61話 《寄り添う者》。主君の為に鬼と化す
烏丸さんのターン。
ここで触れるタイミングをずらしまくった神地の設定紹介
その階段を見上げて、彼女の身体が震えるのが目に映った。
「――大君」
そっと声を掛ける。
「烏丸……」
ほっと安心したように力を抜く。
「ごめんなさい。分かっているのですけど……」
「いいんですよ」
そっと撫でる。
「初めて見るモノに戸惑い。恐れるのは自然現象です。臆するのは仕方ありません」
「――いいのですか?」
それは自分の立場では許されないのでは……。
躊躇う大君の言葉に、
「――民の前では出してはいけません」
「――はい」
「ですが、私の前なら構いませんよ」
にこり
「えっ……⁉」
躊躇う様に、見上げてくる大君に笑い掛けて、
「大君。私は《王の傍らで寄り添う者》です。貴方が不安や恐れを感じて、それを民の前に隠せないといけませんが」
一度区切る。
「私の前だけ。見せて下さい」
その為の存在です。
――この国の大君と呼ばれる国主は、世襲制ではない。
それは、この国の在り方が大きく影響している。
神地――天都には、人外が多く居る。
八百万。国民が一人生まれると同時にその国民を守る神が生まれる。
身体の機能が損なわれている者はそのそれを補う神が新たに生まれ。
家族を亡くして寂しい老婆には家族のように寄り添う神が。
成りたいモノにまっしぐらな若者の傍には、それを手助けする神が。
民一人に付き、最低でも一柱の神。そして、神は余程の事がない限り消滅えない。
民よりも神が多く居るのが現状だ。
そして、大君の素質と言われるのは、その八百万の神を多く従えさせられるか。
そう。――王ではなく大君。
神の花嫁。という意味合いがあっての呼び名だ。
それ故、例外を除いて生涯独身。家族と引き離されて神の花嫁として育てられる。
大君に選ばれてからその存在は現人神としてその役割を全うされる。
そして、凶事が起こるとその代の大君は人柱――生贄としてその生を終える。
孤高。孤独。
それが、大君の実態。
民もうすうす分かっていたのだろう。
民が求めた象徴は、そんな大君の逃げ場。
寄り添い。支え。時折そんな弱さを肯定する存在。
……皮肉なモノだ。
民の僅かな罪悪感と願いで。生まれた自分が大君をより孤独にさせている。
象徴以外信じれれる者がいないと錯覚させてしまっているなんて……。
「…烏丸?」
「なんでもありません」
だからこそ。
(私は、大君の為なら修羅にでも鬼にでもなれます)
階段の先は煌びやかな戦場。
そこに足を踏み入れて、神地の…天都の未来をより良きものにするために駒として動き回ろうと決意して。
とんっ
足を踏み入れた。
烏丸(素質がある子供を攫って洗脳しているものだな)
次期大君「ぐすっ。うわぁぁぁぁぁん」
烏丸「いや、子守りか」




