92話 《剣》。地獄のしごきを始める
女性の方が怪力なのが結構好きです。(例モルジアナ)
「足が止まっているぞ」
にやにや
天都にある石段に登って後から続いているそいつらに声を掛ける。
ひぃひぃ
ぜーぜー
肩で息しているのは、目を付けた天都の新兵と元副官。その背中には砂を詰めたカバンを背負わせている。
「だらしないな……」
「だって…重い……」
持っているのもやっとだと告げてくるのを見て、ほんと情けないとため息をつく。
「人にやらせるのなら自分でもやれば……」
元副官が生意気にも言い返してくるな。
ほんと情けない。
そう思い、来ていた上着をそいつにぶつける。
「なっ…⁉」
それをぶつけられてその重みに悲鳴を上げる。
「なんだこれっ⁉」
重い!!
悲鳴を上げるそいつににやにやと。
「装備の標準だ。これに武器も持つともっと重いぞ」
お前軍所属だろ。それくらい当然知っているよな。
「えっ、あっ!!」
…………………………知らなかったらしい。
(ゲオルグ。どんな育て方をしたんだ)
因みにその当の本人は海の向こうで、
『えっ、その方が育てがいあるでしょう』
と面白がっているのをだがまあ知らない。
「その砂袋でひいひい言っていたら俺の訓練ついていけないぞ」
青ざめる二人。その顔には今から止めれないだろうかと書いてあるが逃がすと思っているのか。
あっ、逃げてもいいか。(地獄の)鬼ごっこで鍛えてもいいし。
「なんか怖いこと考えてませんか………」
鋭いな。まあ、鋭くなければ育てがいもないがな。関心関心。
「――で、逃げないのか?」
逃げたら逃げたで面白そうだからさっさと逃げろよ。
「脱走を進める人がいますか?」
「ここにいるぞ?」
自分を指さして告げると、
「誇らしげに言わないで下さい……」
と、声が返ってくる。
「反応悪いな。で、どうするんだ?」
これから?
尋ねると。あきらめたように死んだ魚の目で。
「このまま続行します……」
と返してくる。
「いい覚悟だな。じゃあ、さっさと階段上がってこい」
そう告げるが、動かない。
どうやら体力が尽きたようだ。
「ほんと情けないな」
そうつげるとひょいっとその二人を軽々と抱えて石段を上がっていく。因みに、俺の体格で持ち上げられるのはかなり負担が来るモノで自分が落ち着いて掴まれるような状態にするだけでもかなり訓練になるからしたのであって気を利かせたわけではないが。
(あらあら)
男のプライドをズタズタにしたのを感じてやり過ぎたなと少し反省したのだった。
訓練? いいえ、調教です。




