43話 《盾》。ある意味世界の危機を知らされる
神地怖いよぉ。でも、もっと怖いのはマイケル(笑)
イーシュラット。その国に辿り着くと――今回は緊急事態だからか幻獣とか神獣の力で予定よりも早く着いた。
「エドワード!!」
姉さんが呼び掛けるとエドワ-ドの近くにいた象徴達――知っている顔も知らない顔もたくさんある――が一斉に振り向く。
「二人とも……」
エドワードの近くでは涙目になっている青年――見た事無いけど象徴だろうと――女性。
「……?」
見た事無い格好だ。鳥の羽根を髪飾りにしていて髪を三つ編みにして一つに束ね。軽装に身を包んでいる。
「エドの弟か…」
「トーマス・ウィルソンです。こちらは」
「――オルグ・パパ族。祭祀ビアンカだ」
その女性が答える。姉さんと同じ様にかっこいい女性系だ。
「新大陸の象徴……」
「ああ。――ビアンカ殿は新大陸……彼女からすれば新でも何でもないが、そこに以前から居た象徴。トーマはそこで生まれた俺の国から移民した者達の象徴だ」
移民の象徴と以前から居た住民の象徴。
「もう一人。居たよな……?」
姉さんの確認する声に、
「そいつがやらかした」
と、渋い顔で告げた。
「―-つまり、そのもう一人が神地に烏丸に喧嘩を吹っ掛けたのか」
尋ねる声。そこにはガラの悪そうな青年。
「ラサニエル。お前も来ていたのか」
「――神地の交渉はワイが担っておる。来ないわけいかんやろ」
青年は睨み付けながら告げる。
「すみません!! 僕が止められなくて!!」
涙目のトーマスが告げるとビアンカはそんなトーマスの手を取って、
「ト-マ。気にするな。我も悪い」
片言だ。
「でも、僕の弟なのに」
「相手しない。我悪い」
………何だろう。なんていうか独特の雰囲気が。
「恋人か…」
ぼそりと姉さんが呟く。
ああ。そんな感じだと納得する。
「マイク……もう一人の弟は先住民とのトラブルを起こしやすくてな。何というか……」
「――親切裏目。好意は迷惑行為」
ビアンカの言葉に、
「「「ああ………」」」
と渋い顔になる象徴が数人いる。
「で、あいつの困ったというか………もうそんな段階をすっ飛ばしてるんだけど。俺の国の幻獣が見えないんだ」
見えない?
今も給仕をしてくれる妖精達。
クッキーを食べている幻獣達。
これが見えない?
「俺が、幻獣と話していると怪訝な顔をして妙なモノを見る眼をする」
「我。精霊と語る。あいつ気付かない」
「新大陸……僕達の国には精霊と言う存在が居るんですけど。それもマイクは見えてないので。僕とビアンカが嘘ついていると思われて……」
そんな時に、
「神地の噂を聞いて……」
困ったように、ため息。
『そんな迷信を信じるのかい? 引き篭もっていてもいい事無いんだよ』
と言って神地に向かったらしい。
「性質悪い事にあいつの象徴としての能力は他の象徴の能力の無効化なんだ……」
しかも、自分に能力があるのも気付いてない。
「――で、どうするんですか?」
シュトルツの問い掛け、
「神地もこのままではいられません。流石にかつてのような事はしませんが……」
「かつての事って……?」
「――神地は女尊男卑と言うほどじゃないが、女性の方が地位が高いんだ……」
姉さんが教えてくれる。
「えっと…」
こちらでは男尊女卑とまでではないが男性の方が地位が高い。考えが違うんだ。
「そんな事を知らずに、女性に無礼を働いたり……。彼の国の女王に夜這いを仕掛けた馬鹿が居てな」
不快気に舌打ち。
「その結果の閉鎖だ」
しかも呪い付き。
「呪い?」
「結界を破こうとしたら自然災害に襲われるんだ」
その言葉に地震を思い出す。
「まさか………」
「そのまさかだ」
胃が痛いとエドワードが胃を抑える。
どうやら、大変な事が起きているらしかった。
象徴同士で恋人になるのは珍しいですがない事もありません




