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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
33/185

32話  《盾》。おとぎ話を聞かされる

曲者(?)王様

 動く箱。

 鉄の馬。

 一人で開く扉。


 そんな物ばっかり見ていたからその階段の先の扉が普通の扉であるのに逆に驚いた。


「――待っていたよ」

 ノックと共に届く声。

「失礼します」

 中に入るとそこには一人の老人。


 なのは良いが床は散らかり、それを慌てて片付けて、その際床の物に躓いて転びそうになっている。

「大丈夫ですかっ!!」

 慌てて支えると、

「ありがとう。――君はいい子ですね」

 と言われた。


「あの……」

 王様なんですよね。

(威厳ないけど……)

 つい心配になってしまう。


「一応。王ですよ」

 にこにこ。

「どうぞ。空いてるところに座ってください」

 空いてるところ……。


「どこにあるんですか……」

 ありとあらゆる物が広がって足の踏み場もない。

「ああ。そうでしたっ⁉」

 慌てて場所を作ろうとしてくれるがいかんせんその動きが冷や冷やする。

「僕自分で作りますから!!」

 慌てて止めて、適当に座れる場所を確保する。


「やれやれ。お手数かけました」

 にこにこと告げて、老人も座る。


「さてと、――うん。玉座ですね」

 にこやかに告げる。


「戦争の火種。災いの塊。……でも、それが若干弱いのは盾が名に当て嵌まっているからみたいですね」

「災い……」

 エーヴィヒの王にも言われた。


「おとぎ話でもしましょうか……」

 おそらく、神地の者達とレーゲンブルネンの代々の王しか知らないお話ですよ。


 にこにこと微笑んで、内緒ですよと約束させられた。


「かつて、この世界は滅んだ事があるんですよ」

 とても昔ですけどね。

 物騒な言葉だと思った。おとぎ話にしても……。


「滅んだ理由は分からないですけどね。自然災害か病か。戦争か……」

 それとも別の要因か。


「強い指導者が必要でした。少しでも大勢生き残るためには」

「王様。ですか……」

 尋ねると首を振られた。


「王では無理です。王も所詮人でしたから」

 王も人? それは普通じゃ……。

 王と象徴が協力して国を…民を導くのだから。


「その滅んだ世界には」

 老人は口を開く。


 まさか……。


「《象徴》はいませんでした」

 ……やはり。


「象徴は……」

「人々は求めたんですよ。神の代弁者を。自分達に寄り添ってくれる人外を」

 神しか頼れない。

 でも、神は見えない。

 ならばどうする。


「人ではだめ。人より強く、神よりも人に寄り添ってくれる存在。人にとって都合のいい人形。それが象徴の始まり」

 老人は告げる。


「民の民意を一つにして生まれるから象徴に意見が集まりやすい。人の形をしているから話をしやすい」

「じゃあ、王は……」

 いらないのでは……。


「それが人間の複雑なところですね」

 老人が告げる。

「人では民を導けない。だが、人外では人は不安を抱く。それゆえ」

 机の上には二つの玉を置く。


「――天辺を二つを置く事にしたのだ」

 王と象徴。


「民の心をまとめる象徴。導く王。その二つで平和になると思われた。だが、人が増えると象徴が居なかった時代を忘れていった」

「戦争。ですか……」

 災いの名になるのなら恐らく《玉座》が。


「賢いですな」

 老人が微笑む。


「《玉座》の名があれば力を得られる。その名が戦争の原因になる。―ー悲しい事にな」

 彼は切なげに目を細める。


「力を得るから……《玉座》を僕を欲しがるんですか」

「そうじゃな。この戦いもそれが理由だ」

 僕が……。


「そなたはどうしたい?」

 尋ねられる声。


「どうしたいって……」

「神の代弁者。民意の塊。そなたの民はどこにいる」

 民。


「僕の民は……」

 エーヴィヒに居る。


「――そうか。なら言うといい」

 自分の未来を。


「《玉座》という名に振り回されずに未来を民を守るといい」

 頭を撫でる。


「そなたの名は、《盾》もある。その名は、内政を王の為に……民を守る力。それを忘れるな」

「内政………」

 僕の名はそんな意味もあるんだ。


 ――忘れるな。

 その言葉がのちに世界に影響を与える事になるとは誰も知らない。

いつか出るだろう神地の象徴

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