作戦
「ん、う……」
「起きたのね、ご飯できてるからね」
意識がだんだん覚醒して、自分がしたことを思い出し顔が赤く染めあがる。
「あの、さっきはありがとうございました」
「当たり前のことをしただけ、ご飯冷めちゃうから食べてね」
マーガレットさんから具だくさんのシチューと白パンと飲み物を渡された。宿屋で一番初めに食べたものを思い出す。
「いただきます、美味しい…」
「そう!」
いい笑顔で微笑んでくれた。
「食べ終わったら、迷宮で何があったか教えてね」
「はい」
◇ ◇ ◇
食事が終わり、マーガレットさんが後片付けとギルドマスターを呼びに部屋を出て行った。
「レイナ待っててね…」
誰にも聞こえないぐらいな声で呟く。
「入っていいか?」
扉の向こうからギルドマスターのシズの淡々とした声が響いた。
「はい」
入る許可を出す、返事をし、扉からはシズとリンネが入って来る
「悪いな、体調が万全ではないのにお邪魔して、だが今はそう言ってられる状況ではなくてな、単刀直入に中層の地下11階層で何があった、レイナはどうした?」
今さっきまでの表情と違い、ギルドの代表として私に話をしに来ている。
私は、あの迷宮で起こったこと、レイナがしたことを余すことなく一部始終を語った。
迷宮でレイナが魔物を呼び寄せるアイテムのこと。
下層に居るはずのS級魔物がいたこと、それと戦闘になりぎりぎりのところで勝ったこと。
レイナが向けた悲しそうな顔のこと。
耳を傾けてくれたギルドマスターのシズとマーガレットさん、私の話をが進んでいくうちにマーガレットさんは顔が険しくなり怒りを露わにしている、シズは真剣の表情をしてからだんだんに何か分かったかのように複雑な表情になった。
「はぁ~、なんでアルテラちゃん今平気な顔してるの、何か理由があるかもしれないけどその子のせいで殺されそうになったんでしょう、なんで助けようと思えるの?」
話を聞き終わり、第一声を放ったのはマーガレットさんは、声を荒げながら怒涛の質問をしてくる。
質問の連続に困った表情をしたアルテラは、理由を聞かれてすぐには答えられなかった。わかっていたがこれが正しいのかわからなかった、決意は変わらないが
「マーガレットさん、少し落ち着け、困っているぞ」
「わかりました、ごめんねアルテラちゃん」
シズの言葉に従って、アルテラに謝罪をした。
「信じられないことがあるが何があったかは理解した。それでアルテラは助けに行くのか?」
そんなのはもう決まっている。
「はい、自分の信念を貫くために。 それに、友達が困ってたら助けるのが当たり前ですから」
なんの迷いもなくシズの瞳を真っ直ぐ見つめる。
「そうか。だったら、それに協力しよう。レイナにあいつの兄から頼まれたからな。」
思ってもいない言葉に呆けた声を出してしまった、ギルドは人個人に関与しないと思っていたからが。
「えっ、なんでですか?ギルドは自己責任なんじゃ…」
「そうだ、これはギルドでなく私個人がすることだ。さっきも言った通りレイナの兄のレンとは昔からの中だったからな、マーガレットさん協力してくれるか?」
「あなたのためではなく、アルテラちゃんのために協力しますから」
二人からの言葉を聞いて涙があふれてくる。
「ありがとう、ありがとうございます。」
「決まったな、では迷宮に潜るのは明日の午後にする、それまで各自準備を整いてくように。」
三人とコハクで作戦を少し話、マーガレットさんが出で行きシズと二人きりになる。
「君にはレイナのことについて話しておくことがある聞いてくれるか?」
私は頷き、シズからの言葉に聞いた。
レイナが幼いころに兄をなくしたこと。
5年前に兄が正体不明の魔物に殺されたこと、レイナがただ一人の生き残りのこと。
それから、徐々に感情を表に出さなくなったことと兄の復讐を誓っていること。
「そうですか、なら尚更レイナの元に行かないといけませんね」
「助かる」
短い返事だったが思いが伝わって来る。
「ところで、何でマーガレットさんは私の場所が分かったんですか?」
さっきまでと違い、冷静になりふと思ったことをシズに質問をした。
「あ~それはだな、今日依頼が終わってこちらに報告してきたマーガレットがな。君の事を訪ねてきてな。どこにいるんだと尋ねられて。迷宮に入っていることを話したら、あんな小さい子に迷宮なんて早いと言って、すぐに迷宮に向かってしまった」
「そ、そうなんですか…」
短い時間しか一緒にいられてないのに、マーガレットさんが心配してくれたことが嬉しい。 そのおかげで助かった。
「私は元Sランク冒険者でマーガレットさんはBランク冒険者だから実力的には問題ないぞ。あと、これを飲んでおけ上級ポーションだ。」
(シズさんすごい人だったんだ。ギルドマスターをやっているから当たり前か)
「ありがとうごさいます。」
渡されたポーションを飲み、天水ほどではないが体中の傷が癒えていく。
「ところで、倒したS級魔物の名前は分かるか?マーガレットが転がっていた大きい魔石を拾ってきたが君が起きるまで見せてくれなくてな」
「炎帝猿と戦ったんですが...」
言葉を放った瞬間、シズの顔は驚きの色にかわり、尋ねてきた。
「なっ!?一人で炎帝猿を倒したというのか、どうやって?」
「無我夢中で…」
流石にスキルの事は言えないのではぐらかす...
「そうか、もしよかったらステータスを紙に書いてもらっていいか?」
「スキル以外ならいいですけど...」
ここで納得してくれて、ステータスを紙に写す。
『名前』 アルテラ
『種族』天翼族
『職業』弓兵
『年齢』12
HP:1300/1500
MP:1500/2000
ATK:700
DEF:600
AGI:1300
MAG:1500
INT:600
LUK: 10
職業は誤魔化す。LUK以外すべて上がっている、それほど炎帝猿の戦いは激しかった。でも、この世界にきてからあえて触れなかったけどLUKが一たりとも増えてないのは、どういう事なんでしょう
このせいで、面倒ごとに巻き込まれてるんだったら勘弁していただきたい…今のことが終わったら運が上がるスキルを手に入れると心の中で決めたアルテラ。
紙の中に目を通すシズ。
「君の歳でここまでのステータスか凄まじいな、Bランク冒険者と同じ強さがあるぞ。だが、これでは炎帝猿には到底届かないが、教えてくれないか冒険者ギルドのマスターに誓って誰にも話さない。」
「それは...」
私の顔の表情を見たシズ
「すまない、誰だって話せない事はあるだろう、作戦は話した通りに行う準備を整えてきて来るように。」
天翼族の秘密を握られてるのに、《称号スキル・英雄の素質》から 《称号スキル・王殺しの英雄》に変わっているスキルを言うと絶対に面倒ごとに巻き込まれる。職業が英雄になってるし英雄ってそんな大層な人じゃあないんだけどな…
考えことをしていると辺りには、寝ているコハク以外誰もいなくなり静けさが戻った。窓を見るとすっかり日が落ちている。
「待っててね、すぐに行くから」
もう、失いたくない。




