93話 《剣》。気ままに育成中
当事者は気ままでいられない。鬼畜使用
頂上まで登った時俺に抱えられているだけだった奴らが虫の息だった。
「情けないな」
「ルっ、ルーデル卿は化け物ですかっ⁉」
人間にこんな事出来ませんと叫ばれるが、
「俺人間じゃないけど」
何言ってんだ。
「あっ…⁉」
忘れてたな。この反応は。
「じゃあ、私達の出来ない事が出来て当然……」
「――身体能力は人と変わらねえぞ」
何言ってる。
どちらかというと色素欠乏症だから身体が弱いと散々言われてきたんだぞ。
「人二人抱えて、石段登って言うセリフですかっ!!」
「何を言う。俺の鍛えた輩はそういう奴が多いぞ」
最低限の力で最大の効力を出す。そういう育て方したからな。
「………」
「……変人が多いんですね」
何言ってんだ。
「今からお前らもその仲間になるんだぞ」
「「やめて下さい!!」
心底嫌だと叫ぶが、
「お前らに拒否権は」
一度区切り、にやりと笑って、
「ねえよ」
断言。
「……分かりたくないけど、分かります」
「拒否権ないんですね。やっぱり」
何泣いてんだ。
「安心しろ。――すぐにそんな事思っていた自分がどうかしてたに変わるから」
「それ洗脳っていう奴じゃないんですかっ!!」
「マジ止めて!!」
ああ。懐かしいな。こうやって抵抗していた輩も多かったな――ちなみにゲオルグもそうだった――そういう輩を締め上げ、鍛えて、育て上げたときに感動はひとしおだったな。
「まあ、今日はこれ位にしておくさ」
締めるだけじゃだめだ。時に甘やかして、自由にさせて、自由にさせた事が逆に不安になっていき、俺の訓練が無いと不安になり、自由にしていいと言いつつも同じ事を自主的に行うようになる。そう、それを行い鍛えるのが当然になると真の訓練は終了する。
「本当ですか⁉」
不安そうに聞いてくる元副官。
「裏。ありませんか……?」
疑いに掛かってくる天都の新兵。
つくづく面白いなと思いつつ、
「今日は初日だ。走り過ぎると無理がたたるからな」
そう告げると二人の動きを確認する。
これで走り過ぎじゃないと……不安を宿らせている副官にさすが、エーヴィヒの訓練は大変だなと納得している天都の住民。
元々の性格か国民性か。まあ、
(これで副官の心に変化が生まれればいいが)
天都の住民をどこか低く見ているこいつに、天都の住民の指導なんて、どこかおざなりであったのだ。
信頼してないという心がありありと見て取れて、教えるために努力するというのが感じられない。だから、帰した方がいいと決めたのだが、
(こいつと交流して考えを改めればいいが)
友情でも対抗心でもいい。
何か心に触れれば、進化に繋がるだろう。
副官という俺の補佐する立場であったから全体を見ようとして些細な事と見ないでいたかもしれない。
そんなこんな考えつつ、さて次は何しようかと企んでいた。
リヒト「……」
弟さんは諦めモードです。




