日本人形
怪談なんていかがでしょうか?
あまり怖くも無いし話がつまらない、 そう思うかもしれませんが温かい目で(怪談なのに温かくていいのだろうか?)読んでください。
僕の夏休みの話でした。
俺の実家に遊びに行く。
そう言った父に連れられ田舎の父の家に来ました。
僕は最初、 とてもつまらないだろうと思いました。
だって父に聞いた話だと何もない所だとしか聞いていなかったからです。
「よ〜し! 探検だ!」
来て見てまるで違いました。
魚が泳いでいそうな小さな小川に虫がいそうな林。 僕の興味を引くものがこれでもかとあります。
その中でも父の家にある小屋でした。
木製で二階建ての小屋はボロく、 いかにも昔からありそうな立ち振る舞いでした。
「ゲホッゲホ、 埃臭いな」
僕は面白いものがないか気になり小屋に入ることにしました。
案の定小屋の中には昔の道具が多く、 お釜や紙の傘、 古そうなコーヒーメイカーなどが置いてあり。 僕にとってまさしく宝の山でした。
「これはなんだろう?」
二階に登った時でした。
一歩歩くごとにギシッギシッ、 と床が悲鳴をあげる中奥に行くとそれがあったのです。
「日本人形?」
そこには四角形のガラスに入った紙の長い日本人形がありました。 浴衣は赤く、 顔が真っ白の日本人形はどこか怖さを感じます。
一瞬触りたい。 そんな衝動に駆られた僕は一歩踏み出しました。
「!」
ですがそれから先が進みません。
日本人形と目が動き、 僕の目とあったような気がしたからです。
「い、 いやいや! 人形なんだし? 疲れたな! 帰ろ!」
僕はそそくさと一階に降り、 家へと帰りました。
「坊、 小屋は楽しかったか!」
家に入ると、 顔を真っ赤に染めながら爺ちゃんが聞いて来ました。
ちゃぶ台の上には酒が置かれて降り、 どうもひっかけていたようです。
「楽しかったよ! あと爺ちゃん、 小屋の奥の日本人形? あれってなに?」
「? そんなもん確か無かったが、 なんだ坊! 気に入ったのか?」
「いやいや! 怖くって」
ガハハ! 爺ちゃんの笑い声が部屋に響きます。
「なら明日俺もみるか! 一緒に見に行こう! な!」
「う、 うん」
爺ちゃんは機嫌を良くしたのか、 酒を飲みながら歌い始めてしまいました。
だけど困ったな。 あんな物もう見たくないんだけど。
夕飯も終え、 風呂も入り、 もう寝るだけとなった僕は、 始めて布団で寝ることになりました。
ベットと違い床に直接敷かれた布団は少し硬かったです。
「おやすみ」
父ちゃんがそう言い、 電気を消しました。 その消すのも面白く、 ヒモを引くと消えるものです。
真っ暗な中、 今日の出来事を思い出しました。
美味しい空気に面白い場所の多い遊び場、 ここは最高の場所でした。
明日はなにをして遊ぼうか、 そんな事を考えながら僕は眠りにつきました。
「あれ? ここって?」
僕はふと気づくとよくわからない場所にいました。
辺りを見渡すと、 どうもどこか高い所にいるようです。
「ここ、 どこ? あ! 僕寝たんだ! これは夢か!」
最初よくわからない場所に僕は不安を感じました。 だけど寝ていたのを思い出すとそんなものどこかへと消えてしまいました。
『 夢 』。 そうわかってしまうと怖くありませんでした。 僕はこのよくわからない場所を探検するべく、 歩き出しました。
「うわ、 なんだこれ」
階段を見つけ、 降りてみると長い廊下が続いていました。
至る所に色々なものが転がっており、 足の踏み場がまるでわかりません。
ただこのぐらいで僕は冒険は終わらない!
踏めるか踏めないかギリギリの所に足を置き、 ゆっくりと進んでいきます。
ここは病院なのか? そう思ったのは床に壊れた注射器や車椅子、 メスなどが落ちていたことからでした。
時々ある部屋を覗くと破れたカーテン、 ベットから病院という確信がなんとなく着きました。
廃墟の病院。
これ以上都内ほどワクワクしました。
ですがそれ以外のものはなにもなく、 階段を降りては見て回り、 階段を降りては見て回りを繰り返すと、 すぐに一階に着いてしまいました。
「なんだ、 面白いものなんてなかったな」
期待とは裏腹に、 ただものが落ちているだけで、 これといって面白いものはありませんでした。
ふと、 登って来た階段を見ました。
するといつの間にできたのか、 地下へと続く階段ができているではありませんか。
「! なんて興味湧く場所だろう!」
駆け足で地下の階段を目指します。
階段の入り口は薄暗く。 まるで地獄の入り口といっても過言の無い場所でした。
ゆっくりと、 降りるごとに埃臭さや足音が響きます。
「うわ、 電気がまるで無いや」
地下へ降りるとそこは上と変わらない、 今までの通路が伸びていました。
ただ上とは違い、 薄暗く、 奥がよく見えないこの廊下は今までよりも遥かに面白そうでした。
ギィー、 ギィー
遠くから聞こえる音に、 僕は体を強張らせました。
今まではなにも無い場所で、 音なんて僕の足音と声だけでした。
何かがやばい。
僕の中の何かがそう警告します。
すぐ横に掃除用具をいれるロッカーがあったのが救いです。
ギィー、 ギィー
どんどんと近づく音から逃れるべく、 僕はすぐそのロッカーへと入りました。
ギィー、 ギィー
だんだんと近づいて来ます。
ギィー、 ギィー
ギィー、 ギィー
ギィー、ギ・・・
やばい!
音が目の前で止まりました。
バレたのか? いやでも静かに入ったし、 見つかるなんてそんな。
ギィー、 ギィー
また聞こえたその音に僕はホッとしました。
ガタン
安心したためか、 体が動いてしまい箒にぶつかりました。
! やばいやっちゃった!
ギィー、 ギィー
どうやら気づかれていないのか、 音がどんどんと遠くなっていきます。
助かった。
ガチャ
ロッカーが突然軽く空きました。
ゆっくりと動く扉にギョッとすると、 今すぐ出ていきたい気持ちになりながら強く目を瞑り起きることを願います。
起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ
「・・・ママ」
ママ? 頭が真っ白になる中、 硬い目を開きました。
そこには朝見つけた日本人形が僕と同じ大きさになって立っていました。
「ママ」
「ま、 ママ?」
「ママ、 ママ」
その人形はただずっと僕の目を見て来ます。
その目は黒じゃなく赤く光っていました。
「!」
動かない人形の手を見ると、 鎖が伸びています。
その鎖をたどっていくとそこにはぐるぐる巻きになっている棺桶がありました。
多分さっきの引きずるような音はこれなのでしょう。
「ママ」
「! やめてよ」
人形はゆっくりと手をあげます。
すると動けない僕の腕を掴もうとゆっくりと近づいて来ます。
「ママ、 ママ」
やめてくれ! そう言おうと思ったら、 もう口すら動きません。
「ママ、 ママ」
やめてくれ、 触らないでくれ。
「ママ、 ママ」
あと数ミリで手がつく時でした。
「ママ・・・どうして」
どうして? 始めて違う言葉に驚きながらも耳をそばだてます。
もしかすると助かるかもしれない。 そう思ったからです。
「どうして、 殺したの?」
冷たい物が僕の手を掴みました。
「どうして、 どうして」
「お前も殺す」
「ギャアアアァァァァァァァァァァ」
悲鳴と共に目覚めました。
やっと夢から覚めることができ、 ホッとしました。
「怖かった、 なんだよあれ、 なんなんだよ」
一瞬の安心の後、 尋常じゃ無い心臓の鼓動と共に体が震え始めます。
? 痛い?
腕に何か痛みが走りました。 布団をめくり痛みのある手を見ました。
そこには人の手形状に着いた痣のようなものが付いていました。 まるで何かに助けてもらえなかった、 そんな恐怖からくる後でした。
その痣に夢ではなかったのか、 そう思いもしましたが確かに僕は起きた。 ならこれは一体?
「ママ、 あの子逃げちゃった」
え?
どこからともなく聞こえた声を最後に僕は意識を手放しました。