36話 《盾》。お披露目式を始める
パーティーの始まり始まり。
………大勢の人が溢れていた。
「――神地組は?」
「来るわけないだろ」
招待状も出せない所だぞ。
エドワ-ドと姉さんが話をしている。
「ラサニエルに頼んだのか?」
「けんもほろろに断られた。煩わしい事に触れさせる気が無いってさ」
アイツの場合会わせたくないだけだろうに。
「姉さん」
声を掛ける。
「――あっ、来たか」
姉さんは軍服よりもやや豪華な礼服に身を包んでいる。
「おお。いい服だな」
フルーラの作りか?
いや、うちの国のだ。
へぇ。大分うまくなったな。
むっ
姉さん。エドワードばかり話している。
「ふくれるな」
せっかくおしゃれしたのにもったいないぞ。
「だって……」
衣装を準備している間会いに来なかった。
だから、初めて見せるのに――。
「可愛いなほんと」
………可愛いなんて言われても嬉しくない。
「冗談だよ。――格好いいぞ」
耳元に囁かれる。
「…………ありがとう」
褒められて嬉しくて頬が赤くなる。
「姉さんは……」
煌びやかなドレスがあちらこちらに見える。
「ドレスを着ないの?」
似合いそうなのに。
「えっ………」
「フリューはドレス嫌いなんだよな!!」
「フーちゃんにドレス着せたいのにねぇ」
どんっ
急に現れた二人。
「ちっ!」
エドワードが舌打ちをする。
「えっと……」
確か、レーゲンブルネンで会った。
「カシューさんとカナリアさん……」
「カシューでいいよ。ヒメル」
「カナリアでええよ。俺もヒメルって呼ぶ事にするし」
ヒメル……。
「……慣れません」
ヒメルって名前に。
「生まれて一年もたってへんのに弱音は早いで」
「そうだな。最初2、30年はころころ名前が変わる奴もいるしね」
……あれ?
「お二方は敵対してましたよね……」
カナリアは味方で、カシューは敵だったはずじゃ……。
「ああ。そんなの。卒中や」
「いちいち気にしてらんないねぇ」
カシューがエドワ-ドを意味ありげに見る。
「ちっ!!」
心底嫌そうに舌打ちして口聞かない。
「あいつはカシューが嫌いなんだ」
ぼそっ
姉さんがこっそり教える。
「嫌いって……」
「因縁あるんや。幻獣を保護しているお国柄。幻獣を密漁しておったフルーラはいけ好かない」
「イーシュラットの王族の婚姻とかがフルーラの王族によって阻まれた事も多いからな」
「寝取られてな……」
「寝と……」
うん。何でかその手の知識あるな。
………いらないのに。
「まあ、そんな事はいいけど」
カシューが思い出したように――ちなみにさっきまでエドワードを揶揄って遊んでいた。第三者からすれば余計嫌われるなと思えるほどのしつこさだった――こちらを見て、
「ヒメルは踊れるか?」
「えっと、一応……」
教わったけど。
「ならちょうどいいな。お前と踊りたいって輩も多いから」
挨拶がてら踊ってくるぞ。
そうやって引っ張られる。
「踊りながら情報を引き出すのも技術が居るからな。実地で学べ」
ぼそっ
カシューが告げる。
情報……。
「じゃ、じゃあ……」
行ってくるね。
内政を頑張るって誓ったんだ。なら、カシューの言葉に頷く。
「おお。行って来い」
手を振られる。
「ヒメルはお子様だからな。お子様相手を用意した。相手を観察して、話を広げてみろ」
初心者はこれ位の相手でいいだろう。
「うっ、うん」
頑張る。
答えると踊りの場所に案内される。
そこでどこかの貴族のご令嬢を紹介されて踊りだす。
踊りの順番を間違えないようにしつつ、話をするのは苦労した。
短パンです。




