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Waving Life ~波瀾万丈の日常~  作者: 柏崎 聖
第1シーズン 第1章
14/77

11話 花鳥風月

 

 花鳥風月

 1



 あの日から数日経った土曜日だった。

 俺はまだ、絵里から何一つ説明を受けていなかった。

 一体どうすればいいんだ……。

 そんなことを思っていると、突然メールが来た。



『ごめん。準備に時間かかって……。でもようやく終わったよ』

『結局何をするつもりなんだ?』


『剣也君。蘭華ちゃんと幼馴染なら、気付かない?明日、何の日?』



 俺は、記憶を呼び起こした。



「明日は……」



 自分の部屋に1人でいた俺は呟いた。

 明日は、何の日か……。

 5月20日……。


 俺は、はっとした。

 明日が何の日か思い出したのだ。

 すぐさまメールを返す。



『蘭華の誕生日だ!』

『正解』


『その誕生日に何をするんだ?』

『誕生日にすることなんて、決まってるでしょ?パーティーだよ』


『パーティー?』

『うん。蘭華ちゃんに思いっ切り楽しんでもらおうと思って。きっとその中で、剣也君と話す機会も出来ると思ったの』


『その準備をするために頑張ってくれていたのか。何度感謝しても足りないくらい感謝してる。本当にありがとう!』

『うんうん。私がしたいからしてるだけ。2人には仲直りしてほしいから』



 俺はその文を見て、感謝と同時に尊敬の念が生まれていた。

 他人のために頑張ってくれるなんて、なんてかっこいいんだろう。

 俺はそう思った。



 その後は、明日の予定や色々な打ち合わせをして。

 終わったら、明日に備えて俺たちは眠りについた。

 と言っても、パーティーは夕方からなのだが……。



 2



 時間は流れて、パーティー当日の夕方。

 俺は先に来ていた絵里と、パーティーの準備をしていた。

 ちなみにパーティーの会場は……。俺の家だ。



「こんな感じでいい?」



 俺の部屋を飾り付けしている絵里は、そう言った。



「バッチリだ」



 部屋は、色紙の飾りで彩られている。

 この飾りは、全て絵里が企画して材料も集め、作り上げたものだ。

 本当に感謝、尊敬の気持ちでいっぱいだった。



「後は、ケーキを持ってくるだけかな。私、持ってくるね!」

「いや、当の本人来てないし、それに後で俺が持ってくるよ」

「分かった」



 絵里は、準備が終わって満足気な様子で、俺の勉強椅子に腰掛けた。

 俺も、準備で疲れたので床に座り込んだ。



「ふぅ〜、終わったぁ〜」

「お疲れ様。本当にありがと」

「昨日も言ったけど、私がやりたいだけだから感謝されるようなことしてないよ?」


「絵里のすぐに行動できるところ、羨ましいな」

「いやいや、そんなことないよ」



 そう言って、絵里は照れた様子で言った。



「俺、自分が嫌いになった」

「どうして?」

「俺がもう少しまともで、実行力があればすぐに解決できたことなのに。他人に頼ってばっかりで自分から行動出来ない、そんな人間だからさ……」



 あの日、彼女に拒絶され俺は、話しかけることを恐れた。

 でも、そんなことをしていても解決出来ないと知っているのに……。


 何も出来ず、どうしようかと考えていた時に絵里に声をかけられた。

 そして、俺はその優しさに甘えて彼女を頼った。


 自分で起こした問題なのに、解決出来ないなんて。

 俺はそんな自分に、無力さを強く感じていた。



「剣也君……。それは違うと思うよ?」



 絵里はすっぱりと俺の言ったことを否定した。



「他人に頼ることって悪いことなわけがないじゃん。人ってさ、どんな人でも1人じゃ生きていけないよ?」



 言われてみればその通りだ。

 自分1人で生きている人はいない。

 赤ちゃんや子供は親を頼り、成人したあとも親だったり、配偶者を頼って生きている。

 それを思えば、俺の選択は間違ってないのかもしれない……。



「そうかもしれないな……」

「そうだよ。それに、自己嫌悪しすぎだよ?そんなの自分で自分を苦しめてるだけじゃん」

「確かにそうだな。もう止めるよ」

「うん。それがいいよ!」




「あのさ……」

「何?」

「これからも頼ってもいいか?」

「うん!もちろんだよ!私は、剣也君の友達なんだから!」

「ありがとう」



『ピーンポーン』



 俺達の会話が終わった瞬間、インターホンがなった。

 蘭華だろうか……。



「私が出るよ!」

「いや、俺が行くよ。自分の家だし」



 俺は階段を降りて、玄関に来た。

 玄関の扉の前に立っていたのは、蘭華ではなかった。

 剣の女王だった。



「こんにちは」

「こ、こんにちは」

「悪かったな……。君に大きな責任を追わせてしまって」

「いや、ちょっと事情があって……」

「い、いえ……。全部俺のせいですから、先輩は気にしないでください」



 先輩は、申し訳なさそうにこちらを見ていた。



「ところで、先輩は俺に謝るためにここに?」

「いや、蘭華の誕生会に呼ばれてな。君のクラスメイトの皆田さんに」

「あ、そうでしたか。どうぞ、上がってください」



 俺は先輩を連れて、2階へと向かった。



 3



 部屋で待機していた俺は、3回目のインターホンで再び玄関に向かった。

 2回目ではないのか……。そう思うだろうが、2回目は半弥だった。

 だが、話が長く少しイラッときたのでここは割愛させていただきます。



 玄関に立っていたのは、今日の主役だった。

 淡い赤のワンピースに、白のヒラヒラとしたスカート。

 いつもより一層可愛らしい服装をしていた俺は、少し見とれていた。


 俺は口をなかなか開けなかった。

 それは、彼女の服装に見とれていたからだけではない。

 2人の間に流れる不穏な空気が、俺が口を開くのを邪魔していたからだ。



「ごめん、剣也」



 蘭華が、口を開いた。

 そして申し訳なさそうに、言葉を続けた。



「私が変わらないままがいいって言ったのに、喫茶店であの光景見てから、剣也を敬遠してた」


「……」



「本当にショックだった……。幼馴染の私が、剣也と1番長くいた私が、剣也に選んでもらえなかったことに……」


「あのさ……」

「?」



 俺は、彼女の話を止めた。

 勘違いだと言うには、このタイミングが相応しいと思ったからだ。



「勘違いだよ」

「え?それって……」



 驚きの表情で、蘭華は俺を見つめた。



「この前のあれさ……。たまたま、先輩の方から話があるって言われただけで、別に付き合ってるわけじゃないよ」

「ほんと、に?」



 蘭華はまだ疑っている様子だった。



「本当だ」



 俺がそう言うと、蘭華の表情は少し緩んでいた。

 ほっとしたらしい。



「私の勘違いだったんだね……。なのに、なのに……。こんなことしちゃって……、本当にごめん」

「蘭華……。過去は過去だよ。何をしようと変えられない。これから楽しめば、それでいいんだよ!」

「そうだね……。これから、今までの分楽しめばいいんだよね」



 蘭華の表情に、ついに笑顔が戻ってきた。

 俺も安心して顔の緊張を解いた。



「蘭華……」

「何?」

「お誕生日おめでとう!」



 俺はまだ言っていなかったお祝いの言葉を蘭華にかけた。



「……、ありがとう。でもさ、剣也より歳とっちゃったね……」



 蘭華は、クスッと笑う。

 俺の誕生日は12月。

 実はこのセリフは、蘭華の誕生日の度に蘭華が言うという恒例になっていたのだ。



「誕生会、始まるよ!」

「何か、絵里ちゃんにも迷惑かけちゃったね……」

「きっと蘭華が楽しんでいる様子を見れば、絵里は喜ぶと思うぞ!」

「そうだね」



 こうして俺たちは、復縁した。

 幼馴染という心の支えが帰ってきて、俺の心にあった嫌な気分は、ようやく晴れた。



「よし。行くか!」

「うん」



 俺たちは揃って誕生会の会場、つまり俺の部屋へと向かった。



 4



 私のために開かれた誕生会は、10時頃にお開きになり、私は片付けをした後に剣也の家を出た。


 街灯があるにも関わらず、あまり暗くない道をゆっくり歩いていく。

 剣也の家から私の家までは遠くなかった。



 私は心の中に、暖かいものを感じていた。

 誕生会を開いてくれて、こんな楽しい思い出も作ってもらった。

 私は感謝の気持ちでいっぱいだった。



 だが、それよりも強い気持ちがあった。

 今日の出来事によって感じた、大きな憤りだった。



 きっとあの人は、何とも思っていないはずだ。

 自分がやっている、とても()()な行為をあの人は自覚していないだろうから。


 私は、そんな憤りを表に出さないようにして、自分の家の扉を開けて中へと入っていった。






 夜の空は暗くて見えない。

 だが、この辺の地域は市街地。

 街の明るさで、多少空の雲が見えていた。

 今の上空は、雲ひとつ無い。

 だが、西の方角を眺めると見えるのは、夜空のようにどす黒い雨雲の塊。


 それを見る限り、この先、天候が大きく変わるのは避けられそうになかった……。



途中途中、文章がおかしいとかんじたりするかもしれませんが、仕様の場合がありますのでご了承ください。

現在編集中ですので、この後にある話数の内容が繋がってなかったり、話数が飛んでいたりします。

そのため、更新時刻をご確認の上で読んでいただけると幸いです!


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