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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
青年期。友人を得る
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56話  《剣》。神地の吹っ掛ける戦争に構える

フリューゲルは血を流す以外の戦場からも守れるように用意してます

 執務室から出て、自宅に戻る。

「――姉さん。さっきの事だが」

「――リヒト」

 リヒトが尋ねようとしたのを止める。


「これから話す事は他言無用にしろ」

 命じるように告げると、リヒトが刻々とまるでそういう人形の様に頷く。


 さてどう話せばいいのか。


「……」

 椅子に腰かけ考える。


 烏丸忠臣。

 神地の象徴で、穏やかな雰囲気だが、それは見た目だけだ。

 俺と同様守るための手段を択ばない性格だ。


「さっき俺は戦争と言ったが、聞こえていたよな」

 王には聞こえてないのは承知だ。聞こえていたらあの王だ。もっと騒ぐはずだ。


「はい。だが、姉さん……震災が続いている今の現状で、神地が攻めてきたら神地の立場が悪くなるのは目に見えているのだが……」

「戦争は、血を流す事だけじゃない」

 俺はそう教えたな。


 告げると、リヒトの戸惑っていた顔が得心が言ったという感じで表情を変える。


「戦争内容は、情報ですか……?」

「それもあるが、商業だな」

 座れとリヒトに指で示し、

「神地が引き篭もっていた理由の一つが人買い。……奴隷として攫われていたからだが、その攫われていた理由は技術を手に入れたかったというのもあるんだ」

 妃殿下の元に届けられた神地の製品。それが神地の奇襲。


「神地の技術者を各国は攫ってそれの模造品を作ろうとしたのだが、それは成功しなかったんだ」

「……技術者ではない者を攫ってきたのですか?」

 椅子に座ってからのリヒトの問い掛けに、

「半分正解。半分外れ」

 そう告げる。


「……半分?」

「その技術を…製品を作るのは一人ではなかったんだ」

 

 例えば、このハンカチ。

 このハンカチ一枚に色を作る者。

 模様を作る者。

 元の生地を作る者。

 生地の材料を作る者。

 染める為の植物を育てる者。


「それらが必要だったんだ」

 そのどれかが居ないと再現出来ない。生み出せない技術。


「そして、次に道具も無かったんだ」

 作れと言われてもその道具自体神地製作の物が必要でその代わりになる物が出来ないので作れない。


「製品を作るには一人誘拐しては足りず。全行程の者を攫っても道具がないのでできない。今度は道具を作れる職人を攫おうとするが、すると材料が足らない。その間神地は何の対応もしないってわけはないだろう」

 どうしたと思う?

 目で問い掛ける。


「封鎖。ですか……」

「それは最後だ。――その前に、神地は、強力な後ろ盾を見つけて、それを隠れ蓑にして攫われた民をすべて取り戻した」

「全てって、姉さんっ⁉」

 そんなの出来るとは、

「――あの国は出来た。まあ、その時の俺は、まだ一騎士団の象徴に過ぎないので詳しく知らされなかったが、神隠しと呼ばれる現象が起きたんだ」

「神隠し……」

 まあ。聞いた事無いだろうな。


 うちの国は一神教だしな。


「まあ、残った者も居たがそういうのは自分で判断して決めた者だ。後ろ盾……ラサニエルの国に隠れて、そこの国に有利な条件を付けた。そして、神地と言う国の希少価値を上げた」

 そこまで告げて、また聞きだけどなと顎に手をついて、

「ちなみに攫った輩には神罰と言う災厄が来たそうだぞ。自業自得だけどな」

 そこまで話すと。


「神地との交流が再開した。今までの神地と言う国の行動を考えると他国は無碍に出来ない。その技術も厄災も。――脅威も」

 だからこそ。

「神地が自分達を高く売るために、自分達と言う存在の有利さを引き出すための戦争を吹っ掛けるんだ」

 厄介だぞ。


「――姉さん。いえ、フリューゲル」

 表情が変貌する。

「これは俺の戦場だな」

 リヒトの言葉に笑う。


「ああ。――そうだ」

 頼むぞ。


 そう告げると、

「分かっている」

 その言葉がどこか誇らしげだった。









リヒトの事は頼りにしている姉。

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