27話 《剣》。《信念》を動かす
戦闘を頑張ろうと思ったけどうまくいきませんでした。反省。
きぃぃぃぃぃ
肩に鷹が泊まる。
「やっとか……」
マーレの護衛に付けた鷹だ。こいつが戻ってきたという事は。
「……イワン」
《死神》――人間としての名はイワンに声を掛ける。
「俺の勝ちだ」
宣言。
「どういう事?」
にこやかに声を尋ねてくる。
「――そのままだ」
その言葉に合わせるかのように、馬が近付いてくる。
ノーテンの軍服。
それを目で止める。
「ノーテンの使者……」
イワンが鎌を下げる。
「戦争の締結を報告します」
使者が叫ぶ。
「何で……?」
首を傾げるイワン。
「あっちの敗北が決まったからだ」
あいつは勝てないと判断したら降参するのも早い。
補佐するのが存在理由故状況判断も早いからな。
「ルーデル君……」
「――さっさと敗北宣言でもしろ」
命じるように告げる。
「――ははっ」
嬉しそうな表情。
「ホント。面白いよ」
僕のモノにしたいな。
その言葉は聞かなかった事にする。
「さっさと軍を引け」
もうこいつと対峙するのも嫌だな。
………あっちは動けそうかな。
そんな事を考えていたら動く気配を感じる。
「――ノーテンとは利害関係あるけど。今回は本気」
にっこり
「君を捕らえちゃえば僕の勝ちだよ」
向かってくる大鎌。
「――姉さん!!」
届く声。
その声に反応したわけではない。
守るために戦う者――その本質が確かにその存在を感じた。
馬で駆け寄ってくる少年。
助けようとイワンとこちらの間に入ろうとしてくる。
「……!!」
思い出す。
――あの人は《玉座》の名を持っていた。
だが、急に大きくなって、たくさんの象徴が出現したから小さいままだった。
弱い自分を妹として庇ってくれて、兄と呼んでいいと許してくれた人。
………守ると誓って守れなかった人。
「………っ!!」
鎌に絡まる鞭。
抱き寄せた温もり。
相手の動きを封じると同時に守る者を抱える。
……………相手が、殺すつもりだったら防げなかっただろう。
「姉…さん……⁉」
「――何で来た!!」
冷たい声が喉から漏れる。
「姉……」
「戦えない者が戦場に来るな!!」
怯える弟。だが、
「お前の行動は場合によっては軍の足を引っ張っていたのだぞ!!」
戦場の事を甘く考えてきたのは責めないといけない。
命のやり取りするのに覚悟が無い者が来ていい場所ではないのだから。
「ふうん……」
面白がるような……それでいて、どこか不快気に、
「それがノーテンの戦端を開いた理由かぁ~」
面白くないな。
「壊してやりたい」
殺気。
「イワン!!」
「ねえ。僕はね。君が民を気にするのは大目に見れるんだよ」
だって、民は僕らを置いて先に死んじゃうから。
「でもね。――象徴は駄目」
鞭を断ち切ろうとするように力を籠める。
「象徴は君を置いて行かない。同じくらい生きれる。――同国なら余計ね」
それは許さない。
「だから。壊しちゃおうか」
あどけなく、不快だから。それがまかり通ると信じている子供のそれ。
「させるか」
こいつ何が気に入らないか知らんが、させるわけねえだろう。
「姉さん……」
小刻みに震えるリヒトをそっと片手で抱き寄せる。
それがますます気に入らないと言う様に睨んでくるイワン。
ばぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
「――そこまでだ」
空気を割く雷の音。
「――来たか」
その音に安堵する。
「ルーデル君。アインバッハ君も動かしたんだぁ~」
流石にアインバッハ君が来られては手が出せない。
そう返すイワンに、
「――だと思ったから動かした」
視線を向ける先。
鉄の馬に跨り、不思議な鉄の筒を手に持つ青年。
中立国家――レーゲンブルネン象徴。《揺るがぬ信念》の名を持つ青年はこの戦いを終わらせる事の出来る絶対的な力。
――この戦いの切り札だった。
《信念》のイメージはテガミバチのジギーです。




