囚われの少女
またもや、グロ。
マヤの家。
簡素なあばら家であり、内側からカーテンがかかった窓からは家のなかをうかがい知ることはできない
赤いポストにベルが置いてある。
これを鳴らすのかな?
チリン!チリン!「マヤさん、いますか?」
ドドド……。
家の中からこちらに走ってくるような音が響いてくる。
ガチャ。
ドアが空くと同時に、中から異臭が流れ出てきた。
出てきたのは、髪はボサボサで頬はこけ、まるで骸骨のような顔をした中年の女性だ。
「……誰!?何をしにきたの!?あの娘はわたさないわ!」
「私は医者です。同僚のミグは急病で来れませんでした。私は、その代理と言うわけです。」
「あらあらあらあら!ミグさんだいじょうぶかしら。あの人はいっつも良くしてくれるのよ。世界一の医者だわ」
「ミグは来月から復帰できるようです。信用してくれますか?」
「まぁ、ミグさんに信頼されている方なら心配はないわ」
「どうも。では、早速中へ」
「そうね、上がって」
玄関のドアから伸びる廊下の先、奥に二つ目のドアを見つけた。
奥に入るにつれ、異臭がひどくなってくる。
この先のリビングには何が?
隙間から入ってくる異臭に耐えながらドアを
開けた。
ウジの湧いた何かの動物の内臓、魚の死骸、変色した謎の肉が、床や壁、家具に至る全てにぶちまけられていた。
「さぁさ、先生どうぞ座って」
比較的きれいな椅子に腰かけるよう催促してくる。
その後、マヤはキッチンに何かを取りに行った。
俺はさりげなく話機を取り出し、メグに現状を報告する。
「闇蟲について何かわかりましたか?」
「……おそらく、寄生するタイプの可能性が高い……。闇蟲の気配が全くしないのです…。このタイプは気配を消すのが巧妙で、総じて知能が高いことが特徴です。」
「マヤの頭がおかしくなっちまっただけじゃないのか!?」
「その可能性もあるでしょう。ですが、ここははっきり言って、人間が住めるような環境ではありません。普通の人間なら1日居ただけで、病気になるでしょう。そのくらい異常です」
マヤが何かをもってキッチンから帰って来る。
「わたしお昼まだなのよ。先生もご一緒にどうかしら?」
「もう済ませましたので」
「あらそう」
腐ったチーズの上でウジ虫が踊っていた。発酵が進みすぎて半分液状化している状態だ。
マヤはチーズを素手でちぎり、汁を滴らせながら口に運ぶ。
バクバク、ガツガツ……。
一心不乱にチーズを口に運んでいく。
「………おいしいですか?」
「おいしいわけないでしょ」
「そろそろワタちゃんの診療を」
「あぁ、そうね、お願いするわね」
マヤはふらふらしながら部屋の奥へと向かっていった。
内臓を踏まないようにしながらマヤの後をついていく。
奥には不自然に綺麗なドアがあった。
中は、バスルーム?と思いきや洗濯機や冷蔵庫、簡易的なキッチンなど生活に最低限必要なものが凝縮されていた。
するとその奥にさらにドア。
おそらくあそこにワタちゃんが……。
「この先からは体を洗ってください。グッピーさんも毎回そうしていたので……」
清潔な桶に新品のせっけんとシャンプー、の歯ブラシと歯みがき粉が入っていた。
「ミグから事情は聞いています」
「なら、話は速いわね」
「これで、よろしいですか」
シャワーを浴びて、白衣に着替える。
「えぇ、それでいいわ。鍵を開けるから待ってて…」
マヤが鍵を開けている間に、さりげなく話機に通話する。
「今から例の部屋に入ります……」
……隙を見て、彼女を救出する。
グッピーに預けた後は俺の仕事だ。
そこは真っ白い部屋。
子供を監禁するにしては広い部屋だ。
シミや汚れが一つも見当たらない。
本当に同じ家なのかってほどだ。
絵本がたくさん入った本棚やたくさんの種類のおもちゃ、動物のぬいぐるみ等が置かれており、子供にとって飽きないものばかりだ。
でもこの部屋には例の少女がいない。というか、ひとっこひとりいません。
「ワタちゃん!ミグ先生今日来られないらしいの。代わりの先生が来たわ。挨拶してね」
マヤの目線の先には子供用のテーブルが置いてあった。そのテーブルの上には、おやつのわたあめが乗っかっていた。
……やばいぜ! 幻覚でも見始めたのか?
待て。
わたあめ……。ワタちゃん……。
わたあめはいきなり膨張し、女の子の姿になった。
「……。きみがせんせいのかわり? ………ボクの名前は【わたあめ】。……よろしくね……。」
「……」
「わぁっ…」