78話 《剣》。ホームシックに掛かる
フリューゲル天都に行く。
「到着っと…」
神地――天都の港。
「話には聞いていたけど……」
数人の部下とともに軍艦を降りるが、
「人外がいっぱいだな……」
イーシュラットの幻獣達とはまた違う感じだ。
「――お待ちしていました」
港には、烏丸と不思議な乗り物。
「牛車です」
牛車……。
牛が俺の知っている牛と大きさが違うんだが……。いや、それよりも、その牛の後ろにある車。火を出してないか。
「火車ですから」
……リヒト。この国では火を噴く車があるんだぞ。
つい、心の声で弟に呼び掛けてしまう。
マーレやテッラの様に通信できる能力はないが。あればいいなと思えてしまう。
――現実逃避をしたくなったのだ。
「さあ、参りましょうか」
さわやかな笑顔だな。うん。その近くに北の巨人とまた違った感じの巨人と一つ目の人外が居なければ。
あっ、そこの首が異様に長いお姉さん。腕に絡み付くのやめてくれませんか。
「駄目ですよ。お絹さん。この方はお客人ですから」
「ええっ~。でも綺麗だからもっと一緒に居たいのに~」
「後でゆっくりと。ですよ」
「仕方ないわね~」
後でって、あの…俺の意見は。
ごめん。リヒト。国の為だとかっこつけてこの地に来たけど、帰りたい。
取り敢えず首の異様に長いお姉さんは諦めて去ってくれたけど、その際投げキッスをされた。
「えっと…」
「すみません。美しい人を見ると性別問わず見境ないので」
聞きたくなかったんですけど……。
「俺帰っていい?」
「大丈夫ですよ。礼節は弁えてますので。――帰られたら困ります」
その言葉が信用できないんだけど。ってか、後半ドスが聞いてたよ。
「………
まあ、着たからには最後までお仕事するけど。
色々と不安だ。
「慣れて下さい。天都は……神地はこういう方々が大勢いますので」
天都だけじゃないのか。
ようやく陸地で寛げるかと思ったけど。そんな事にはならないようだった。
はぁ~。
火車のイメージ=パンジャンドラム




