91話 《盾》。老齢の部下と言葉遊びをする
姉の苦労弟知らず
「――さて」
老齢の部下がにやにやと笑っている。
思い出し笑いをしている。
「どうしたんだ?」
まるで姉さんが悪だくみしているしている時のそれに似ている。
「いえ……使えない部下をルーデル卿に押し付けましてね」
「使えない部下って……」
姉さんが怒るぞ。
「何をおっしゃりますか。――ルーデル卿は嫌がるどころか喜々として鍛え上げるでしょう」
「………」
あり得る。姉さんはそうやって使えない兵士をどうしてこうなったという様に見事な兵士に仕立て上げ――ただしドM――戦場で武勲を立てて戻ってくるようになる。
「否定できないな……」
「ルーデル卿の手腕は素晴らしいものですからな」
姉さんの信者は戦闘では使えるがドM。
「……お前もその一人か?」
知りたくなかった。すごく頼りになる部下だと思っていただけなのに。
「いえいえ。私など信者の足元にも及びません」
なんだその気持ちの悪い光悦とした表情は。
「………」
突っ込まない事にしておこう。身の危険を覚える。
軍人は知識も必要だが勘に頼る事も必要だと姉さんの教えもあるからな。
「そういえば、ルーデル卿直々に育て上げた方々はドMになるかドSになるか極端に分かれるんですよ」
ぼそっ
聞こえない。聞こえない。
「第5番隊は見事にドSに染まりましてね」
あ~あ。聞こえない。聞こえな~い。
「ルーデル公がそれを言いますか」
「…………………認めたくないから聞こえないふりしていたんだが」
聞こえないふりをし続けても効果ないので――こいつは絶対ドSだ――仕方なく言葉を返すと。
「おや。すみません」
それはそうと。
「賭けませんか? 使えない部下をルーデル卿が育て上げてどちらに転ぶか?」
「――途中で逃げたら?」
「まさか」
「ああ。愚問だったな」
姉さんが逃がすわけないな。
「ドsに目覚めたら面白いな」
「では痛みに快楽を覚えるドMになるにしておきましょう」
そうして。
賭け事は成立した。
賭け事やらない正確に見えた? 姉のいないところでは悪さはしてます




