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目覚めて再び眠る

 ふかふかの何かに横たわっている?


「ん、う……」


 どこか知らない場所で一人で眠るアルテラの身体が、もぞりと身じろぎした。

 意識が徐々に覚醒したのだ。アルテラはぼんやりと、重たい瞼まぶたを開けてゆく。室内を照らしている光あれは魔道具なのかな?、知識がまだまだ足りないからわからない、長い眠りに就いていたのか光がとっても眩いのか、ぱちぱちと瞬きをして目を細める。


(ここは……?)


 見慣れぬ天井が視界に映った。続けて、視線を動かして室内を見回すと、綺麗な学校の保健室と似ている雰囲気がある。


(どこ? 私……なにしてたっけ?)


 どうしてここで眠っているのかな? アルテラは白濁とした思考回路で、記憶を振り返る。


(確か炎帝猿を倒して、そのまま気を失ったんだ……)


 迷宮の中で何かあったレイナを追いかけるために、襲われたのだ。そして、決死の死闘を制したんだよね…


「っ!?レイナの所に行かないと」


 意識が完全に覚醒して、目的を思い出した。


 アルテラは慌てて身体を起こそうとする。だが、身体が重い。まるで鉛が纏わりついているようだ。動かそうとすれば反応はするが、思うように持ち上がらない。両手なんて動かすと凄く痛い。

 アルテラはそれでも起きるのを諦めず動かすそうとするが思うように動かない、動く最中にベッドの下に落ちてしまった。


「イタッ!!」


 痛みが全身に走った。ベッドを使いながら立ち上がる。


 代わりにもう一度、室内をよく見回した。すると――


(誰も……いない)


 部屋の中にいるのが自分だけだと確認し、ベッドの中がもぞもぞしている。


(何がいるの……)


 めくると、眠っているコハクが居た。


 コハク、お前いつも寝てるよね。


 状況を確認する。


 炎帝猿の戦闘で力尽きて、倒れた。そこから誰が私をここに運んできたの?、私の背中には【偽装】が動作してなく翼が丸出しになっている、ここはどこかの病院だろうか、。私の翼が誰かに見られた可能性が出てくる、もしかしていま最悪の状況に陥っているのかもしれない。レイナのところに行く前にややこしい事態になっているかも……


 すると――


「…………」


 アルテラは名状しがたい心理的な胸の痛みに襲われて、顔を曇らせた。

 でも、それだと自由に行動をできる環境にいるから大丈夫のはず、コハクもどうやって私のそばにいるのかわからないけど…


(レイナの所にすぐに向かいに行きたいけど、身体が動かない。天水は6日前の迷宮で使ってしまってストックがない。)


 アルテラは立派な部屋の作りや家具を見ながら思った。やはり自分は捕まってしまったのだろうか?

 だとしたら、考えられる最悪の展開になっている可能性が高い。待っているのは、奴隷として利用される未来だけなのだから。


(……そうだ。私、体力がなくなりそうだったから岩に着地する途中に大勢を崩して落ちたけど、衝撃がこなかったよね?あの戦闘中に誰かがきたのかな?それで、私を迷宮の外へ運び出してくれて……ここへ寝かせてくれたのかな)


 と、アルテラはどんどん記憶をたどっていく。


 そう、誰かの声が聞こえた。それでアルテラは耳の片隅で聞こえてた、反応はしなかったけど。

 そこには、最近聞いた声だったような――


「だいじょ…こ…飲んで…」


 ――と、言っていた、気がする。


(……柔らかかった)


 顔を向けていなかったので顔は思い出せない。でも、最近聞いた声だったことは確かだ。


 その後、気を失い、そこで意識が完全に途切れてしまった。だから、覚えているのはここまでだ。


 だが―― 誰?


 わからない。わからないけど、だから――


(私が気を失った後、どうなったんだろう?)


 と、強く気になったアルテラだった。だが――


「っ!?」


 ぐうううと、かつて聞いたことがない悲鳴を上げて、アルテラの胃が空腹を訴える。室内には誰もいない、喉の渇きも半端ないよ――


「……おなかすいた」


 完治しているのかはわからない。だが、良くなっているのは確かだ。

 アルテラは複雑な顔を浮かべると、しかる後、今一度、歩いてみようと決意した。両手と両足に力を込めて、ぐいっと半身を動かそうと試みる。

 だが、やはり鉛のように身体が重い。それでも、すぐには諦めず、なんとか壁を伝って扉を目指す――


「動かない…」


 アルテラは途中で、その場に座り込む。足に力が入らないのだ。レイナの所に行かないと


(どうしよう? どうしよう?)


 アルテラはパニックになる、目指している扉が。少しして、キィと部屋の扉が開く音が響いた。


 アルテラはびくりと身体を震わせる。恐る恐る扉を見やると――


「おはよう、アルテラちゃん」


 そこには、馬車で一緒になったマーガレットさんが立っていた。


 ◇ ◇ ◇


「おはよう、アルテラちゃん」


 赤色の髪をした女性――マーガレットさんは、ベッドの傍の壁に座り込んでいるアルテラを発見すると、目を丸くして声をかけた。


「あ、マーガレットさん何でここに...?」


 アルテラはどぎまぎと質問をする。


「目が覚めたのね。……起きられる?」


 マーガレットさんは扉の横に設置された光の魔道具を操作して室内の灯かりを強くすると、アルテラに歩み寄って、そっと手を伸ばした。


「……ありがとうございます」


 アルテラは眩しさで目を細めつつも、礼を言いながらマーガレットさんの手を掴む。軽く引っ張ってもらって、そのまま起き上がろうとするが――


「っ、きゃ!?」


 力が入らず、そのままマーガレットさんの体にもたれかかってしまった。


「本当に大丈夫?」


 マーガレットさん心配そうにアルテラの身体を案じる。


「は、はい! すいません。思うように動かなくて…」


 アルテラは慌てて起き上がろうと身じろぎした。あたふたと手を動かし、マーガレットさんの身体に体重をかけながら立ち上がろうとする。


「無理しないで、運んであげるから」


 マーガレットさんは苦笑交じりに嘆息すると、アルテラを抱きかかえて持ち上げた。

 いわゆるお姫様抱っこである。


(本当に軽いわね、ご飯食べてるのかな)


 持ったとき思ったマーガレットさん。


「す、すみません」


 と、アルテラは謝罪する。


「ベッドに運ぶわね」


 マーガレットさんは落ち着いた声でかぶりを振って、アルテラをベッドまで運んでやった。そのままそっと、マットレスの上に降ろしてやる。


「…………」


 アルテラは降ろされ今の状況に気づいた。今は、【偽装】で翼を隠してない。


 アルテラは痛みに耐えベットの端に逃げる、ギュッとコハクを掴んでいる。

 

 マーガレットさんを睨む。


「そんな顔しないで。 今さっき冷酷女から事情は話してもらってるから。ごめんね」


 こちらを見て傷ついた顔をしたマーガレットさんを見て、少し冷静になる。


「すいません、助けてくれたのはマーガレットさんですか?」


 その顔を見て、違うんだとわかった。


「そうよ、ビックリしたんだからね。 爆発音は鳴るわ、アルテラちゃんのところに着いたら、空から降ってくるわ、辺り一帯が灼熱地獄だったんだから」


 マーガレットさんは少し間をおいて、はきはきとその時の状況を解説してくれた。


「どうして、迷宮に?」


 アルテラはマーガレットさんの顔を覗きこんで尋ねた。


「そのことについては、冷酷女が来てからね。 冒険者なりたてのアルテラちゃんに危険な依頼を頼んで何考えているのよ」


 私のために本気で怒っている。


「あと、後で何があったのか教えてね?」


 マーガレットさんは真剣な表情をした。ただ、その瞳は真っ直ぐと、今もアルテラの顔を窺うように捉えている。


「あ、レイナが、レイナが一人で迷宮の奥に行っちゃって、助けないと」


 アルテラはまたも動こうとすると、マーガレットさんに止められる。


「まだ、動けるような状態じゃあないわよ」


「はなして、レイナのところに行かないと、レイナはもう…、えっ!?」


 リンネが暴れている私に抱き着いてきた。痛みは感じないが強く暖かいハグ


「何かあったか私にはわからないけど、辛かったんだよね、今追いかけることのできない自分が悔しんだよね、その気持ちはね、痛いほど伝わってくるよでも、今は安静にして、お願い。」


 アルテラはマーガレットさんの言葉を聞いて全身の力が抜けていき、眼から大粒の涙があふれてきた。


「うぐぅ、う、レイナが、レイナがいっちゃて…悲しい、うぐぅ…顔してね…」


「うん。 わかったよ……だから今は少しで回復するように寝て」


 マーガレットさんは、温かな声で耳元に囁き、強く抱きしめた。すこし痛いがそんなことも気にならないくらい心地よかった。


 マーガレットさんの体温を感じながら、再び眠りについた。


「ほら、無理するから」


 優しいことねをはきながら、アルテラを抱きしめ続ける


 ぐうううと、寝ているアルテラのお腹が再び悲鳴を上げる。直後、マーガレットさんは小さくくすりと口許をほころばせると――、


「とりあえず、またアルテラちゃんが起きる前にご飯でも作るかな」


 と、思う。


「コン! コン!」


「君も、手伝ってくれるの?」


「コン!」


「ご飯は作れないから、アルテラちゃんのそばにいてあげてね。 また、干し肉多めにあげるからね」


 コハクは大きく返事をしてベッドに寝かせられているアルテラの腹部に丸くなった。


「天翼族か… こんな子が一人で街に来ないといけない理由や家族とかはどうしたのか…」


 マーガレットさんは踵を返し、キッチンへと向かった。


 それから、頭が冷静になってからマーガレットさんの言葉を整理する。


「ねぇ、コハク。馬車に乗っているとき、寝ているときは見張りを頼んでたよね? でも、なんで私の顔が見られたのかな?」


 コハクの体が震える。ギクッっと効果音が聞こえた気がした。


「干し肉はいつの間にか貰ったの?」


「コン! コン! コン!」


 弁解をしているようだ。


「全部終わったら覚えとい……て……ね……」


 傷がいえないのか再び眠りについた。

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