25話 《海》。《太陽》と合流する
実は勝敗のカギを握っているマーレ。
見張られてるみたいだよ……。
近くを飛んでいる鳥はさっきから同じ奴な気がする。
泣きそうになりながら進んでいくと……。
ぴいぃぃぃぃぃぃぃ
甲高い声で鳴いて鳥は去っていく。
「えっ⁉ どこ行っちゃうの⁉」
鳥が消えたのを見て慌てて呼び掛ける。
見張られているみたいだったが、一人よりましだ。
誰も居ない林。薄暗く。不気味に静か………。
ぞくっ
「お願い!! 戻って来てよ!!」
ヤダよ。こんなところで一人ぼっちは。兄ちゃん。シュトルツさ~ん。
泣きそうな顔で――殆ど泣いているが――助けを求める。
がさっ
がさがさ
ひいぃぃぃぃぃぃぃぃ
まさか、追っ手!!
どっ、どうしよう~!!
「あっ、テッラの言った通りやな」
…………声がした。
がさがさと揺れる枝から現れたのは日に焼けた青年。
「一人でここまで来て頑張ったな」
くしゃ
笑う青年。
その顔は見た事ある。
人質に行く前によく会っていた。隣国の象徴で、海に面していたからお互い密接に話し合って協力していた。
「カナリア兄ちゃん………」
そう呼ばれていた。いや、呼んでいた。
「そう呼ばれるのは久方ぶりや」
ははっ
笑って、
「――迎えに来たわ」
テッラが待ってるはずや。行こか。
「兄ちゃんが……」
「ああ。今までマーレちゃんが人質に取られて負ったから進められん事業が多かったんや。わいもそれで参ってたんよ」
内陸の輩は海と隣り合わせやないから勝手な事を言いよる。海は万能とでも思ってるんやろか。
「……危険はないと思っていたみたい」
水難事故が起きても。水不足が起きても。
海で溺れるという危険性とその救出活動の必要性に気付かず。
目の前にある水は水は水でも海水を含んだ水で飲み水に変えるのはそれなりの設備が必要な事も知らなかった。
津波の危険性もピンと来てなかった。
……山の雪崩の危険性も嵐の危険性も理解していたのに。
「海は何でもくれると思っていたし、船は湖の船遊び感覚しかなかったから」
「お貴族感覚が抜けん国やからな。あの坊ちゃん。食べ物は土に植えれば自然に育つと思って、その育てるまでの苦労も分かってなかったからな」
フリューと気い合わへん。
「まあ、あの坊ちゃんの高い鼻圧し折りたいと思っておったんや」
「カナリア兄ちゃん?」
「フリューと約束してたんや。マーレちゃんが無事に帰ってこれたらあの坊ちゃんに宣戦布告をするって」
ぴぃ
カナリアの肩にはさっきまで一緒に居た(?)鳥。
「こいつがマーレちゃんの護衛をしとったからな」
見張られているのではなく護衛だったのか。
鳥を操るフリューゲルらしい。
あれっ? そういや。
「なんでフリューゲルをフリューって呼ぶの?」
「名が長いからや」
カナリアの答えは単純明快だった。
「カナリア兄ちゃん。らしいや……」
そう苦笑してしまう。これで、ラーセロの象徴。《太陽の生まれし場所》の名を持つとは到底思えない姿だった。
そして、《錫杖》の最後のシーンに行きます。




