第五話 ダナルツチガエル狩り
第五話 ダナルツチガエル狩り
今、俺はプロポリスという町を拠点にしているらしい。
この世界の人たちは魔物がいないところを探して、そこで生活している。
だから町の近くにはあまり魔物はいないし、いても弱い魔物ばかりだ。
今日はカエルを狩るために湿地帯へ来た。ダナル沼というところらしい。ダナル沼はプロポリスから比較的近くにあり、初心者の冒険者がよく来る。
そのためカエルを狩るための道具を貸す業者やカエルの肉や素材を買い取る業者がダナル沼に出店している。
「すみません!カエルを狩るための道具を貸してほしいんですが」
「フック付きロープとエサ用の肉だね。フック付きロープが銀貨5枚、肉は銀貨1枚だよ」
「どうやって使うんですか?」
「おや、ダナル沼は初めてかい?」
「はい。初めてです。」
「ダナル沼に点在している岩に鉄の釘が打ち込んであるだろう?あれにこのロープを繋いで、ロープの先のフックに餌をつけるんだよ。初めてなら、この毒瓶も買いな。ただし毒を食らったカエルの買取価格は安いからね。」
どうやらダナル沼にはダナルツチガエルというカエルがたくさんいて、それを目当てに来る冒険者さんがたくさんいるそうだ。
「この辺りは他の冒険者はいないな。この岩にロープをくくりつけてっと」
俺はロープの先のフックにエサ用の肉を取り付ける。もちろん肉にはたっぷり毒を塗ってある。
仕掛けが終わったら、隠れてカエルが来るのを待つ。
(来た来た!ちゃんと食べてくれよー)
やって来たダナルツチガエルはビジネスホテルにある小さな冷蔵庫ぐらいのサイズだ。
舌を伸ばして一瞬で肉を口に入れて飲み込んだ。
飲み込んでから毒入りだと気づいたようだ。バタバタと暴れるが、今度はフックが喉に引っかかって逃げられない。
ダナルツチガエルの動きが止まったら、近づいて剣でトドメを刺す。
「なんか想像した冒険者の仕事と違うぞ。どうせ夢なんだからゴブリン退治とかさせろよ!」
と言いつつもカエルを解体する。内臓に魔結晶は多くあるらしいので、内臓を引っ張り出す。
「あるある。これが魔結晶か」
青いグミみたいな魔結晶が5つもあった。水ですすいで食べると、少し身体が熱くなった。これで少しでも強くなるはずだ。
魔結晶を取り出す以外の解剖の仕方がわからないので、業者の店に行ってとりあえず倒したカエルを買い取ってもらった。カエルの肉に毒がまわっているので、買取価格は安かった。
この後もカエルを何体か倒して町へ帰った。
毒がなくなってからは、動き回るカエルと直接戦ったが、楽勝だった。
フックが喉に引っかかっているせいで、カエルは舌を使う攻撃がしにくくなっていた。
さらに、この世界の俺は一度死んだことで能力が低下したが、それでもある程度は強化されているらしく、結構素早く動けるしカエルの体当たりを耐えるだけの肉体の強さもあるからな。
町へ帰ってから、市場へ行ってみた。色々な種類の肉や魚などが売っていた。ダナルツチガエルの肉も売っていた。
市場にはフリーマーケットをしている区画があった。そこに見覚えのあるものがあった。
「すみません!これって魔結晶ですか?」
「そうだよ。加工前の魔結晶だよ。魔道具の製作に必要だろ?」
「魔道具ですか。固い魔結晶は魔道具の製作に使うんですね」
「そうだ」
「安い魔結晶はありますか?」
「あるけどよぉ。あまり良い魔道具は作れないぞ」
(みんな固い魔結晶は食べないのかな)
「いいんです。安い魔結晶でいいので、たくさんください」
今日の稼ぎだけでなく、今までのケイトの稼ぎがあるからな。使わせてもらうぜ。
魔結晶をたくさん買った俺は宿に帰ってから、ちゃんと洗って食べた。
「固い魔結晶を食べるのは一苦労だが、身体は着実に強化されている感じがするぞ!」
その日は身体強化の喜びを感じながら眠りについた。
次の日はアラームで目が覚めた。