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お菓子が突然、美少女になったので仲間にしました。  作者: ワキ毛増毛3000円
第一章 ~狂気の館~
7/7

リンディーテェン

アナサントリアの町並みを楽しみながら馬車は西へ。


町の複雑さにふたたび驚く。


「ここアナサントリアは最近、観光地として新しいスタートを切りました」


「しかし、まだお世辞にも良いとはいえず、今後の発展が期待されています」


馬がガイドのように喋り続ける。


「だよな。迷路みたいだぜこの街」


グッピーに会うまで苦労したな。


「町の地図は観光案内所が未だ作成中です~。タイミングが悪かったですね~」


「だが、衛生環境は優れているようだな。パッと見ても道路にはゴミ一つ落ちていない」


不潔な場所には闇蟲が発生する。こんな簡単なことを解明したのはつい最近になってのことだ。


国は上下水道を改良したり、衛生レベルの向上を図り始めた。


しかし、人が生活する以上、汚いところはどうしても発生してしまう。下水道に生息していたコンゴルは、定期的なメンテナンスを怠ってしまったのが発生の原因だろう。


根本的な解決には至ってないのが現状だ。


「アナサントリアはこの国の衛生対策委員会の指導のもと、取り組みに励んでいます。だから、ゴミのポイ捨ては重罪なんですね」


「重罪っていえばどのくらいだ?」


「罰金1000万円か、むち打ち1000回ですな」


「ヒエッ…」


「ハルト! なにがいい?」と、後ろの連中はお菓子の袋をぶちまけて、散乱していた。


「……ハルトさんのぶんもあるよ…」


「おいおい、ずいぶん買ったな……」


「ちゃんとぜんぶつかいきったわよ! すごいでしょ!」


大量のお菓子の袋が散乱していた。


ポテトチップスとチョコレート、ガム、ジュース類。


「ジュースは……なににする?」わたあめは俺の前に三本のジュースを並べた。


左からオレンジジュース、コーラ、コーヒーミルク。


「そうだな、えーと……」


「きゃあ! かわいい! みんなみて!」とクリームがはしゃぎ始めた。その手にはお菓子のオマケであるフィギュアが握られている。


それは金色の冠をかぶり、赤いマントを羽織った、顔にコミカルな表情を浮かべたアヒルのおもちゃであった。


「それ、ダッキィ君か?」


「ダッキィくんっていうのね! かわいいおなまえね!」


「…かわいい…でもなんでおうさまのかっこうしてるんだろ…」


ダッキィ君というのは、有名なお菓子メーカーである【シェルレーク】のマスコットキャラクターである。


シェルレークはお菓子メーカーの中でも業界トップクラスの知名度を誇る。

お菓子メーカーと聞かれたら、ほとんどの人がシェルレークと答えるほどだ。


クリームとわたあめが買ってきたお菓子のほとんどもシェルレーク製だ。


「小腹空いたから少しもらうぜ」俺はポテトチップスの袋を手に取り、パッケージの裏側を見ると、6つの違う服装のダッキィ君のイラストが描かれていた。


「ダッキィ君、お友達がいるらしいぜ」と言って二人にパッケージを見せた。


「わぁ、こんなにいるのね! こんなにいたらもっとにぎやかになるわ!」


「…そうだね。ひとりだけだと…ちょっとさびしいね」


「いっしょにこんぷしましょ!」


「…うん!」


「さてみなさん。もうアナサントリアとはお別れです~。ここから目的地まで、無味乾燥で超絶殺風景な田舎道が続きます~」


「おいおい、えらい言いようだな。田舎もいいぜ」


「わたくし、シティーボーイですので」


アナサントリアを抜け、本格的な旅の始まり。

整備されていないでこぼこした道を一両の馬車が駆けていく。


「おそと! みてみてハルト、ヒツジさん!」


クリームは初めて見た外の世界に興味津々の様子。


それとは対照的に、わたあめは次第に小さくなっていくアナサントリアを見つめていた。


「……」


「…また…かえってくるかな……?」


「……あぁ、またいつかな……」


しばらくすると、二匹の故郷、アナサントリアは点のように小さくなった。











「お疲れ様です~。ご到着で~す」


「あっ、んあっ?」


寝てたみたいで間抜けな声をあげちまう。


昨日はあの悪夢のせいであまり眠れなかったな。


クリームとわたあめもぐっすりしてやがる。


「おい、起きろついたぞ」


「あっ、んあっ?」とクリームが間抜けな声をあげる。


「ぷぷっ、リアクション、そっくりですね」馬が微笑ましそうに笑った。


「……あっ……んにゃ…?」わたあめも起きた。


「おしい、ちょっと違いましたね」


荷物を下ろし、馬車から降りた。


「どうもな」


「ありがとね、うまさん」


「…またね…」


「ご利用ありがとうございますぅ」


馬は再び、アナサントリアの方向に駆けていった。


「わぁ! ここのまちにハルトのおうちがあるのね!」


ここはリンディーテェン。古くから貿易の盛んなこの街では、昼夜問わずあらゆる国の人が入り乱れる。


人が入ってくるということは、異国の文化、言葉、見慣れない品々などが目白押しだ。


様々な国の旅商人たちが見慣れない品物をカーペットの上にのせマーケットを開いていた。


「おい、にいちゃん。見ていかねぇかい?」


ひげもじゃで、頭に特徴的な帽子を被った初老の男に声をかけられた。


「俺はノピスハーグから来たのよ。おい見ろよ!このつぼ!すげー曲線美!」


「うわすごいですね、金魚を飼うには最適なサイズですな」


「てれるぜ!」


「あれ、もしかしておもちかしら?」


クリームの指の先には、短く髭を整えたおっさんが、粘性のあるアイスをこれでもかというほど伸ばし、爽やかな笑顔で客を挑発していた。


客のほうも、目を丸くして驚いている。


「ありゃあトルコアイスだな、しかもすげぇ伸びだ。1m位は伸びてるぜ…。あいつ、ただのトルコアイス屋じゃねぇな…」


「あれ、たべたいわ、わたあめちゃんももちろんたべたいわよね」


「…ボクはもういいかな…。さっきのおかしでおなかいっぱいになっちゃった…」


どうやら、お菓子妖精の食欲には個体差があるようだ。


「見てみてくださいお客さん。今日の伸びは最高記録ですよ。きっと美味しいに違いありませんね!」


「そいつはよかった。2つお願いします!」


「まいど!」


「くちにながーくのこって、ながーくたのしめるわね、きにいったわ!」


「バニラの味が、口のなかに、広がっておいし……」


「ねぇ、ハルト。わたしとどっちがおいしい?」


クリームは自信満々に尋ねてくる。


「……うーん。偏差でトルコアイスか…」


「……どっこいどっこいだな」


「いまわたしをしらないわね!ケーキやさんとおかしでパワーアップしたわたしのあじをおもいしるがいいわ!」


フフーンとどや顔で笑って、俺の口にソフトクリームをぶちこんでくる。


………すっげぇ、濃厚………


「……うん、正直あまったるいですわ。買った当初の120円のお前の方がもっと美味しかったぜ」


「うそ……あんなにおいしいケーキたべまくったのに……」


「むやみやたらに甘いものくえばいいって訳じゃなさそうだな……」


「……うーん……もっとけんきゅうしなきゃだわ……」


すると俺の体から冷気が放出し始め、地面をパキパキと凍らせていく。


やべぇ、すっかり忘れてた。


「なんだあいつまじやべぇよ……。人間ドライアイスか?」


「リンディーテェンは珍しいものが多い街だが、まさかこんなビックリ人間がいるとは…」


周りの冷たい視線が痛いぜ!


「おまえさん、マジシャンかなにかか?」


「い……いえ私のことはあまりお気になさらずに……」


「こいつ、レアモンスターだぜ、多分!捕まえようぜ兄貴!」


目の前に兄弟が現れ、俺を茶化してくる。


弟はクリームとおなじくらいだが、兄の方は2m位あってムキムキだ。


「……あぁ、目立つのは好きじゃねぇんだよなぁ……」


「あわわわわ……」と情けない声をあげながら、クリームが大勢の殺到にあたふたしている。


「………ハルトさん!これたべて……」


わたあめが、手のひらサイズのわたあめを差し出す。


そうか、考えたな!機転が利くぜ!


パクっとわたあめを口に運ぶと、全身から白い雲が発散されていく。


冷気と雲が混じりあって、なんかスゲーことになってきた。


「うわああああ」周りが混乱しているうちに退散する。


「クリーム! わたあめ! 捕まるなよ! 売り物にされちまうぞ!」


「とうちゃくそうそうさいなんだわ!」


裏の迷路みたいな路地を器用に駆け抜け、比較的落ち着いた場所に出る。


レンガで舗装された一本道の突き当たりを左。


俺の家はそこにある。


「ぜぇ、ぜぇ、さて、着いたぜ……」


「あれ……? でもここって」クリームが建物をまじまじと見ながら言った。


「きっさてん………?」

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