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69話 尊敬し合える仲

69話です!

 尊敬し合える仲

 1


 西島に絵里の件を託した日の夜。

 メールが届いた。


『皆田さんの件は、解決したよ』


 俺はとりあえずその言葉を見て安心した。

 そして、同時に彼の行動の早さに驚いた。

 彼から『任せてくれないか』と言われたその日のうちに解決したのだ。

 本当に凄いと思う。

 それに俺には解決出来なかったことを彼はやり遂げた。

 同時に大きな感謝が芽生えた。


「面倒かけて悪かったな。ありがとう」


 きっと彼は、こういうだろうな。

『面倒なんてとんでもない』

 と。

 そんな言葉が自然に出てくる彼は本当に尊敬する。

 そして、格好いいと思う。


『面倒なんてとんでもないよ……。友達として当たり前だよ』


 彼は、根から良い奴だ。

 人を裏切らない。

 きっとその信頼出来るところが、絵里の心にも届いた。

 そして、解決に至ったのだろう。


「本当にふられる前の絵里は、演技だったのか?」


 ふられる前の彼女が本当に演技だったのなら、今までの思い出は全部偽りだったことになる。

 その事は聞いておきたい。


『僕は彼女に言ったよ。「演じているのは一昔前の自分じゃなくて、今の自分じゃないのか?」って。そしたら最初は反論していたけど、後から本当のことを話してくれて……。彼女が演じていたのはふられた後の自分だって言ってくれたよ』


 その文面を見て俺は、また一安心した。

 そして彼の文はまだ続く。


『彼女が演じていた理由は、ふられた自分を認めたくなかったから。本当の自分が傷つくのが嫌だったからだそうだ。俺も同じ気持ちを味わったことがあるから、その気持ちはよく分かったよ』


 傷つきたくないから。

 自分を守りたいから。

 その為に逃げたり、避けたりするのは人としてごく自然なことだ。

 でも、それをする限り人は前に進めない。

 進むためには、その自分を受け止めなくてはならない。

 きっと彼も同じようなことを絵里に言ったのだろう。

 そして、彼女はようやく現実を受け入れたのだと思う。


 俺は、勉強の時にいつも飲むブラックコーヒーをゴクッと飲んだ。

 そうして一呼吸おいた後に、俺はさらに質問する。


「絵里は人間不信だったのか?」


 俺は、このことについても明らかにしておいて欲しい、と朝のうちにメールを送っておいた。


『本人が言うには、人間不信だったのは確かだけど、高校に来てから次第に信じられるようになった。蔭山君のお陰だって』

「そうか……」


 西島は嘘をつかないし、とても素直なやつだ。

 この内容は恐らく絵里が言った通りの内容。


 だとすれば、俺は絵里に何をしてあげられたのだろう。

 今、思い返してみても思い当たる節は見つからない。

 忘れてしまっただけかもしれない。

 このことは彼女から直接聞こう。


 コップに僅かに残ったブラックコーヒーを飲み干した。

 ちょっと画面から目を離した隙に、彼からさらにメッセージが来ていた。


『それにしても、君は凄いね。周りの人をいい方向に持っていける。そして何よりも誰に対しても優しい。尊敬するよ……』


 意図してやっている訳では無い。

 それが当たり前のことだと俺は位置付けている。

 なぜなら、いじめとか差別とか、そういったことが俺は何よりも嫌いだからだ。


「尊敬される程でもないよ……。当たり前のことをやっているだけ」

『その当たり前のことを当たり前に出来るから凄いんだよ。誰だって、人に好き嫌いがある。だからどうしても平等に振る舞えない。でも君は、平等に振る舞う。どんな生徒にでも、どんな人にでも優しく接する。そんな所は、僕には真似出来ない……』




 確かに、人には好き嫌いがある。

 この人は好きだけど、この人は嫌い。

 あって当然だ。

 なぜなら個性が人にはあるから。

 好みが分かれるのも当然のことだ。


『人は見ただけで好き嫌いを判断する』


 人の殆どはその好き嫌いを見た目だけで判断する。

 が、もしかしたら思っていた人物像と全然違うかもしれない。

 本当はすごくいい人なのかもしれないのに……。


 だから、どんなに嫌いな人でも俺は平等に接し、平等に話す。

 本当の好き嫌いの判断は、その人の全てを知ってからするべき事なのだ。

 だから俺は、どんな人なのか把握するために全ての人を平等に扱い、平等に接して平等に話すのだ。


 選択肢には、絶対の正解はない。

 だから、俺の考えは俺の中の正解でしかない。

 必ずしも平等に接することが正しいとは限らない。




「そんなこと言ったら、俺もお前のこと尊敬しているぞ!誰からも信頼されるし、優しいし、賢いし……。その完璧なところが本当に羨ましい。おまけに顔もいいしな!笑」


 特に彼の賢いところには思わず妬いてしまう。

 勉強しても追いつけない。

 多分、俺よりも努力しているからだろう。

 それだけの努力を重ねられることが凄いと思う。


『お互い尊敬し合える仲っていいね』

「そうだな」

『これが親友ってやつなのかな?』

「かもな」

『きっとそうだよ』


 友達と親友の境界線は分からない。

 その上、友達や親友自体も定義はない。

 だから、『多分』としか言えない。

 だけど……。

 少なくとも俺と西島は、親友なんだろう。


「じゃあ、俺は勉強するわ!おやすみ」

『次のテストも負けないよ!』


 俺は中間で、圧倒的に負けている……。

 次は勝つ!

 そう決めて勉強を始めた。




 始めてから5分後、またもや通知音が鳴る。

 半弥だ。


『明日、暇ならナンパしに行こうぜ!』


 多分、こいつとも親友の仲だと思う。

 だけど、こういう面があるから腹が立つ。

 それに桃山さんと仲良くなったのに、いいのか?こいつ。


 俺は腹が立ったので、笑いのスタンプを送った後にブロックした。

 そして、切れたコーヒーを補充するために1階へと向かった。



次回で7章終了です!

次回に続きます!

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