VS 下
エレボスの手から何の変哲もない水の塊が視界に入った。
「兄さんの、魔力…」
レイナは目を見開いた。
「正解だよ!君の兄を殺したとき奪ったんだよ」
エレボスは兄さんから魔力を奪った。力を奪ったのだ。
レイナの驚愕は止まらない。エレボスは兄さんの魔力で水が鋭い針なり。レイナに向かっていく。それは、レイナが知っている兄さんの魔力とエレボスの魔力が混ざり、威力が上がっている。
それを避けるが腹部にかすり痛みが伝わって来る。それから。レイナは。
「お前は私からどれだけ奪えば気が済むんだァァァァァァァァァァァァァッ!!」
レイナの顔は、憎悪に満ちている。
「あと、どれほど君から大切なものを奪えば、君にとって苦痛かな。なるべく嫌な方を教えてくれないかな」
「ふざけるなァァァッ!」
レイナから莫大な魔力が溢れだした。
エレボスの背後から無数の雷の塊が光条に迫る。さっきのとは威力が桁違いだ。
それはしかし、エレボスに触れる前に、全て水に呑ましまった。そののち、【黒の霧】に呑み込まれる。
「…今の、私の魔法も呑み込んれるなんて…いくらお前が強いからって少しはダメージはくらうはず、私の魔力の何十倍もないと…常に魔力をどこかで供給されないと不可能なはず、お、お前、もしかしてーーこの階層の魔力を吸収しているのか…」
レイナは顔面に汗玉を浮かべ、表情を引き攣らせた。
「ーーー殺した人間の魔力も、喰ったのか」
「正解!!」
エレボスはやっと答えを導き出した出来の悪い生徒を褒めるように、厭みったらしく笑みを浮かべる。
エレボスの吸収は、そう頻度は安定しないが、相手からすこしずつ相手の魔力を我が物にできる。
例えば、さっきみたいにエレボスはレイの魔力の一部を喰らい、それを自分の力として行使していた。
レイが死んでいるのに、レイの力を行使している、とも考えられる。
つまり、喰らう対象が死んでいようが、生きていようがエレボスの能力で相手の魔力獲得は起き得るのだ。その力を喰らうには、肉体・魔法の一部でも、どこからでも獲得することが可能なのだ。
それは、エレボスがいままで何十人、何百人の人間を殺していることになる。
そして、力を得ているのだ。
「これまで、殺した多種多様な種族から力を喰い続けたんだよ」
レイナが絶句した。彼女にしたら考えられないことだろう。他人の魔力を体内に溜め続けると自分の魔力と他人の魔力が体内で相互性を保つことが出来ず、大抵の人はその激痛に耐えることが出来ず、死んでしまう。だが例外もあるそれは、治癒魔法だ。それは唯一他人に魔力を注ぎこんでも身体の相互性を乱すことはない。
「...そんなの、あり得るはずがない…もしかして…私の力も奪われた...?」
エレボスはレイナに急速に接近し、近距離で雷玉をレイナにあて、後ろの黒に覆われた壁にまで吹き飛ばされる。
「いまの、気持ちどうだい?ごめんね、さっきも君が言っていたけど、もう君の力は手に入れちゃった」
レイナはそれでの、エレボスを殺そうとした。殺せないとわかっていても、ダメージを与えることができないこと知っているが、それでも、何もせずにはいられなかった。魔法を発動しようとした。しかし、それは不発に終わった。
レイナの周りには黒の霧がより一層濃くなって足元を覆っている。すこし経つと、黒の霧が薄くなり霧散していった。
「僕の、【黒の霧】は喰らうものを選べるんだ。賢いでしょ!!もう君の魔力は喰い尽くしたよ。でも大丈夫だよ!肉体面の機能は落ちていないから。それにここで君は死ぬんだから」
「あ、あ、……」
言葉がまとまらずうまく話すことが出来ない。
「もう、全てを犠牲にしたのに……」
言葉を弱弱しく放つ。
「力を手に入れたのに…」
「力が全く通用しない…」
いままでの、記憶が溢れてきている。
「兄さんの力も奪われいて…」
「私には、何も残っていな…うっ、うっ」
言葉を吐き出している最中に目から大きな涙が頬に伝って流れてくる。
「かえして、かえしてよ、兄さんをかえしてよ。私から奪ったものを全部かえしてよ」
目から涙があふれてくる、レイナは完全に心が折れた。膝が地面に着き、座り込んだ。
「もう、正気を保つことも難しくなったね、君も知っているだろ死んだものを生き返らせることはできない、それは世界の法則で変えることできない絶対的な事。」
さっきまでと違い戦意喪失したエレナを見て、興味を失い、諭すように言葉を放った。
「でも、君は頑張っていた方だよ、これまで戦ったなかでは中々いい線いっていたと思うよ。相手が悪かったね。もう、君に随分と楽しませてくれたから、そろそろ終わらせるね」
エレボスは手を頭上にあげて、そこに闇の魔力が集まってきている。
「なにか言い残すことはあるかい?」
最後にレイナに問いかける。
「うぐっ、ごめんね、兄さん…」
「話を聞いてないね、またね」
闇がレイナに向かってくる。
レイナは昔の出来事が頭に浮かんだ。
それは、お母さんと喧嘩して、家出をした時の事だ。
私は、森の奥にがむしゃらに走っていた。身体はかすり傷が出来ていた。
走っている途中に何かにつまづき転んでしまった。足からは血が出てきた。立つことが出来ず木に背を預けて丸まり、暗い森で一人、恐さと、寂しさ、痛みの様々なことが起こり、泣き出してしまった。
「こわいよ……うぐっ」
間の前の茂みから音が聞こえた。私は恐怖で声を出すことが出来なかった。その茂みから見られた人物がいた。
「ん」
兄さんが私に手を差し出してきた。それから、おんぶをしてもらった。
「ひぐっ、レイナの居る場所がよくわかったね……」
「そんなの簡単だよ」
兄さんは言った。
「僕はレイナの兄さんなんだから」
レイナは昔の事を思い出し、それから死んだらこの思い出もなくなってしまう。
感情が溢れだしてくる、まだ、死にたくない、まだ生きたい。
「死ね」
エレボスは言った。
「誰か、たすけて」
レイナは大声で泣いたせいで声がかすれていたが、助けを求めた。
闇が近づき、目を閉じて、祈りの体勢に。
「天罰の矢」
衝撃が伝わってこなかった、後ろから、聞いたことのある声が聞こえた。後ろを振り向く。
「なんで…」
そこには裏切ったはずの人物がいた。
「レイナ、助けに来たよ」
アルテラがいた。




