迷宮探索③
次元が違う、どう転んでも勝てるビジョンが見えない。
目の前いるのは、絶望だ。
硬直状態になっている、体を無理やり動かす。
「レイナッ!逃げな...いと...ど...した...の...?」
無理あり身体を動かしながら振り返る私の視界に映ったのは、見たことのないレイナ。
あの、無表情の顔が憎悪に歪めれらていた。どうしてそんな顔ができるのかわからない、何がそうさせているのもわからない。
それまでの感情が一瞬で消失した。
「レイナッ!?」
戸惑いに近い声が喉から放たれる。
レイナは一瞬こちらを向き、違う方向に顔を向け腰にあるバックから何かを取り、投げた。
最後にもう一回こちらを向き、どこかに走っていった。
「!」
アルテラは何が起こったか理解できず、呼び留めることも反応することが出来なかった。
(何がおこったの?)
レイナの投げた物から異臭が突然襲われた。腕で口元を覆い視線を彷徨させる。急に辺りから複数の魔物の雄たけびが響いた。炎帝猿も例外ではない。
「これって、魔物をおびよせるための?」
この世界のアイテムについては無知に近いが、魔物がいるから呼び寄せるアイテムがあっても、不思議ではない。
でもどうして、ここに...。
弾かれたように顔をレイナが去った方向に向ける。けどもう姿は影も形もない。
最悪の予想が思い浮かんだ、裏切られた…? 何で? 絶対勝てないから?
さっきの光景が頭を過ぎった。あの表情を見てしまった。
自分を罵った。
「違うッ!! 裏切る相手にあんな顔をしないだろ!!そうだろッ、今ここで逃げたら絶対に後悔する」
去り際に、裏切る相手にあんな顔をしないだろう、なにか理由があるはずだ。
私に見せてくれたあのいくつかの表情も嘘なわけがない。出会った期間は確かに短いがそれがなんだ。長ければいいのか、違うだろ。出会った時間は関係ない。そこに繋がりがあればいい、レイナにとって私は取るに足らない存在だとしてもいい、自分の自己満足でもいい。
何が、レイナをそうさせたのは私にはわからない。
でも、私がレイナを救うよ。
それがエゴの塊だろうが、この世界に二度目の生命を受けたんだから自由に生きる。
「私はもうあの時のようになりたくない。ここで逃げたら元の私に後戻りするかもしれない。ここで負けたら信念も何もかも貫くことができなくなるよ。だがら、戦うよ。戦いの準部は出来ているかッ、猿の王ッ!」
笑いが込み上げてくる。自分が変わったかのように心が澄んでいる。
《称号スキル・英雄の素質》を獲得しました。
さっきまでの、恐怖、緊張、様々な感情が嘘のように消えていく。それに比例して力がみなぎってくる。
國本彩音のアルテラのただ一つの信念を持ちながら、レイナを救う。




