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Waving Life ~波瀾万丈の日常~  作者: 柏崎 聖
第1シーズン 第1章
6/77

3話 桜花八分咲き

第3話です。たくさんの人に読んでもらって、たくさんの人から感想をもらうことを期待しています。よろしくお願いします!

 

 桜花八分咲き

 1



 今日は日曜日。遊びに行く約束をした日である。

 この町、水山町にある唯一の駅が今日の集合場所となっていた。


 空模様同様、俺の気持ちも曇り。

 あの日以来、ずっと関係が気になったまま日を過ごしてきたのである。

 だがそんな日々も今日で終わりか、と思うと一気に晴れた気持ちになる。


 俺は集合時間の1時間前に着いて彼女が来るのを待っていた。

 大抵こういう時は、少し早めに来るのが当たり前だ。

 だが、それしても早すぎるように思うだろう。

 これには訳がある。


 昨日のことである。

 俺は、家で特にすることもなくゴロゴロしていた。

 ゲームして、勉強して、テレビみて、ご飯食べて、昼寝して……。

 そんなこんなで夜の9時になった。

 明日は大事な約束があるから早く寝ようと、ベッドに入ると喧しい携帯の着信音が鳴った。

 誰からかと確認した。案の定、蘭華だ。



「もしもし?どうした?」

「明日のことちゃんと覚えているよね?」

「当たり前だ!」



 覚えてないわけがない。

 何せ、言い出したのは俺だし、それに関係性を探るまで気持ちが晴れないのだ。

 俺は、ようやく晴れる明日を待ちわびていた。



「1つ忠告ね!」

「なんだ?」

「明日遅れたら1日中奢ってもらうからね?分かった?」

「お前、考えてみろよ。電車で500円、入場料で1000円、食事で1000円。この時点で2500円なんですけど?俺、金欠なんだよ……」

「払えなかったら、この前の件聞かせてもらうからね!」



 こいつ……。まだ覚えていやがったのか。

 俺は仕方なく、



「はいはい」



 と返事した。



「じゃあ、明日楽しみにしてるから……」



 そう蘭華が言うと、電話が切れた。

 蘭華は、明日を楽しみにしていた。

 その事を知った俺は、「関係性を聞くだけでなく、蘭華に楽しんでもらわないとな」、そう思った。




 こういうことがあり、なんとしても遅れるわけには行かなくなったため、今こうして駅前のベンチにずっと座っているのだ。



「ちぇ〜、遅れなかったかぁ」

「あんなこと言われて遅れるわけあるかよ」

「それもそうね」

「俺なら、何も言わずに当日遅れてきたところで、その罰を下したな」

「あーあ。お金を貰って、さらに剣也の秘密も知るという一石二鳥の作戦だったのになぁ」

「お前な……」



 こいつ鬼かよ……。

 いつもはじけている笑顔の下には、とんでもない鬼が潜んでいるのではないか、と疑いたくなる。



「まぁいいや!早く行こ、剣也!」



 いや、良くねぇよ。



 2



 遊園地なんていつぶりだろうか。

 いつしか楽しみを忘れてしまったこの場所に、俺はまたやってきたのだ。

 大きな観覧車がトレードマークのこの遊園地は、聞くところによると再来年の3月に改修工事が入るそうだ。

 再来年の3月というと俺たちの卒業式、そして大学の合格発表がある日だ。

 そう思うとまだまだ先のことにも思えるが時は早く過ぎる。

 それまでに、どれだけ幸運が待っているのだろう。(どれだけ災難が待っているのだろう)


 遊園地の入り口で大人2枚のチケットを購入し、園内へと進む。



 俺たちは、まずジェットコースターに乗ろうと乗り場へ向かうことにした。

 乗り場までは徒歩5分と少し遠い……。が話しでもしていればそうでもないだろう。

 そう思って俺から話題を振った。



「蘭華、ジェットコースター乗れるのか?」

「んー、分かんない。乗ったことないもん」



 え?乗ったことない……。だということはこの乗り物の恐ろしい面をご存知ないと……。

 かなり昔のことだが、昔来ていたこのジェットコースターは怖いと恐れられている。

 昔、何度も乗っていたので怖さを熟知しているつもりだ。


 それでは説明しよう。この遊園地のジェットコースターの恐怖について。


 まず1つ目。地上50メートルから一気に落ちる、その名もフリーフォールだ!ちなみに角度は全国でもトップレベルで急だそうだ。怖い!

 2つ目。途中途中にある急カーブ!右へ左へと体が振られてしまう。怖い!

 3つ目。最後に近づいたあたりにある長いトンネル、名付けてロングダークネス。中に明かりはなく、どちらに曲がるか予想も出来ないところがとにかく、怖い!


 柄にもなくこんな馬鹿なことをしている自分が恥ずかしい……。


 俺はこの恐怖のジェットコースターの説明を乗り場までの間、蘭華にゆっくりと説明した。

 途中から説明に飽きていたが、まぁいいか。


 そしてようやく俺たちは、ジェットコースター乗り場に着いた。

 珍しく今日は空いていたので、すぐに俺達は乗ることが出来た。

 スタッフの指示通り、安全バーを下げて、さぁ行くぞと思って目の前を見ると、ものすごい急な上り坂が見えた。

 すると、何故か足が少し震えていた。


 俺はその事が恥ずかしく感じられたので、隣の蘭華に声をかけた。



「あらかじめ言っておくが、下手なお化け屋敷より怖いからな!」

「ふ、ふーん」

「緊張してるのか?」

「あのさ、剣也だけには言われたくないね」



 そう言って、蘭華は俺の足を指さした。



「こ、これはだなぁ。トイレが漏れそうで我慢するのがやっとで……」

「全然言い訳になってないよ。それと、もしホントなら漏らさないでね。飛び散るから」

「じょ、冗談に決まってるだろ?」

「ふ〜ん」



 俺達がそんなことを言ってると、スタッフが、発車までのカウントダウンをし始めた。



『いってらっしゃ〜い!』



 そしてこの合図で、ジェットコースターはギギギっと音を立てて進み始めた。

 ジェットコースターは次第に坂を登っていく。

 そっと下を覗くと、どんどんと人が小さくなっていくのが見える。

 観覧車に乗っているのと、さほど高さは変わらないが、ジェットコースターはすごく怖く感じられる。

 あれ?ジェットコースター苦手になってないか?

 これでも昔は、1日に3回もぉぉぉぉぉ……。


 ジェットコースターは頂点をすぎ、客が悲鳴と歓声をあけながら一気に急降下した。

 凄まじいスピードで駆け巡り、先頭だからか、顔に春の嵐のような強風がぶち当たってくる。

 右に左に体は振られ、宙ずりになったりトンネルをくぐったりと、超高速のジェットコースターは気付けば、元のスタート位置に戻ってきていた。


 気持ち悪いのを抑え、隣を見るとそこにはいつもより楽しそうな蘭華の表情が見えた。

 気持ち悪くなったけど、そういう表情を見られたから良しとしよう。



 3




「ったぁ!面白かったー!」



 楽しかったなら何よりです。

 乗り場近くのベンチに座りながら、そう思った。



「気持ち悪い……」

「ほらね。やっぱりジェットコースターに弱いんじゃない」

「昔は強かったんだけどなぁ」

「昔は昔。今は今。でしょ?」



 俺はため息をつき、目を瞑って背もたれに背中を預けた。

 ふぅ、と息を吐き再び目を開けると、目の前に見覚えのある人が立っていた。



「あ……、えっ!?」



 俺は驚いて気持ち悪さを忘れ飛び起きた。



「ん?君は確かこの前コンビニにいた……。それに蘭華まで一体どうしたんだ?」



 狭間 美玲。俺たちの1つ上の先輩。

 はっ!思い出した。

 当初の目的、先輩と蘭華との間柄を聞くということを。



「あれ?狭間っち!どうしてここに?」



 どうもその呼び方からすると、かなり仲良いんだろうな。

 でも本当にどういう関係なんだろう。



「たまたま通りかかったのでな。あ、悪い。お前たちの大事な時間を割くわけにはいかないな。私は失礼するよ」



 え?とんだ勘違いしてますよね?

 別にカップルなんてことはないですから!

 まぁ、悪い勘違いではないけど。



「分かった。またね、狭間っち!」



 蘭華がそう言うと、先輩は早々とこの場を去った。

 俺はそれを見届けた後に、蘭華に話を振る。



「あのさ、蘭華ってあの人とどんな関係なんだ?」

「狭間っちとの関係?んーとねぇ……」



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