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お菓子が突然、美少女になったので仲間にしました。  作者: ワキ毛増毛3000円
第一章 ~狂気の館~
2/7

クリームちゃんのケーキバイキング

ちょっと、グロテスクです。

「そういえば、なんてよべばいいのかしら?」


「今さらかよ」


「ハルトだ。フカマチ・ハルト」


「ハルトね!」


比較的大型のスーツケースを揺らしながら、その男は歩いていた。


その傍らには小さな少女。正体はソフトクリーム。


二人は西の十字路へ向かって歩いていた。








「あなた、ワイルズさん?」


「そうだが?」


みすぼらしい、初老の男。汚いテーブルに陳列された泥団子は彼自慢の逸品だ。


「この町に住むグッピーという方をご存じで?」


「あぁ、知ってるぜ!」


男は丁寧にも地図を書いて教えてくれた。


「いくらか、くれよ」


「どうも、ワイルズさん」俺は2000円を手渡した。


「これはチョコレートかしら?」クリームが手を伸ばす。


「お嬢ちゃん。こいつらは俺自慢の泥団子だぜ。

ずっと磨いてきたから綺麗だろ。味もうまいぜ!」


「いらないわ」









さて、ようやく場所がわかったが、こいつが邪魔だな。


しばらく、歩くとケーキ屋さんがあった。


ガラス越しから、色とりどりのケーキが顔を見せる。


オーソドックスなショートケーキ、ほんわかした優しい色のチーズケーキ、栗がテカテカして美味しそうなモンブラン、クリームがはみ出しそうなくらいたっぷり詰まったエクレア!


「うわぁぁぁぁぁぁ…」


クリームが恍惚な表情を見せる。


「…へぇ、うまそうだな…」


「でしょ!でしょ!ハルト!はやくはいりましょ!」


ったく、興奮しやがってこのやろうは。


よく中を見ると、客が結構いる。


入り口の張り紙にはこう書かれていた。


『皆さんお待ちかね!ケーキバイキング!

2000円で有名パティシエのケーキが食べ放題です!』


「バイキングやってんのか」


「バイキングってどういういみ?」


「食べ放題ってことだな」


「たべほうだい!?ケーキもエクレアも!?

もちろんパフェも!?」


「そういうことになるな」


「やったぁぁぁぁぁ!」


おい、まだ入ると決まった訳じゃないぞ。


「わたし…どうなっちゃうのかしら…?こわいわ…」

急に深刻な表情になる。


「知るか」










中には結構な客がいた。店の方は古めかしい雰囲気だったが、きちんと掃除は行き届いている。


「さて、俺は依頼人会ってくるから、ここにいな」俺は2000円を手渡す。


「わかったわ!」受けとるとすぐに店員の方に走っていった。


「あら!かわいい子ね!何かしら?」女性の店員がクリームに気がつく。


「わたしもケーキたべたいわ!」


「えぇ!もちろん!」


…はぁ、やっとうるさいのが行ったぜ。


さて、行くか…。









俺は何キロか歩くと、集合住宅にたどり着いた。


すると、入り口に男が一人。キノコみたいな髪型で、緑のシャツを着ていた。


俺が近づくと、向こうも気づいた様子。


「失礼、グッピーさんですか?」


「あぁ、そうだよ。あんたが怪物ハンターか?」


「はい。」


グッピーには【マヤ】といういとこがいる。


マヤはこのアナサントリアに夫と娘の三人家族で暮らしていた。


しかし、不慮の事故により、二人を亡くして、気が狂ってしまい今は一人でひっそりと暮らしている。


グッピーいわく、その彼女の家で明らかに異常なことが起こっているらしい。


マヤを心配し、グッピーは度々訪ねたが、いつも追い返されていたのだ。マヤが家のドアを開けると、いつも奥からものが腐ったような異臭がしたそうだ。


彼が、俺を呼ぼうと決心したきっかけの出来事

は、彼の心を心底震え上がらせたようだ。


それはある日、マヤにいつもように追い返されたグッピーはこのまま帰るのも癪なので、家の周りと彼女の生活を観察していた。


時は夕暮れになり、全く反応のないマヤの家から自宅に帰ろうとしたグッピーは、恐ろしい体験をすることになる。


「……キョオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


この世のものとは思えない絶叫がマヤの家の中から響き、家の中の‘’なにか‘’が、まるでこの場所が窮屈だと言わんばかりに、ガタガタと揺れ始めたのだ!


それ以来、グッピーは彼女の家には行っていない……。


基本的に誰も家にいれないマヤだが、一人だけあの家に入れる人間がいる…。


「あぁ、来ましたか、ハンターさん」少しやつれた感じの男が現れた。


そう。彼だ。名前は【ミグ】という内科の訪問診療医だ。


「はじめまして、フカマチです」


「さっそくですが、あの家の様子をある程度教えていただけますか?」


「……まず、初めに私は彼女を診療しているわけではありません」


「……と、いうと?」


「あの家に彼女のほかに、一人少女がいます。名前はワタちゃんと言っていました。私はその娘の診療をしているわけです」


「その娘の素性は?彼女の実子ではないでしょう?」


「あぁ、その通りだ。」グッピーが答えた。


「もう、【リーフ】はいないんだ……。

…あぁ、リーフってのはマヤの実の娘さ……。

誰か仲のいい友達の子を預かっているんじゃないかって考えたが、そんなやつなんているわけない。近所付き合いどころか、周りに住んでる人達が彼女を嫌ってるくらいだからな」


「ミグさん、そのワタちゃんについて……」


「彼女、監禁されています」


「監禁……」


「誘拐!監禁!あぁもう、めちゃくちゃ!」


「辛いでしょうが、どうか、落ち着いて……」


「ワタちゃんは、マヤさんの前では気丈に振る舞っていますが、実際は怯えています。彼女の狂気的な愛情に恐怖を感じています」


「ワタちゃんは直接的に助けを求めることはしません。というかそんな雰囲気ではないんです。あの娘もわかってるんでしょう。なんだって部屋に鍵をかけるくらいですから。いったい何をされるやら……」



「健康状態はいたって問題ないですよ、逆にマヤさんを診断したいですね……。

だって、やっぱり異常ですよ。汚物食って、腹壊して、そこらへんには吐くんです。あの部屋の中も異常の極みです。そこらに家畜の内臓が……」


「うわああああ!なんでそんなことに……」グッピーは顔を歪ませる。


「やはり、これは闇蟲というやつの仕業なんでしょうか……。昆虫の化け物なんですよね?確かに、ハエやゴキブリはいましたが、化け物と言うほどでは……。もしかして、やつらがそうですが?」


「基本やつらは大きいですが、普通の虫と大きさが変わらないやつもいます。こればかりは私が見ないとわかりません。ですが、彼女の一連の異常行動、グッピーさんが聞いた謎の怪音。………犯人が闇蟲の可能性は高いでしょうね。」


「そういや、なんであそこに閉じこもってんだよ、闇蟲ってやつはよぉ、早く出てってくれよー」


「闇蟲は自分が住める環境ではないと移動はしません。例外はありますが。闇蟲は基本、人間を食べようとしますが、知能の高いやつは、人を操ったり、寄生したりします。そちらのほうが、効率がよいからです」


「き、き、寄生!?」


「あくまで、予測です。単なる精神疾患だけの場合もありますが……」


「わたしもね、入院させたいですよ彼女。そのような話をそそのかすと凄いおこるんですよね……」


だいぶ苦労してらっしゃる。


「マヤさんは今自宅に?」


「あぁ、朝の買い物以外はずっと部屋に引きこもっているからな」


「じゃあ、行きましょう。見ないことには話にならない」


「………その前にひとつ、グッピーさん。大事なことです。とても大事な……。」


「……あぁ、わかってるよ!あんたを呼ぶ前に何度も考えたさ!彼女を殺すかもしれないんだろ?」


「えぇ、操られてるにせよ、寄生されてるにしろ、手遅れなレベルで侵食させられていたら……」


「……マヤもそんな形で生きるなんて望んでないはずだ……」







「おいしいわ、ここが、らくえんかしら?」


クリームは大きいテーブル席に一人で座り、テーブルいっぱいにケーキを置いていた。


このバイキングで出されるケーキはひとつひとつが小さい。だからいろんな種類のケーキが食べられるわけだ!


「あのこ、すごい量を食べるのね……」ヒソヒソ


「あのちっちゃな体にあれだけは入るのかしら?」ヒソヒソ


「親御さんはいないのかな?」ヒソヒソ


クリームのテーブルにみんなびっくりだ。


「おいしい!おいしいけど……」


周りはみんな家族連れやカップル。


一人で食べるには寂しいものがある……。


2つ隣の席の家族は幸せそうにケーキを囲んでいた。


「よーし、お父さん一杯食べちゃうぞー」


「ほどほどにしときなさい、あなた」


「これすごい美味しそう!ねぇ、食べていい?」クリームと同じくらいの少女がはしゃいでいた。


「………」


「……あれが、かぞく……」


「わたしは…ひとりぼっち……」


「……そっか……おかしだものね、わたし……」







……なんで俺がこんな格好してるんですかねぇ…。


「なかなか、似合ってるじゃないか」


マヤの家の前に着き、俺は医者の格好をさせられた。


「わたしは病気になったので、あなたがその代理、と言う体でお願いします」


「…やっぱり、一緒に行くことはできませんか?」不安だ…。


「…彼女は家に二人以上招くのを嫌がります」


医者のマネゴトはしたことがないな……。


「わたしは、受け入れられるんでしょうかね?


「その時は、次の作戦を考えますよ」


「それでは、確認します。私がさっき言ったことを復唱してください」


「はい、このライトで彼女の目の具合を確認する……そのあと聴診器でお腹の具合を確認……。

後は適当なことを言って、この薬を処方する。」


はじめて持ったぜ、医療器具なんて…。


「ビタミン剤なんだけどね、なにか処方しないと、落ち着かないんですあの人」


「それとマヤさんとは、少女の診察の前に雑談をします。彼女に医学的な知識は全くありませんので、大丈夫です」


「そのあいだに、本命の闇蟲調査もお願いします」


「監禁されている少女の救出も頼むよ、化け物を殺す前に、できれば優先してほしい」


やれやれ、想像以上に面倒になってきたな…。


そして医者は【話機】を出した。


話機は、小型のアーティファクトで、遠くでも会話することができる優れものだ。


だいたいは、耳にすっぽりと入る形で使用される。


「診療に関してはわたしが、これで指示します」


すごい高いんだよな、これ。さすが医者だぜ!


「ちょっと待ってください。そのスーツケースはなんです?」ミグが尋ねてきた。


「あぁ、これは僕の仕事道具ですよ。あなたの医療器具のようなものですな」


「……そうですか、くれぐれも…お気をつけて…」


「……それでは行ってきますよ」俺は彼女の家の前に向かう。


「ちょっといいかい?ハンターさん……」

グッピーが訪ねた。


「……もし、……もしもだ!、もしも彼女がその、闇蟲に侵されて……殺すことしかできないなら……死んだ彼女はどこに逝くんだ…?その汚いやつと一緒に地獄に落ちるのか?……夫のジェイクや娘のリーフと同じ……天国に行けるのか?……」


「…グッピーさん、それはわかりません……。ですが、闇蟲が関わっているのならば、その異常行動もすべて闇蟲の仕業です…。彼女では決してありません。そうなっていたらもうすでに、マヤさんはマヤさんじゃないんです。マヤさんの魂はもうそこにはありません……」


「……そうか、わかったよ、ありがとう……」

グッピーは何かを決断したような顔でそういった。





「さて、行って来ます……」


今、この不浄の館に突入する……。








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