんがあんなこと言うはずがない」
「そっか、先の話に戻るけど、何もかも失っている彼女は死んだ方がいいんじゃないかな?僕を倒しても彼女に残るのはあるのかな?」
「お前がレイナの兄さんを奪っといて……」
エレボスの言葉を聞いて頭にくる。
「それは、僕にも使命があるからしょうがなっかたんだよ」
「その使命の為なら……人を殺しても構わないと?」
「構わないもなにも、殺さないとこの世界の人間が滅びるし、この世界の人間たちを救うために殺したんだよ。僕、えらいね」
言っている意味がわからない。
「それは、どういう事?」
「僕を倒したら教えてあげるよ」
視界が暗くなるが、すぐに目を開ける。
「アル、アル、しっかりして!」
視界に映ったのは泣いているレイナの姿だ。
「大丈夫だよ、すこし、倒れただけだから」
いつもと変わらないようにする。
(そうだよね、レイナは私が心配でないている。私がレイナの拠り所なればいい)
「さあ、僕を楽しませてくれよ」
いつの間にか元の形に戻っている。
第二回戦が始める。
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休むことも許されず、黒い塊と声がこちらに迫ってくる。
「どうやって、倒せば...」
何をしていいかわからず人影に目掛けて斬りかかるしかなかった。
「どうしたんだい?さっきより鋭くないね」
肩に熱が走る。
人影を切り裂いた感触がない。逆に左肩を切り裂かれてしまった。
「いッ!」
「さて、動きが遅くなってるよ。次は両腕を切り落とそうかな。暗黒魔法・【黒狂い】」
そう言ってエレボスはこちらに歩いてくる。
その瞬間、足に力が入らず、膝が折れる。さっきの【黒の囁き】のように意識は失ってはいないが身体全体の感覚がなくなっているような感覚に陥る。立とうとしても立てない。
「ーーえ、え!?」
何が起きているのかまったくわからない。エレボスが魔法の宣言をしたと同時に、足から感覚がなくなった。
私は再度力を足に入れ直そうとする。
けれど、力が入らない。何かを奪われたのか?
身体は痛みなどなく正常だが、何かが足りない。
自分を【鑑定】する。
(ステータスオープン)
『名前』 アルテラ
『種族』天翼族
『職業』弓兵
英雄
『状態』感覚失い (大)
感覚が失っているーー!!
「さすがに暗黒魔法は、私の身体の一部が付着していないと難しいけど、なんとか発動してよかったよ。これで君はおしまいだね」
こちらに向かってくる。
身体が動かない。
MPも残りが少ない。
対抗する手段がない。
死が近づいてくる。
恐怖。
これまで経験したことがない恐怖が身体中を支配する。
エレボスの歩いてく速さが早くなる。
それは、前世でいじめられていたような感覚だった。
「こないで、こっちにこないでえぇえぇぇぇ!!」
私は子供のように叫ぶ。
「何かのトラウマを起こさせてしまったかな?君は心が強いと思っていたけど僕の勘違いだったかな。力は期待はしてたけど、精神はそうでもないね。」
冷たい声が返る。いままでの嬉々とした声ではなく、目の前のものに興味をなくしたような声だ。
「ーーー【ナルカミ】ーーー」
その声は後ろから、闇に閃光が突き刺さる。
レイナの魔法だ。
「アルっ、大丈夫?」
動けない私を案じて、レイナは駆けだす。
大丈夫なはずがない。今のままでは戦えない。エレナ一人では戦い、勝負にならない。どうにかして、エレボスの魔法を解かないといけない。頭の中では分かっている。
けれど、身体の感覚もあるが恐怖で震えが止まらない。
止まってくれない!
「ああ、君もいたね。一人ではなにもできず、なにもかも人頼みで、後ろから魔法の援護の一辺倒。君はたいして脅威ではない。そうだね、その魔法ぐらいだったらいくらかの時間で奪うことができるね。いっそ、感覚を奪おうかな?」
「何をいっている、アルに近づくな。【ライトニンーーー、--】」
暗闇の先でレイナは狼狽している。
エレボスの言葉道りならば、レイナは何処かの感覚を奪われて魔法の発動を阻害されている。魔法でしかダメージをあたえられないレイナに魔法が使えなくなるのまずい。あと、前衛の私がいないと今の状況は話にならない。
急がなくてはいけない。
この暗黒魔法をどうにかして。私が戦わないといけない。
そのために。まずしなくてはいけないことは?
とある可能性に気づく。
これが状態異常なら何とかできるかもしれない。これは駆けになる。
「ーー【ライト、ライーー!、なんで、さっきまで言えてたのに、最後の言葉がいえない」
「言葉を発しないと魔法が使えないなんて話にならないね」
恐い。
でも、いま一番怖いのは目の前でレイナを失う事
動いて。
レイナを助ける力が欲しい。
こんなところでただ傍観しているだけではいやだ。
動け。
いま、動かなかったら後悔する。後悔はもうしたくない。
動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
《称号スキル・勇気ある一歩》から 《称号スキル・到着者》
《到着者》
恐怖を克服した者。
戦闘時のみ、全状態異常の大耐性を得る。
これは賭けだった。この状況を打破するスキルが手に入るか。
さっきまでとは打って変わって身体が動く。状態が安定する、完全に回復したとは言えないが、無理やりでも足を動かす。戦意さえあれば、まだやりようはある。
私は両足を地面を踏み込み、エレボスへと襲い掛かる。
「レイナから離れろ!!」
「なっーーー?!」
いきなり動けるようになった私の攻撃に、エレボスは躱せなかった。
私は両手の干将・莫邪をエレボスの背中に突き刺さる。
「ーー【聖魔法・バージ】!!【バージ】!!」
剣の先から聖魔法を発動させる。
エレボスを身体を細胞の一つ残さずに、浄化させるイメージだ。
残ったMPをすべて注ぎ込む。そぐにMPが尽きるまで。魔法は維持する。




