第九話 ダナル水蠅
第九話 ダナル水蠅
「今日はアメンボ狩りにするか!」
ダナル沼にはツチガエル以外にも多様な生態系がある。そのひとつがダナル水蠅だ。ハエと言っても飛べないハエなんだが、飛行能力の代わりに水上歩行能力がある。つまりアメンボだ。
このアメンボは軽い体と特殊な足によって水面をスイスイ移動できる。
ダナル水蠅の本体は洗濯機ぐらいの大きさで、そこから4m程の脚が6本生えている。
アメンボの主食はダナルツチガエルだ。カエルに近寄り針のような口を差し込んで体液を吸い取ってしまう。
ダナルツチガエルを狩るときや解体するときに、カエルを狙ってくるので邪魔だと感じていた。
もし倒してもアメンボは虫なのであまり美味しくはない。死体を店に持って行っても買い取ってもらえなかった。魔結晶だけは売れるそうだが、魔結晶は食べてしまったのでもうない。
(しかし!アメンボの能力は湿地帯では有用性が高い。金にならなくても欲しいな)
「周囲に他の冒険者はいないな?この辺りでアメンボを狩るぞ。まずはカエルの死体を放置しておびき寄せるか」
ダナルツチガエルを倒して死体を放置していると、血の匂いに誘われてアメンボがやってきた。
アメンボがカエルの死体に鋭い口を差し込んで体液を吸っている。
俺は茂みから姿を現した。アメンボの食事を邪魔してやるのだ。
「シン チャオ!アメンボちゃん。食事中のところ悪いな」
アメンボは逃げずに俺に襲いかかってきた。
(作戦成功だな)