26話 《太陽》。《剣》と密約する
リヒトが言っていたイーシュラットの帰りの途中に寄った港ではこんな事がありました。
話は約一か月前に遡る。
沢山の巨大な軍艦が海を埋め尽くす港。
ラーセロという国は自然に恵まれた国。
海の恵みも山の恵みもあるその国の象徴《太陽の生まれし国》人間としての名はカナリア・イアソン・アルカサーク。
彼は水軍の司令官として国を支えていた。
「アルカサーク卿~!!」
「んっ? どないした~?」
船の点検作業に加わっている時に大声で呼ばれてひょこっと看板から顔を出す。
「客人っす~!!」
「客人~?」
誰や~?
「ひっさしぶり~!!」
ひらひらと手を振る銀色の髪の人影。
「何や、フリューやんか」
勢いよく看板から地面に着地する。
「どないした?」
その時になってカナリアはフリュー。フリューゲルの近くに子供が居るのに気付く。
一瞬。その姿が遠い日に消えた誰かと重なる。
内乱で死んだ象徴。
友人の一人に――。
「――リヒトだ」
「はっ、初めまして!!」
「俺の目で見える範囲で遊んできていいぞ」
「ホントっ!!」
それを聞いて嬉しそうに駆け出す少年。
「フリュー」
「……近いうちにシュトルツと戦争を起こす」
宣言。
「原因はあの子みたいやな」
「ああ」
言われなくても分かる。
「あの子が玉座かいな」
何んとも酷な名を与えるもんや。
生まれながら覇道を。強国の使命を与えられし名。
「――で、わいに味方に付けと言いおるんか?」
「ああ。イーシュラットにも頼んだ。あそこはフルーラが動いてから動くだろうけど」
「わいにシュトルツを……ノーテンを抑え込ませるのか」
「ああ。本音を言えばノーテンは怖くないけど」
言われなくとも理解できる。
「ジェシカちゃんか………」
あの子は強敵だ。いや、あの子を生み出した国が危険なのだ。
「ああ。それを頼みたい……」
ノーテンに向かう援軍の足止め。
「フリュー。わいはアルシャナ。マーレちゃんやテッラと付き合いは長おてな。あの国の不利になる事は出来へん。――じゃが」
にやりっ
「アルシャナと共同で進めたい企画があるんやけど、マーレちゃんが居なきゃ出来へん事もある。それが出来るようになる確証があるのなら手を貸してもええんやけどな~」
それが出来るかと試すように告げると、
「国同士の問題だからな。そればかりは」
神妙な顔のフリューゲル。
「――アルシャナが人質を取り戻したいと思って動かないと何とも言えないな」
にやっ
その笑みは、軍を率いる者としての策略家のそれ。
「まあ、アルシャナにも寄る予定はある。人質のせいで思うように企業が進まなくてあそこも苦労しているようだからな」
同じ様な話を進めて来るんだろう。
「――被害は少なめにしときぃ。苦労するのは弱い者や」
「分かってる。――俺をどう思ってるんだ」
弱者を守る剣。その名を持つ象徴。
「――期待しておるでぇ」
そうして、密約がなされたのだった。
戦争はその前の準備が重要です。




