62話 《剣》。階段に登る
誰よりも男前のフリューゲル(もう性別フリューゲルでいいんじゃない?)
透明な階段。
「……っ!!」
青褪めて――安全だとは理解しているが、怖いんだろう――なかなか一歩踏み出せない。
近くにいたエリーゼのその様子に気付いて、
「一緒に行くか?」
と声を掛ける。
「フリューゲル……」
ありがとう!!
ぎゅっ
力一杯抱き付かれる。
……どうでもいいが、さり気無く胸を揉むのはやめて欲しい。そんなんだから同性愛者というだけで偏見の目で見られるんだと思うが。
それにしても兄はどうしたんだ?
妹がピンチなんだから助けてやれよ。
それに比べてリヒトはしっかりしてるな。びくびく怯えてるマーレを支えて進んでいるな。うん。流石俺の弟(姉バカ)。
そういや、テッラは……。
あっ、居た。
あっちも恐々と進んでカナリアが支えてるな。
……鍵の所有者って、以前はアルシャナじゃなかったかな? 何で、その以前の所有者が恐々してるんだろう。
うん?
「よお。大丈夫か?」
腰を下ろして恐々進んでいるどこぞの象徴を見つけて声を掛ける。
「煩いです!!」
「偉ぶっているのにまさか『こんな階段が怖いです~!!』なんて言えないよな。シュトルツ」
まさかこれが怖いのか。ったくこれだからお坊ちゃんは。
「怖がっているシュトルツさんも萌え~!!(シュトルツさん。大丈夫ですかっ!!)」
「ジェシカ……。逆になってるぞ」
いつもの事だけど。
「あらっ、しまった!!」
慌ててるけど。お前の本性はバレバレだから。
「どうでもいいけど、行けるか?」
シュトルツに尋ねると、
「大丈夫に決まってます!!」
と慌てて立ち上がるが、
「おいおい。生まれたての小鹿になってるぞ!!」
大丈夫かよ。
「………」
もう反論出来なくなってんぞ。
仕方ないな……。
ひょいっ
片腕で――エリーゼがもう片方の手を持っているからな――シュトルツを引っ張り上げ――力加減を間違えると関節が外れるので気を付けている――立たせる。
「仕方ないから掴まってろ」
面倒だけど仕方ない。同郷の誼だ。
「えっ、ええ。ありが……」
何か急に言葉が切れたな。
「どした?」
「どうしたって……あれが…」
びくびく震えながら指差す方向。
「んっ?」
リヒトが居るな。
あっ、振り向いている。
手を振ろうとしたけど、片手にエリーゼ――まだ、青褪めている――もう片方にシュトルツ――青褪めてるの通り越して蒼白になってるな。こいつ手を離したら倒れそうだな――手が振れない。
参ったなぁ~と思ったら視線に気付いたのか溜息一つ――ああ。さっさと来いって事だな――吐いて、再び前を向いて進んでいく――余所見は良くないからな――。
「リヒトは偉いな」
うん。俺の育て方は間違ってなかった。シュトルツに育てられたらモヤシになっていたな。
「そこで、偉いって言えるのが貴女の鈍感さ故なんでしょうね……」
「シュトルツさん。ご愁傷さまです。あたし同性でよかったわ」
何言ってんだろう?
「シュトルツさん。私と手を繋ぎましょうか?」
ジェシカがシュトルツに尋ねる。まあ、その方がいいだろう。両手がふさがっていたら万が一の時に対応できないし。
それはシュトルツも同意見だったようだ――その首振り方が異様で若干引くけど――すぐにジェシカの手を取る。
「フフッ。シュトルツさんの手の温もり……」
ジェシカの呟きはとりあえず聞かなかった事にしておく。
こいつも何でここまで変人になったんだろう……。
エリーゼ――同性愛者。ジェシカ――腐女子。
同性の友人って変態しかいないんだろうかと思えてくる自分が切なくなった。
(まあ、こいつらからすればお前が言うなになるんだろうな……)
それ位は弁えていた。
入れれなかったネタ。
シュトルツでお姫様抱っこ
エリーゼをどうするかとかジェシカが反対するとかで辞めました(笑)




