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25話 緑色宝玉

25話です!


 緑色宝玉

 1


 旅行2日目。

 亜熱帯特有の暑さが、体力を蝕んでいた。

 朝6時に起きてからわずか3時間の間に、半日分くらいの体力を消費していた。

 今日はホテル近くのビーチで海水浴をする予定である。

 俺にとって海水浴は天敵で、一番やりなくないことである。

 女の人ではないが、日焼けが嫌なのだ。

 白い肌が焼けて、真っ黒になる。

 そしてそれが原因で痛い思いをするのがたまらなく嫌である。

 そのため夏に外に出ること、ましてや砂浜の上など行きたくもない。

 だが、せっかくの旅行だ。

 当初の予定を変えさせるのも何か悪い気がしたので、俺は渋々ビーチへとやって来ていた。


 午前9時。

 朝早くにも関わらず、たくさんの人で賑わっていた。

 それぞれ水着に着替えた俺達は、海の宿に荷物を置いて砂浜へと向かった。

 半弥、蘭華、絵里の3人は一目散にエメラルド色の海へと入っていった。

 だが、それに反して俺と先輩は持ってきた日傘の下にビニールシートを敷いて座っている。

 先輩曰く、


「人が多いところでワイワイするのが苦手だ」


 ということなので、俺と先輩はここで3人の姿を眺めていることにしたのだ。

 沖縄と言えば海と言っても過言ではないくらいに、海の透明度は素晴らしい。

 その中で楽しそうに泳いでいる3人を見ると、より一層美しく見える。

 …?

 1人男だった。笑。

 その唯一の男の半弥は、何故かキョロキョロしていた。

 大方、可愛い女性を探しているのだろう。

 本当に残念なやつだ。

 と、まぁ色々考えながらボーッとしていると横の方から声が聞こえた。


「蔭山…」


 先輩もどうやらこの暑さは苦手らしく、だるそうにうつ伏せになっている。

 水着の先輩は普段よりも胸が大きく見えて、より大人っぽい印象だ。

 だが、だるそうな声を聞いてその印象はガタ崩れだ。

 それほど暑いのだ。


「どうしたんですか?先輩」

「暑い…」

「そんなこと、誰しもが重々承知ですよ」

「どうにかならないのか?」

「なれば苦労しませんよ」

「このダルい気持ちを少しでも変えようという気持ちはあるか?」

「どういう事ですか?」

「何か話をして、気を紛らわそうと思ったのだが、名案だと思わないか?」

「賛成です」


 俺が賛成すると、先輩はうつ伏せの状態から体を起こして、俺と同じように体育座りをした。

 視線は俺と同じように、海辺で遊ぶ蘭華と絵里に向いていた。

 もう半弥なんて知らない…。


「結局、何も聞いてないが」

「何をですか?」

「皆田とはどうなった?見たところいつも通りに見えるが」


 いつも通りに見えるのは、俺たちが2人でそうしていようと決めたからだ。

 折角の休みをギスギスした感じで過ごしても…、とも思ったからである。


「結果としては、まだ解決してません。先輩のアドバイスを参考にしてみたのですが…」

「そうか…」


 先輩はそう言うと、急に黙った。

 そして視線を足の方へと移した。


 2



「実は、私の判断ミスだったんだ」


 暫く続いた沈黙を破ったのは、突然の先輩からの言葉だった。

 判断ミスとは何か、俺には分からなかった。

 だから、先輩がこの後に続ける言葉を待つことにした。

 俺が、言葉を発さないと判断した先輩はすぐに言葉を続けた。


「私は蔭山の意見を通すようにアドバイスをした。だけど、どちらとも間違えではない答えを、無理やり片方の答えにしてしまうのは間違いだ。その答えを知っているのは、問題を作った本人のみだ」


 そう言うと、また沈黙が流れた。

 そしてそれを破ったのは又しても先輩。


「遠回しな言い方をし過ぎて分かりにくかったかもしれない。具体的に言えば蔭山の考えは、蘭華自身は背中を押してほしいと考えているから押すべきという考え。皆田の考えは、蘭華自身は心のどこかで止めて欲しいと考えているから止めるべきという考え。このどちらが正しいかなんてそもそも本人以外が考えても分かるはずなどないんだ」


 つまりこの問題の結論を出すためには…、


「本人に聞くしかないって事ですね…」


 それしかないのだ。


「そういう事だ」


 話を分かってくれた様子を見せると、先輩は安心したように、体勢を崩した。

 少しは気を紛らわせられたのか、暑そうな素振りも見せなくなった。

 答えに一歩近づけた。

 でも何の解決にも、まだなっていない。

 本人に聞いても、本心が返ってくるとは限らないからだ。


「でも、心を開いてくれますかね?」

「それは君にしか出来ないよ」

「どういう事ですか?」

『剣也〜!』


 蘭華が海の方から呼んでいる。


「ほら、可愛い彼女がお待ちだよ」

「彼女じゃないです!ってもしかして…」

「行ってらっしゃい」


 と言うと、先輩は立ち上がり俺の腕を掴んで立ち上がらせた。

 そしてそのまま海の方へと放り投げる。

 投げられた勢いのまま俺は蘭華たちの待つ海の方へ走っていった。

 あ、日焼け…。

 まぁ、いっか!

 俺はその後、沖縄の美しい海の中で思う存分楽しんだのだった。


 先輩に助けられ、ようやく解決の糸口を掴んだ。

 だが、その為には蘭華に心を開いてもらう必要がある。

 彼女に気を遣われていては意味がないからだ。

 俺は、この新たな問題に直面した。

 例え、この問題が難しくても解かなくてはならない。

 蘭華のために。



次回をお楽しみに!

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