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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
青年期。友人を得る
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53話  《剣》。妃殿下に遊ばれる

良かった探し

「ルーデル卿!!」

「フリューゲル様っ!」

 呼ばれて立ち止まる。


 女官と共に居るのは妃殿下。


「来て下さい!!」

「どうかしましたか?」

 なんだか嬉しそうですね。


 呼ばれてそちらに向かうとそこには見慣れない豪華な品。


 金糸銀糸が織り巡らされた布地。

 薄く透けている紙。

 真珠の首飾りに彫り物の櫛。

 どう明ければいいのか分からない不思議な箱まである。


「これらは……?」

「神地からの見舞い品と共に届けられたのよっ!! 迷惑をかけたお詫びの品ですって」

 見舞いの品?


「そんな物が来ていたんですか……?」

「そうよ!! 見てみて、素晴らしいでしょう!!」

 神地の物は芸術品だと聞いたけど実際に見ると感動するわねと興奮している。


「フリューゲルも!!」

 くるり

 身体に布地を当てられる。


「妃殿下!! 俺にこんなのはっ!!」

 似合いませんと抵抗しようとするが、相手が相手だから本気で抵抗も出来ない。

「あらあら」

「まあまあ」

 妃殿下と女官が嬉しそうに笑っているが、どうせ似合ってないからの苦笑だろうと判断して、

「妃殿下……俺には…」

 髪は伸ばしたけど、女らしい所など全くない。女らしい体系でもないのだ。


「まあ、似合いますねっ!!」

「はいっ⁉」

 何て言ったんだろう……?


「フリューゲルは、赤い布地が似合うわね。青い騎士団服をよく来ていたけど、目の色かしら?」

「似合うって……お世辞にも言い過ぎです」

 こんな綺麗なのが似合うなんてお世辞にも言い過ぎだ。


 それにしても……。


 神地がどうしてこれを送ってきた?


 確かに地震のきっかけは神地だが、元凶はマイケルと言う象徴だ。

 神地は被害者と言う立場だろう……。


 因みにその元凶は何の動きが無かったので、礼節を肉体言語で叩きこんで、今各国に迷惑を掛けたお詫びをして――させて――居る。


 きちんとしないと後でどんな目に合おうか――肉体言語だけではなく、国同士の交流にも影響があると刻々と叩き込んだ。

 エドワードが『俺の言う事も聞かなかったのに…』と嘆いていた。

 それに対して、

 駄犬と使えない兵士の教育は任せろと告げたが、その時のエドワードの遠い目は忘れられない。


 リヒトが駄犬なんだと呟いても居たな……。


「それにしても……」

 妃殿下は少しだけ微笑む。

「国が思ったより混乱してませんね」

「そうですね。陛下の対応がしっかりしてましたから」

 告げると、

「そうよね。ホント内政は優秀ね」

 誇らしげに、それでいて少し困ったように、

「陛下に苦労しているでしょう」

「………」

 何といえばいいのか。


「いいのよ。いくら守秘義務があってもわたくしはこの城の女主人だからね。――そういう情報は耳に入ってくるものよ」

 苦笑と共に告げる声。

「陛下もね。貴方相手に劣等感を抱いているのよ」

「劣等感ですか……」

 わざわざ抱くものでもないのに……。


「そういう反応を貴方がするから余計反感を抱くのよ」

「難しいですね」

「そういうものよ。――頂点は一つだけでいいのに象徴と言う頂点がもう一つあるのが気に入らないんでしょう。命令系統も複数あるし、貴方と陛下を嫌でも比べられるんですから」

 比べるか……。

「陛下も大変ですね」

 言っちゃなんだが、元々違う存在なのに比べるのもどういうものなんだろう。


 そう苦笑いをする。


「人は…そういうものですよ」

 そんな俺に妃殿下は寂しげに告げた。





因みに送られた布地は反物。

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