42話 《剣》。緊急連絡を受け取る
はい。主人公です。
「陛下。御用と聞きましたが」
王に声を掛ける。
「――ああ。よく来たな」
王の近くには羽根を持った小人。
……妖精?
「イーシュラット?」
妖精は、俺らの姿を確認すると手に持っていた巻物をぽとりと落とす。
それを手にすると満足したように妖精は消える。
「――わざわざイーシュラットがお前に用があるとはどういう事だろうな」
相変わらず棘のある言い方だな。
……現王は俺と言う象徴を内心快く思っていないので、自分をそっちのけで俺の方に他国の使者が来るとこうやって嫌味を言ってくる。
男尊女卑の考えを持っているので、リヒトには敬意を示すが、俺に対しては相手をしたくないというのがありありとある人だ。
戦場にも出したくないという考えで、小競り合いがあると俺を留守番にさせて、敗走する。
まあ、それでも被害が最小限で収まっているのは俺が育てた兵士が活躍しているからだと王には不快な現実があったりする。
内政向きなのだ。本人認めてはいないが。
「イーシュラットの象徴からの伝達なんでしょう」
あいつは妖精を使って連絡するからな。
………幻獣とか精霊は他国に渡らないようにする方針のはずなのに。
「ね…姉貴。巻物には一体何が書いてあるの?」
尋ねられて、ああ。そうだったと開く。
「……非常事態が起きた。象徴は我が国に来られたし。何が起きた?」
「――象徴なら、ヒメルでもいいだろうに」
王が文句を言ってくる。
「いえ、陛下。これは……」
言い掛けた言葉が切れる。
足元が揺れ出したから。
台地が揺れ、飾ってあった調度品が床に落ちて四散する。
あちらこちらで悲鳴が起き、王は無意識に俺に摑まっている。
「机の下の潜れ!! 地震だ」
久方ぶりだな。どこかの山が噴火したんだろうか。それとも……。
「……っ⁉」
ふとある考えが浮かぶ。
もし、それが事実なら、
「愚者が居たって事だな」
揺れは収まる。
兵が駆け込んでくる。
「――被害状況を確認しろ」
兵に命じる。
「何故、お前が命じる……」
つかまったままおうが忌々しいと舌打ちをする。そして、自分が俺に縋りついている事実を知って、慌てて手を離してハンカチーフを取り出して手を拭いて、そのハンカチ-フをごみ箱に捨てる。
……質の良い物なのに勿体無い。
「どうせ摑まるのなら俺じゃなくて、逞しい身体のヒメルにしてくださいね」
俺より背が伸びて、逞しい体つきになったリヒトの方が安心ですしと嫌味を言い、
「――まあ、それは置いておいて。どうやら、神地の怒りに触れた者がいる様です」
おそらく、イーシュラット――エドワードの手紙はそういう意味だろう。
全く面倒な事して!!
「神地……?」
「何だそれは⁉ おとぎ話の地域がどうして…」
リヒトと王は意味が分からないと首を傾げている。だから、俺に手紙が来たんだろうなと改めて思いつつ、
「陛下の持っていたハンカチーフは神地からの輸入品ですよ」
そう今捨てたハンカチーフは神地と取引のある国から買い取った品物で、小さな家一軒買える値段だったはずだ。
「神地はかつて、その高い技術と能力故に人買いに攫われる事が多かったので、結界を作り侵入を拒んだんですよ」
イーシュラットと立場が同じなのだ。
「被害状況はまとめて報告があると思われます。リヒト。俺らはイーシュラットに向かうぞ」
一刻を争う事態だ。
「あっ、分かった……」
礼もそこそこに王の前から立ち去る。
「姉さん…神地って」
「神地には不可侵。以前教えたよな」
人前では姉貴と呼ぶようになったリヒトは二人になると相変わらず姉さん呼びになる。それは俺も同様。人前や公ではヒメルと呼ぶが、それ以外は愛称のリヒト呼びになる。
「王にはああ説明したが、もっと神地とそれ以外の国は隔たりがあってな」
王には言えないが、
「神地は人買いに合っていたが実際にはもっと被害が酷く、今唯一交流がある国以外。信用してないんだ」
それだけの事をしてきたと告げる。
「でも、昔。だよね……」
「どんなに昔でも国が主導していた行為だったんだ。信頼できないだろう」
そう、人買いもそれ以外の行為も全て、国主催の侵略行為だったのだ。
地震怖いね…




