60話 《盾》。その奇跡を目の当たりする
出てないけど。出てくる象徴の名前。
音の大陸。
そう呼ばれる大陸のある地域にその大陸の象徴と王が集う。
「エーリヒ?」
珍しいなどんな祭典でも出てこないエーリヒが来るなんて。
「階段を使うから来たんだよ」
マーレが声を掛けてくる。
因みに一緒にいる間に男に喧嘩を吹っ掛けらる事数回。女性に声を掛けてデートを誘うのはその倍。連れの居るのにデートを誘って修羅場が起きそうになったのが数回。
……何でこいつと一緒に居るんだろう。
自分の判断を悔やんでしまうが。そんな自分の判断に悔やんでしまうのは姉さんの弟として情けなく思える。
「階段?」
「そう。階段。先代の持っていた許可証をエーリヒに渡したからね」
階段って、なんだ?
「――見れば分かるよ」
すごいから。
その言葉に合わせるように、
「――音の大陸の鍵の所有者。エーリヒ・アインバッハ。始まりの地の使用を許可する」
高々に叫ばれる声。
その声に合わせるように――。
「――虚ろの大陸ビアンカ。始まりの地の使用を許可する」
この場に居ないはずのビアンカの声。
「――祈りの大陸李黒龍。始まりの地の使用を許可する」
幼さを感じる青年の声もどこからか響く。
「あっ、神地の象徴くんだね~」
何時の間にかリンデンの象徴が姿を現して告げる。
「神地……」
ここから遠いのに何で声が……。
「根源の大陸ノーラ・ディ・ジェイ。始まりの地の使用を許可する」
またどこからかの声。
一体どこからだろう。野太いはっきりとした声。
―ー始まりの地。了承
何処からか届く声。
そして――。
目の前にはガラスのような階段。
「……これが入り口か」
姉さんがいつの間にか現れる。
「姉貴……」
「覗いて正解だったな。圧倒される」
別行動していたけど、合流するという事だろう。
「リヒト」
「――はい」
「ここからは、俺も体験した事無い世界だ」
その言葉に唾を飲み込む。
怖いと思える。その事実と同時に。
「――っ!!」
ワクワクした。
短いな……。




